上 下
21 / 113

年齢って重要だと思うんですが

しおりを挟む
 思わず、じっと男の顔を観察する。
 すべらかな肌は内側からのハリにあふれていて、目じりにも小じわひとつない。
 さっき見た体つきも、10代の青年のように未完成な雰囲気は微塵もなかったけど、20代でも後半の人間ほどがっしりした体つきというわけじゃなかった。
 すんなりとした、しなやかで強靭そうな体。
 どう見ても、20歳をすこしすぎたところだと思うんだけど…。

「俺はいま、26歳だぜー?」

「そうなんですか…」

 てことは、見た目予想プラス5歳くらいか。
微妙といえば微妙。
個人差でとおるくらいかなとも思う。
 だけどこちらの世界の人間についても、地球と同じ人種の感覚が通用するなら、彼の見た目で26歳というのはかなり若く見えている。
 日本人でも、26歳には見えないもん。

 はー、さすが異世界。
不思議なことってあるもんだ。

「だからよー。お前も癒し人でも、俺のことを警戒する必要はないぜ?」

 男は、よしよしというように私の頭を撫でる。
いや、それは本当に違うんですけどね。
 そしてこの言葉。やっぱり癒し人なる存在は、狙われるものなんだろうな。

「いえ…。別に警戒して隠しているわけじゃないんです。私の世界ではその『癒し人』ですか? そんな能力がある人は、お伽話の中でしか聞いたこともありませんし、私もそんな能力はないです」

「そうなのか?」

 男は、すこし首をかしげて、また私をまじまじと見る。

「その割には、見た目が若すぎやしねぇか?俺より年上には見えないぜー」

「…ありがとうございます?」

 びみょうに、疑問文でお礼を言う。
褒めてくれているのかな、とは思うんだけど。

 見た目が若いって言われるのも、ちょっと複雑な気分なんだけどね。
老けてるって言われるのも、恋人大募集中の独身者としては困るんだけどさ。
 一度も正社員で働いたことのないアラサーとしては、自分の社会人能力のなさが若く見えるんじゃないかなーとか思っちゃうんだよね。
子どものいる人とかならさ、それはそれで「お母さん」や「主婦」って感じがあるじゃん。
ああいうのに、憧れる。
 自分がリアルにバリバリのキャリアウーマンだったり、既婚だったりしたら、堂々と「ありがとう」って言えるんだろうけど。

 とはいえ、そんなこと、わざわざ言っても仕方ないしな。
ただの社交辞令、兼、観察結果の報告っぽいし。
さらっと流しておこう。

 それに、だ。
 男が、26歳ってきいたら、だんぜん可能性を感じたっていうか。

 だってさー。いちおう3歳年下ってことになるじゃん。
それくらいなら、恋愛対象として見るのも、許されると思うんだよね。

 そりゃ、こっちは得体のしれない異世界人だし、向こうは見た目は20歳そこそこの、チートな美形だし、優しいし、強いし。
こっち基準でも、きっと高値の花ってやつなんだろうと思うから、恋人になれるとかはなくってもさ。
 そのくらいの年の差なら、こっちがときめくのくらいは、許されるかなーなんてね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

期限付きの聖女

波間柏
恋愛
今日は、双子の妹六花の手術の為、私は病院の服に着替えていた。妹は長く病気で辛い思いをしてきた。周囲が姉の協力をえれば可能性があると言ってもなかなか縦にふらない、人を傷つけてまでとそんな優しい妹。そんな妹の容態は悪化していき、もう今を逃せば間に合わないという段階でやっと、手術を受ける気になってくれた。 本人も承知の上でのリスクの高い手術。私は、病院の服に着替えて荷物を持ちカーテンを開けた。その時、声がした。 『全て かける 片割れ 助かる』 それが本当なら、あげる。 私は、姿なきその声にすがった。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

渡り人は近衛隊長と飲みたい

須田トウコ
恋愛
 20歳になった仁亜(ニア)は記念に酒を買うが、その帰りに足湯を通して異世界転移してしまう。 次に目覚めた時、彼女はアイシスという国の城内にいた。 その日より、異世界から来た「渡り人」として生活しようとするが・・・  最強の近衛隊長をはじめ、脳筋な部下、胃弱な部下、寝技をかける部下、果てはオジジ王にチャラ王太子、カタコト妃、氷の(笑)宰相にGの妻、下着を被せてくる侍女長、脳内に直接語りかけてくる女・・・  あれ、皆異世界転移した私より個性強くない? 私がいる意味ってある? そんな彼女が、元の世界に帰って酒が飲めるよう奮闘する物語。  ※一話一話は短いと思います。通勤、通学、トイレで格闘する時のお供に。  ※本編完結済みです。今後はゆっくり後日談を投稿する予定です。 更新については近況ボードにてお知らせ致します。  ※なろう様にも掲載しております。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...