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1年の半分が過ぎたけどなんにも進化してないと思ったけど、恋の種が芽吹いていたそうです。

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 で、6時。終業。

 わりとホワイトなうちの会社では、繁忙期でもない限り、総務部は定時で帰宅できることが多い。
特に今日は、月末の金曜日で、ノー残業デーだ。
終業の鐘がなると同時に、席を立つ人も多い。

 女性陣は、特に早帰りだ。
私以外の全員が、鐘がなりおわると同時に、ピッ、ピッとタイムレコーダーに社員証を押し付け、「お先に失礼しまーす」と軽やかにフロアから去る。

「莉緒先輩は、まだ帰らないんですか?」

 あっという間に、フロアから人が消える中、まだパソコンをたたいていると、ひまりちゃんが声をかけてくる。

「んー、この書類だけ完成させたら、帰るわ。あと5分ってとこかな」

「そうですか。じゃぁ、お先に失礼します」

「はい、お疲れ様」

 ぺこりと頭をさげて、ひまりちゃんはフロアを出る。
その小動物っぽい後ろ姿に、ため息がもれた。

 考えてみれば、ひまりちゃんはほんとにいい子だ。
仲のいい同僚が全員、私を悪口のさかなにしている中、一人で私をかばってくれた。
それって、勇気のいる行動だし、たぶんほんとに私のことを慕ってくれているからこその行動だとうぬぼれたい。

 他の3人にしても、わかりやすく浮いている私を軽く攻撃することで、仕事へのうさばらしとか、仲間意識をかためたりとかしてるだけだろう。
中高生の女子が、先生を陰口のネタにするようなものだ。
本気で嫌われてるということではないと思いたい。

 でも、私は、彼女たちの仲間にはなれない。
ごちゃごちゃ考えたって、それは単純な事実だ。
 時間がたつにつれて、言われた悪口の内容よりも、この職場の女子の中で、自分だけが立場が違うということを思い知らされたことのほうが、じわじわと痛くなっていた。

「結婚、かぁ」

 夏帆ちゃんの言葉を思い出して、つぶやく。
アラサー。
ほぼ30歳。
おばさんっていのは主観の問題があれど、アラサーなのと、ほぼ30歳なのは、どちらも、事実だ。

 結婚したからって仕事をやめるつもりはない。
けど、そろそろのんきなことも言っていられないお年頃なのかも。

 思えば、今年の1月には「今年中には結婚する!」って思ってたんだよね。
まぁ、「今年こそ、TOEIC750点超える!」とか、「ダイエットして3キロ落とす!」とか、毎年思ってるけど、すぐ忘れるのと同じで、今まですっかり忘れていたけど。
 けっきょく英語の勉強もダイエットもぜんぜん進化してない。
そろそろ今年も半分が終わるのに、なんかもうダメダメだ。

 お見合いでもするかなぁ。

 完成した文書を保存しつつ、ぼんやりと考える。
知り合いにお願いするのは重いけど、結婚相談所とかなら、お金を出せばセッティングしてくれるだろう。
いままで興味なかったけど、それもいいかもな。

 まぁ、現実にはお見合いしたからといって、すぐ結婚できるものでもないらしいけど。

「……結婚!?」

 どさっと何かを落とした音といっしょに、フロアの入り口で声がする。
うわ。独り言、聞かれてた?
かなり気まずいんですけど……!
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