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本命の好きな子にはとことんヘタれな俺が衝動的に告白した結果、彼女がかわいすぎて死にそうです

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 こんなところで三澄に会えるなんて、嘘みたいだ。

「あけまして、おめでとう。こんなところで会うなんて、偶然だね」

 三澄は、にこっと笑いながら、ちょっと首をかしげた。
さらっと揺れる髪が、新鮮で、いつも以上にかわいく見える。

「な。俺も三澄見つけて、びっくりしたわ」

 俺は、三澄の目に、どう映ってるのかな。
 女の子に「爽やかそう」と好評な笑顔をつくって、大げさに言う。
取引先の受付の女の子なら顔を赤くしてくれて、連絡先をくれる子もいる程度の威力はある笑顔ではある。

 だけど、肝心の三澄は、おっとりとした笑顔を返してくれるだけだ。
その顔は、100パーセント、友達に対するものっぽくて。
ちょっとでも、俺にときめいてくれた雰囲気はない。

 ……いつものことだし、慣れている。
今さら期待なんてしないし、三澄の笑顔が見られただけでご褒美だからいいんだけどな。

「三澄、これ、なに並んでんの?すっげぇ長蛇の列じゃん」

「ん、えっとね。神社のお詣り待ちなの。御金神社っていう」

「あぁ、あそこか。俺もこないだ大塚と行ったわ」

 御金神社は、お詣りすると金運がよくなると噂の神社だ。
金属と鉱物の神様をまつってるんだけど、その名前と、キンピカの鳥居のインパクトもあって、金運上昇のお参りに来る人が多い。
 俺も年末に、大塚が宝くじを買うっていうんで、その前に一緒にお詣りしたんだっけ。

「そうなんだ。大塚くん、毎年宝くじ、楽しみにしているもんね」

 にこにこ笑って、三澄がうなずく。

「てか、さ。ここ、まだだいぶん神社から遠くね?」

 行列を見ながら、何気なさを装って、言う。
ワンブロックは並んで、角を曲がっても続いている行列。
御金神社なら、角を曲がった先はそう遠くないけど、この行列が続いていると思えば、わりと距離がある気がする。

「うんー。まだまだだよねぇ」

「三澄、ひとりで並んでるの?」

 三澄の前後に並んでいる人は、それぞれ家族連れっぽいグループで、三澄のご両親とは違う人だった。

 これって、めちゃくちゃチャンスなんじゃね?
高鳴る心臓をごまかしつつ訊くと、三澄は「うん…」とはにかんでうなずいた。

「ちょっと、金運の神様にお願いしたいことがあって、ね。お正月の3が日の内にここにお詣りしたら、その年はお金に困らないってお客様にうかがったから、来てみました」

 えへ、と笑う三澄はめちゃくちゃかわいい。
というか、マジでチャンスじゃん。
久々に、三澄とプライベートに話せる……!

「マジで?じゃぁ、俺も一緒に並んでいい? 俺も金運のご利益、めちゃくちゃ欲しいからさ」

「えっ。うん」

「じゃ、自転車おいてくるから待ってて…! 戻ってきたら、連絡する!」

「わかった。スマホ、気にしてるね」

 三澄はにこっと笑って、手をふってくれた。

 うわああああああああ。ヤバい。
新年早々、俺、ツキまくってる!

 ちょっと断られないように勢いで押してしまったけど、嫌がられてはいなさそうだった。
にこっと笑ってくれた三澄の顔がかわいすぎて、俺の顔もめちゃくちゃにやける。
 はやく自転車をおいてきて、急いでもどらなくては!
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