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転職して欝々としていたら、友達の弟に遭遇。……ときめきとか、縁のない言葉だと思っていたんだけど!?

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 ん?
顔、真っ赤……?

 子犬系の年下のイケメンが、顔を真っ赤にしてこちらを見ています。
って、乙女ゲームなナレーションを脳内で入れてしまった。

 思わず、高良くんの顔をじっと見てしまう。
高良くんは、私から目をそらし、スマホを持つ手元を必死で見つめている。

 うん……?
ちょっと、手、震えてますね……?

「あ、あー……清水寺も、丸山公園も、高台寺も、ライトアップ終わってるっぽいです」

「あ、そうなんだ。まだやってそうなのにね」

 なにげなさを装った高良くんの会話に、同じように答える。
けど、けどさぁ……。

 これって、あれじゃない?
高良くんって、もしかして私のこと……。

「あっ。菜摘さん、これ、どうですか?」

「ん?」

 行事とかが載っているホームページを見ていた高良くんが、ぱっと顔をあげて、私にスマホを見せた。

「ここのお寺。今日は、イベント……って言ったらだめなのかな。行事の日なんですよ」

 ホームページに乗っていた写真は、まさに今通りかかっている大きな黒い門。

「行事? って、なんの?」

 場所的には、ちょうどいいけど。
門で行事って、なんなんだ。

 首をかしげると、高良くんは、ホームページのリンクを開けた。
ホームページの写真が、別の門に変わる。
ばーんとした門は立派で、ライトアップした姿は荘厳ではあるけど。

「この上に登って、一晩中、念仏を唱えるんです」

 高良くんが、なぜかやたら嬉しそうに言う。
そういうの、犬っぽくてかわいい。
けど。

「念仏?」

 な、なにそれ……。
ガチで仏教じゃん。
ちょっとひくわー。

 イベントごとは好きだけど、ガチな宗教行事は興味ない。
高良くん、なんでそんなに嬉しそうなの?

「前に友達が参加して、面白かったって聞いたことあったんですよ!」

「そ、そうなんだ……」

 それ、面白いものなの……?
若者の感覚が、ほんとわからないよ。

 とりあえず。
高良くんが私のこと好きかもっていうのは、勘違いっぽい……。
いくらなんでも、好きな女を、念仏には誘わないっしょ。



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