有涯おわすれもの市

 突然未亡人になり、家や仕事を追われた30歳の日置志穂(ひおき・しほ)は、10年ぶりに帰ってきた故郷の商店街で『有涯おわすれもの市』と看板の掲げられた店に引き寄せられる。
 そこは、『有涯(うがい)……生まれてから死ぬまで』の中で、人々が忘れてしまったものが詰まる市場だった。
 訪れる資格があるのは死人のみ。
 生きながらにして市にたどり着いてしまった志穂は、店主代理の高校生、有涯ハツカに気に入られてしばらく『有涯おわすれもの市』の手伝いをすることになる。

「もしかしたら、志穂さん自身が誰かの御忘物なのかもしれないね。ここで待ってたら、誰かが取りに来てくれるかもしれないよ。たとえば、亡くなった旦那さんとかさ」

 
 あなたの人生、なにか、おわすれもの、していませんか?

 限りある生涯、果てのある人生、この世の中で忘れてしまったものを、御忘物市まで取りにきてください。

 不登校の金髪女子高生と30歳の薄幸未亡人。
 二人が見つめる、有涯の御忘物。

登場人物
■日置志穂(ひおき・しほ)
30歳の未亡人。職なし家なし家族なし。

■有涯ハツカ(うがい・はつか)
不登校の女子高生。金髪は生まれつき。
有涯御忘物市店主代理

■有涯ナユタ(うがい・なゆた)
ハツカの祖母。店主代理補佐。
かつての店主だった。現在は現役を退いている。

■日置一志(ひおき・かずし)
故人。志穂の夫だった。


表紙はあままつさん(@ama_mt_)のフリーアイコンをお借りしました。ありがとうございます。



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