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六話
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(どうか……お救いください精霊神様)
祈りの時間は日に日に増えていった。
家臣たちは手を尽くし、王都からの脱出を図ってくれている。
だけど。
私はここまで来たならば、最後までこの都と運命を共にしようと考えていた。
両親と家臣団の皆さえ領地へ戻れれば、王子やノービス家も彼らからは手を引くだろう、と。
『いいえ。ダメですよカテリーナ。それでは収まりません』
精霊神様はお怒りだ。
これまでに感じたことがないほど、魂を怒りで震わせていらっしゃるのであった。
『我慢の限界です。カテリーナ、王都など捨ておきなさい』
「どうか、どうかお気をおさめください精霊神様。王都には罪無き民が数多くおります」
『わたくしからすれば、民など詮なき物。カテリーナを傷物にしようとする悪鬼は、アンデッドよりも罪深い』
「どうかお気をおさめくださいませ。わたしは大丈夫です」
『ダメです。王都を離れなさい。わたくしが人間を滅ぼしてもよいのですよ?』
「どうか……」
かろうじて赦しを得ているが、精霊神様はヴァンハイアー領土以外を潤す気はないとおっしゃいました。
日を追うごとに王都の土地は痩せ細り、精霊の守護が弱まりつつある。
一方、ヴァンハイアー領土の一部である屋敷だけが異常なほどの加護を受けているのだ。
私は精霊神様の赦しを得て、その加護の一部を王都へと移し、なんとかアンデッドの侵入を防ぐ。
それでもわずかに侵入したアンデッドにより被害が出ているとの話だ。
『前世であれだけ良くしてくれたカテリーナのお願いだから訊くのです。誰が腐った人間の王都など護ろうか』
精霊神様は、そう言いながらも私のやりたいことは理解してくださっている。
今、王都を離れたら、私が死んだら大変なことになる。
シャイナ=ノービスの獲物をにらむ目を思いだし、身のすくむ思いだ。
しかし逃げ出すわけにはいかない。
両親たちやアーサーは先日襲ってきた襲撃者の件を王城へと通知し、探りを入れるそうだ。
スティーヴ殿下やシャイナはとぼけるだろうが、わたしにはすべてわかっている。
問題は、どうやってシャイナの正体をわかってもらうか。
しかし考えてみてもわからない。
わかる気のない人に、どうやって理解させればよいというのだろう?
祈りの時間は日に日に増えていった。
家臣たちは手を尽くし、王都からの脱出を図ってくれている。
だけど。
私はここまで来たならば、最後までこの都と運命を共にしようと考えていた。
両親と家臣団の皆さえ領地へ戻れれば、王子やノービス家も彼らからは手を引くだろう、と。
『いいえ。ダメですよカテリーナ。それでは収まりません』
精霊神様はお怒りだ。
これまでに感じたことがないほど、魂を怒りで震わせていらっしゃるのであった。
『我慢の限界です。カテリーナ、王都など捨ておきなさい』
「どうか、どうかお気をおさめください精霊神様。王都には罪無き民が数多くおります」
『わたくしからすれば、民など詮なき物。カテリーナを傷物にしようとする悪鬼は、アンデッドよりも罪深い』
「どうかお気をおさめくださいませ。わたしは大丈夫です」
『ダメです。王都を離れなさい。わたくしが人間を滅ぼしてもよいのですよ?』
「どうか……」
かろうじて赦しを得ているが、精霊神様はヴァンハイアー領土以外を潤す気はないとおっしゃいました。
日を追うごとに王都の土地は痩せ細り、精霊の守護が弱まりつつある。
一方、ヴァンハイアー領土の一部である屋敷だけが異常なほどの加護を受けているのだ。
私は精霊神様の赦しを得て、その加護の一部を王都へと移し、なんとかアンデッドの侵入を防ぐ。
それでもわずかに侵入したアンデッドにより被害が出ているとの話だ。
『前世であれだけ良くしてくれたカテリーナのお願いだから訊くのです。誰が腐った人間の王都など護ろうか』
精霊神様は、そう言いながらも私のやりたいことは理解してくださっている。
今、王都を離れたら、私が死んだら大変なことになる。
シャイナ=ノービスの獲物をにらむ目を思いだし、身のすくむ思いだ。
しかし逃げ出すわけにはいかない。
両親たちやアーサーは先日襲ってきた襲撃者の件を王城へと通知し、探りを入れるそうだ。
スティーヴ殿下やシャイナはとぼけるだろうが、わたしにはすべてわかっている。
問題は、どうやってシャイナの正体をわかってもらうか。
しかし考えてみてもわからない。
わかる気のない人に、どうやって理解させればよいというのだろう?
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