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第二章〜フューズ王国〜

第13話 絡まれた!!

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「ふんっ、俺様を知らないのか?まあ下民だからしょうがないだろう。いいか? よく聞いとけよ? 俺様はこの都市のファウンダー辺境伯の三男である、エゴール・フォン・オイルセン様だ!」

「……また、旅の人が絡まれてるわよ、災難だわね」

 現在俺たちはデブ貴族に絡まれていた。周りに野次馬が群がってきている。またってことは、このデブ貴族はしょっちゅうこんな騒ぎを起こしているのだろうか。こういうのはテンプレっちゃテンプレだけど、実際絡まれるとめんどくさいな……。この国にも入国したばっかりだし悪目立ちは避けたいんだけど。

「ふん、なんか言ったらどうだ? ほれ、この俺様と喋れるのだぞ? 嬉しいだろう?」

 何を言っているんだ……こいつ。余りに突拍子もないことを聞くと、呆然とすると言うがまさにこれだろうか。

「それはそうと、そこの女達こっちへこい」

「すみませんが、2人とも俺の大事な仲間なので貴方に渡す訳には行きません」

「なんかこの人嫌な感じです、寒気がします」

「私も遠慮しとくわ」

 勿論二人をこんな奴に渡す訳ない。にしてもカンナがやんわりと断らずに、直球に嫌と言っている。

「黙れ! そこのお前には聞いてない! お前らは大人しく俺様の言うことを聞けばいいんだ!」

「もう一度言いますが、この二人は貴方には渡しません」

「貴様ァ! この俺様に恥をかかせやがって! もういい、お前ら、そこの男を痛めつけて、女は縛って屋敷へ連れてけ!」

「はっ!」

 やっぱ、こうなるか……。デブ貴族の後ろに控えていた護衛らしき二人が前に出てきた。ステータスはEランクぐらいだな。ステータスの差が2倍以上あるし、余裕だろう。

「大人しくしてるなら軽く痛めつけるぐらいで許してやるぞ?」

「降参するなら今のうちなんだな」

 そう、二人の護衛らしき男達がそう言いながら剣を抜く。
 勿論、俺は降参する気はない。俺は1歩前に出て剣を抜いた。

「はん、まだ尻の青いガキが俺たちに勝てるとでも思っているのか?」

「勝てるかどうかはやってみないと分かんないだろ?」

「ふん、生意気な! 精々頑張るんだなっ!」

 男は剣を振りかざし、力任せに振り下ろしてきた。

   ガッ! ──キィィン──

「ッチ」

 俺は剣を振りかざしてきた時から後退し、剣を斜めにすることで剣の重心を逸らし男の攻撃を受け流した。3日間の旅の間にカンナに稽古をつけて貰ったし、多分大丈夫だろう。

「ふん!」

「ガハッ!」

 俺はそのまま体勢を崩した男の腹を膝蹴りした。そのまま男は腹を抱えるようにしてうずくまる。

「まずは1人だな」

「ええい、何をやっている!さっさとあの男を殺さんか!」

 あれ? いつの間にか痛めつけるから殺すにグレードアップしてないか?

「死ねぇぇ!!」

 もう1人の男が空を剣で薙ぎ、俺を殺そうとしてくる。俺は後ろに下がり攻撃を躱す。何も考えずに力任せに攻撃して、防御ががら空きの男に斬撃を放つ。俺が放った斬撃は男の手首を切り裂き、男の手首から鮮血が流れる。

「うああぁぁ!! 俺の……手が!」

「さて、次はお前が来るのか?」

「な、なんでそんな強いんだ!? ぐっ、くそ! 覚えてろよ!」

 そのまま貴族は護衛を置いて逃げて行った。護衛を置いてくとか最低だな、仮にも仕事とはいえ自分のために戦ってくれた奴を置いていくなんて、あのデブ貴族にとってはコイツらは〝物〟と同じだったのだろうか。

「カッコイイです! ご主人様!」

 何気この異世界に来てから初めての活躍だったりする。にしてもまだ血を見るのも、戦闘をするのも慣れていない。それでも敵には躊躇してはいけないので罪悪感を押し殺して今回は攻撃した。基本あっちが悪いんだけれど、罪悪感も感じるし、そのまま護衛の二人を置いていくのはなんか可哀想だったので、衛兵さんに預けておいた。
 やはり、あの貴族は普段からこの街を訪れる人にああやって絡んでいるらしい。
 しかも、あの貴族は鑑定持ちなので弱いものばっかが狙われるため抵抗ができないし、貴族相手だと衛兵や、周りの人も厄介事に関わりたくないので助けてくれないらしい。
 俺たちはステータスを下げていたから絡まれたのだろうか?確かにあのステータスならEランクレベル二人いたらキツイよな。
 その衛兵さんも今回はその貴族をやっつけてくれて清々してると言っていた。護衛の男二人は軽く治療されて、そのまま拘留所みたいな所に連れていかれた。
 そのあと俺たちは宿に行って拠点を確保したあとにギルドに行くことにした。

「ギルドもデカいな」

「そうね、ここは人も冒険者も多いからその分ギルドも大きいのかしらね?」

「そうかもな」

 そう、ここ城塞都市ガルゾディスのギルドはとにかくデカい。前に行ったバルエルのギルドもデカいと思っていたのだが、ここはその三倍以上の大きさはありそうだ。
 とりあえず中に入ってみると、いかにも冒険者って感じな人達がたむろしている。基本的な構造はバルエルと同じなのだが、全てが大きい。カウンターもバルエルでは精々3~4個ぐらいしかなかったのだが、ここには10以上を超えている。そんなことを考えながらカウンターに向かおうとしてたのだが……。

「おい、お前見ない顔だな?……ちょっとお前の横の女借りるな」

「は?」
 いきなり、そう言いながら、如何にも柄の悪そうな男がカンナとリアンに手を伸ばそうとしてきた。今日2回目だぞ……絡まれるの。

 ──パシッ

「あ゛? なんだよその手は」

「いきなり何を言ってるんですか? カンナとリアンを貸すことは出来ません。そういう事は他を当たって下さい」

 俺は男の手をつかみ出来るだけ目を凄む。

 テーブルに座って見物していた男が「ギャハハ、あのガキ終わったな」と呟く。

「は? なんでお前がそんなことを決めれるんだよ。決めれるのは俺とそこの女だろ? おい、そんなヒョロガリより、俺みたいなイケメンの方がいいよなぁ?」

 イケメンじゃなくて、ただのゴリラだろ。

「気持ち悪いので遠慮します!」

「近寄らないで、穢らわしいわ」

 そう笑顔でカンナとリアンが男改め、ゴリラにいう。この2人結構毒舌と言うか、ズバッと言うんだよな。普通に二人にこんなこと言われたら心がズタズタになりそうだ。あ、Mにとってはご褒美かな?

「ってことで、二人も嫌みたいなのですみません」

「てめぇら……この俺に恥をかかせやがって」

 そう言いながらわなわなと震えている。いや、トラブル起こしてきたのそっちだからね!?

「礼儀がなってないガキはお仕置きしないとなっ!」

 そう言いながらゴリラは手をグーにして殴ろうとしてくる。

「は?──うあぁ!」

 ──バギャァン

 俺はゴリラが殴ろうとしてきた時にそのまま手を掴んで、殴ろうとしてきたその勢いを使って背負い投げみたいなことをした。まあ綺麗に投げれたわけではないけど、それっぽいことは出来た。授業の柔道が初めて役に立ったな。

「マジか……」

「……あのガキ強ぇぞ」

 ゴリラは床に頭からいったため相応のダメージを食らったのかまだ伸びていた。まあピクピクしてるし、死んでないだろ。

「ふぅ……お騒がせしました」

 そう俺がお辞儀すると何故か怯えたような目で見られた。なんでだろうな?
 そのあとは普通にギルドで依頼を受けたりした。今回の依頼達成でFランクからEランクに上がることが出来た。ちなみにあのゴリラはあれでDらしい。

 グゥー

「……お腹空いたか?」

「ち、違うわよ! ちょっと小腹が空いただけ」

「それ、お腹が減ったっていうんだよ。もう直夜になるし、ちょっと早いけどご飯食べるか!」

「ここの名物は鶏肉らしいですよ!」

「お、焼き鳥とかいいな!」

 そんなことを喋りながら店に入っていく。中には多くの冒険者や町人がいて、酒を飲みながら騒いでいた。

「お、あの子可愛いな!」

「お、おいやめとけ、今日ビスビルが手を出そうとして返り討ちにされたそうだぞ」

 どうやら、もう噂は広がっている様だ。これなら絡まれる心配もないだろう。

「ぷはぁー!!」

「モグモグ……おいひいわね」

 どの鶏肉にも脂が乗っていて美味い。脂でくどくなってきたところでエールを流し込むのがまた堪らない。日本では大人になるまではお酒は禁止だが、この世界では特に年齢制限とかないそうだ。まあこっちの世界には蒸留という技法はなさそうだし、基本的にそんな度数が高いお酒はないんだろう。

 俺は特に皮が好きだ。タレでも塩でも1番美味しいと思っている。念入りに焼いたときのカリカリ感、さっと焼いた場合の柔らかいぷるぷるした食感の両方が味わえる。
 異世界のご飯は美味しいものはあまりないと思っていたが逆にハズレの方が少ないのでビックリしている。まあたまたまなのかも知れないがな。

 うぐ、食いすぎた。会計で1万ゴールドと言い渡され軽く目眩がした。これが家計のお金の紐を握る主婦の気持ちなのだろうか……。

 そのあと俺たちは宿に戻ったのだが。

「あ、ちょっとお客さん、手紙預かったので渡しておきます。ちゃ、ちゃんと渡しましたからね?」

 ん? 従業員さんがなにか焦り、そして押し付けるように手紙を渡してくる。とりあえず、部屋に戻り、手紙を開封してみる。

「ええと、なになに? 明日教会の鐘が3回なるころに迎え寄越すから、屋敷に来るようにって……宛名はファウンダー辺境伯……」

「あら、めんどくさい事になったわね」

「大丈夫ですか?ご主人様」

 うわ、めんどくさっ!!!
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