27 / 30
二章 誇れる自分である為に
11 突破口
しおりを挟む
アイリスの家でケーキとカレーをご馳走になった日の翌日の放課後。
「た、確かに……とんでもないピンチじゃないですか俺」
「そう。お前今とんでもねえピンチなんだよ。首の皮一枚繋がってるだけなんだぜ?」
「そ、そうなりますよね……うわぁ、マジか……」
ブルーノ先生に呼び出され、ブルーノ先生の研究室に呼び出された俺は、とんでもない事実を指摘された。
どうやら俺はまだ退学の危機に瀕しているようだ。
言われてみれば理由は納得で、この前の追試もその場凌ぎにしかなっていないという現実は自然と頭に入って来た。
……でも、だからといってどうするべきなのかはすぐに浮かんでこないけど。
だけどブルーノ先生には見えているようで。
「で、そんなお前に提案があるんだが」
「提案?」
特に焦る表情とかを見せずに提案してくる。
「魔戦競技祭。コイツで大活躍して実績貰っちまおう」
言われて思わず目を見開いた。確かに名案だ。もしそれができれば、アイリスが魔術の論文で追試を突破したように、俺もなんとか追試を逃れる事ができるかもしれない。
……いや、まあ追試の時と同じでアイリスの力に頼る事になっちまうんだけど。
それも今度は、アイリスの為じゃなく100パーセント自分の為に。
「……気が乗らないか?」
「いえ、大丈夫です……やります」
色々と俺の中で引っ掛かる事は当然ある。
追試と違って相手はあのハゲじゃなく他の学生だ。
皆が皆、自分が積み上げてきたのを此処で出す。
そこに人の力を携えて出ていくというのは、まあ……あんまり気が進まねえよな。
とはいえじゃあ出ません、そういう事をやる位なら大人しく次に追試を受けなくちゃならなくなったら大人しく退学します、みたいなストイックな考え方はできなくて。
何よりこの状況でそんな楽観的な事を考えたり……そもそもこんな事で悩んだりしている事自体が、アイリスに心配を掛ける事に繋がるわけで、それは駄目だ。
例えアイリスに言って貰えた事が俺の中でメッキが剥がれるように消えてしまっても。
アイリスが俺にそういう事を言ってくれた事に対する気持ちは消えないんだから。
アイリスの気持ちは裏切りたくない。アイリスの前位では、強い自分で居たい。
その為にもこんな所で退学になる訳にはいかない。
だからこの突破口は遠慮しながらも進ませて貰う……多少心は痛むけど。
……でもちょっと待て。
「あの……すんません。すげえ良い感じの提案をしてもらったのに悪いんですけど……個人戦の予選、確かもう終わってますよ?」
今年は順当に三年生で枠が埋まった。
二年生が……兄貴が、結構惜しい所までいったみたいだけど駄目だったらしい……どうでもいいけど。
「ああ、個人戦はな……でも団体戦が残ってるだろ?」
「いや、残ってますけどその……お恥ずかしい話ですけど、頭数集められませんよ俺」
「そんなお前に朗報。ルール上は上限五人でチームを組むって感じだから、極論言えば一人でも出られるんだよな」
そうか。
当たり前のように5人チームしか話を聞かないから、先入観でそうじゃないと駄目だって思ってた。
いけるんだ……だったら、決まりだ。
「そういう事なら……俺一人でも出られますね」
マジで誰も誘える奴がいないからな……一人で頑張るしかない。
……いや、実質二人か。俺の手にあるのはアイリスの魔術だからな。
「一人、ね。一応アイリスを誘うっていう選択肢もあるんじゃないのか?」
「いやいやいや、無いです無いです。先生も知ってると思うんですけど普通に危ないんですよあれ。殺すのルール違反なんで死ぬような事は無いと思うんですけど……それでも危ないし。そんな事にアイリスを巻き込む訳にはいかないです。力貰ってるだけで十分すぎる位支援して貰ってますし、そういう変な負担まで掛けてられない」
「変な負担……ね。まあ良いか」
そう言ってブルーノ先生は書類を手渡してくる。
「これが構内予選参加の申請書な。これ書いて俺んとこ持ってこい」
「分かりました……でもこういうのって基本担任に提出する者じゃないんですか?」
「基本はそうだが……あのハゲがまともに通すとは思えない。別に俺に提出するのもルール違反って訳じゃねえんだ。遠慮せずに持ってこいよ」
「……なんか何から何までありがとうございます」
「気にすんな。教師なんていくらでも利用してけ!」
「は、はい!」
ほんと良い先生だ。
アイリスになら分かるけど、何故俺まで贔屓され続けてるんだろう。
あの時助けてもらったので十分で、そこから先、肩を持ち続ける理由なんて無い筈なのに。
でも、本当に助かるし……マジで感謝だ。
多分というか間違いなく、ハゲはこういう抜け道みたいな事を教えてはくれないだろうから。
率先して俺を退学に追い込もうとしてきそうだから。この人には頭が上がらないな。
「ああ、そうそう。この事アイリスには相談しとけよ」
「え、いや、アイリスとは組まないですよ?」
「そうじゃない。アイツの頭ん中にはすげえ魔術が色々あるんだ。これからやる事に合わせて手札組んどけって話」
「ああなるほど」
……確かにそれなら相談しといた方が良いな。
ほんと、色々な人に助けて貰ってばっかりだ。
だから認められたいとか、そういうどうしようもない位膨れ上がってくる承認欲求とかは別としてさ。
助けてくれる人の為にも……勝たないとな。
行ける所まで行くんだ。
「た、確かに……とんでもないピンチじゃないですか俺」
「そう。お前今とんでもねえピンチなんだよ。首の皮一枚繋がってるだけなんだぜ?」
「そ、そうなりますよね……うわぁ、マジか……」
ブルーノ先生に呼び出され、ブルーノ先生の研究室に呼び出された俺は、とんでもない事実を指摘された。
どうやら俺はまだ退学の危機に瀕しているようだ。
言われてみれば理由は納得で、この前の追試もその場凌ぎにしかなっていないという現実は自然と頭に入って来た。
……でも、だからといってどうするべきなのかはすぐに浮かんでこないけど。
だけどブルーノ先生には見えているようで。
「で、そんなお前に提案があるんだが」
「提案?」
特に焦る表情とかを見せずに提案してくる。
「魔戦競技祭。コイツで大活躍して実績貰っちまおう」
言われて思わず目を見開いた。確かに名案だ。もしそれができれば、アイリスが魔術の論文で追試を突破したように、俺もなんとか追試を逃れる事ができるかもしれない。
……いや、まあ追試の時と同じでアイリスの力に頼る事になっちまうんだけど。
それも今度は、アイリスの為じゃなく100パーセント自分の為に。
「……気が乗らないか?」
「いえ、大丈夫です……やります」
色々と俺の中で引っ掛かる事は当然ある。
追試と違って相手はあのハゲじゃなく他の学生だ。
皆が皆、自分が積み上げてきたのを此処で出す。
そこに人の力を携えて出ていくというのは、まあ……あんまり気が進まねえよな。
とはいえじゃあ出ません、そういう事をやる位なら大人しく次に追試を受けなくちゃならなくなったら大人しく退学します、みたいなストイックな考え方はできなくて。
何よりこの状況でそんな楽観的な事を考えたり……そもそもこんな事で悩んだりしている事自体が、アイリスに心配を掛ける事に繋がるわけで、それは駄目だ。
例えアイリスに言って貰えた事が俺の中でメッキが剥がれるように消えてしまっても。
アイリスが俺にそういう事を言ってくれた事に対する気持ちは消えないんだから。
アイリスの気持ちは裏切りたくない。アイリスの前位では、強い自分で居たい。
その為にもこんな所で退学になる訳にはいかない。
だからこの突破口は遠慮しながらも進ませて貰う……多少心は痛むけど。
……でもちょっと待て。
「あの……すんません。すげえ良い感じの提案をしてもらったのに悪いんですけど……個人戦の予選、確かもう終わってますよ?」
今年は順当に三年生で枠が埋まった。
二年生が……兄貴が、結構惜しい所までいったみたいだけど駄目だったらしい……どうでもいいけど。
「ああ、個人戦はな……でも団体戦が残ってるだろ?」
「いや、残ってますけどその……お恥ずかしい話ですけど、頭数集められませんよ俺」
「そんなお前に朗報。ルール上は上限五人でチームを組むって感じだから、極論言えば一人でも出られるんだよな」
そうか。
当たり前のように5人チームしか話を聞かないから、先入観でそうじゃないと駄目だって思ってた。
いけるんだ……だったら、決まりだ。
「そういう事なら……俺一人でも出られますね」
マジで誰も誘える奴がいないからな……一人で頑張るしかない。
……いや、実質二人か。俺の手にあるのはアイリスの魔術だからな。
「一人、ね。一応アイリスを誘うっていう選択肢もあるんじゃないのか?」
「いやいやいや、無いです無いです。先生も知ってると思うんですけど普通に危ないんですよあれ。殺すのルール違反なんで死ぬような事は無いと思うんですけど……それでも危ないし。そんな事にアイリスを巻き込む訳にはいかないです。力貰ってるだけで十分すぎる位支援して貰ってますし、そういう変な負担まで掛けてられない」
「変な負担……ね。まあ良いか」
そう言ってブルーノ先生は書類を手渡してくる。
「これが構内予選参加の申請書な。これ書いて俺んとこ持ってこい」
「分かりました……でもこういうのって基本担任に提出する者じゃないんですか?」
「基本はそうだが……あのハゲがまともに通すとは思えない。別に俺に提出するのもルール違反って訳じゃねえんだ。遠慮せずに持ってこいよ」
「……なんか何から何までありがとうございます」
「気にすんな。教師なんていくらでも利用してけ!」
「は、はい!」
ほんと良い先生だ。
アイリスになら分かるけど、何故俺まで贔屓され続けてるんだろう。
あの時助けてもらったので十分で、そこから先、肩を持ち続ける理由なんて無い筈なのに。
でも、本当に助かるし……マジで感謝だ。
多分というか間違いなく、ハゲはこういう抜け道みたいな事を教えてはくれないだろうから。
率先して俺を退学に追い込もうとしてきそうだから。この人には頭が上がらないな。
「ああ、そうそう。この事アイリスには相談しとけよ」
「え、いや、アイリスとは組まないですよ?」
「そうじゃない。アイツの頭ん中にはすげえ魔術が色々あるんだ。これからやる事に合わせて手札組んどけって話」
「ああなるほど」
……確かにそれなら相談しといた方が良いな。
ほんと、色々な人に助けて貰ってばっかりだ。
だから認められたいとか、そういうどうしようもない位膨れ上がってくる承認欲求とかは別としてさ。
助けてくれる人の為にも……勝たないとな。
行ける所まで行くんだ。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~
草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★
男性向けHOTランキングトップ10入り感謝!
王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。
だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。
周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。
そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。
しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。
そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。
しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。
あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。
自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
『購入無双』 復讐を誓う底辺冒険者は、やがてこの世界の邪悪なる王になる
チョーカ-
ファンタジー
底辺冒険者であるジェル・クロウは、ダンジョンの奥地で仲間たちに置き去りにされた。
暗闇の中、意識も薄れていく最中に声が聞こえた。
『力が欲しいか? 欲しいなら供物を捧げよ』
ジェルは最後の力を振り絞り、懐から財布を投げ込みと
『ご利用ありがとうございます。商品をお選びください』
それは、いにしえの魔道具『自動販売機』
推すめされる商品は、伝説の武器やチート能力だった。
力を得た少年は復讐……そして、さらなる闇へ堕ちていく
※本作は一部 Midjourneyにより制作したイラストを挿絵として使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる