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ウルティア国戦役編

151 カナタ、残り4個も開けてみる

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 カナタは目の前にある4個の山吹色のゴーレムオーブを見て考え込んでいた。

「この残り4個も愛砢人形ラブラドールの可能性があるんだよね?」

「私は存じ上げません」とニク。

「ミューもオーブのこと・・・・・・は知らなーい」とミュー。

 どうやら彼女たちにもゴーレムオーブの秘密は判らないようだ。
ゴーレムの出るガチャオーブはゴーレムマスターというゴーレムを使役する魔物からドロップすることが知られていた。
今回の魔物の氾濫でもゴーレムマスターの出現が報告されていた。
おそらく、そのドロップがこの100個のゴーレムオーブなのだろう。
他にもゴーレム自身がゴーレムのオーブをドロップすることがあるのだが、それはかなり稀なことだった。
ゴーレムからドロップするガチャオーブの中身は自分と同じタイプ――石なら石、鉄なら鉄ということ――の素材がらみのアイテムだった。
ほとんどがその素材のインゴットなのだが、稀にゴーレムそのものの腕、足、胸、胴、腰、頭の各部をドロップすることがあった。
それらを1体のゴーレムに組み立てることも出来るし、壊れたゴーレムの交換部品とすることも出来た。
つまり、この山吹色のガチャオーブからは【**人形の〇〇】という、カナタが探していたアイテムが出る可能性もあった。

「(**人形シリーズが出ればニクを強化できる。
愛砢人形ラブラドールになれる肉ゴーレムが出ても、それはそれで困ることは無い。)
よし、開けよう」

 カナタは山吹色のゴーレムオーブを開けてしまおうと決意した。
もしシステムを持たない肉ゴーレムが出ても【ガチャオーブ化】スキルでオーブに戻してしまえばいいのだ。

 カナタが残り4個の山吹色のガチャオーブを同時に開くと、眩い黄金の光のエフェクトが発生した。

Nアイテム 肉ゴーレム
      ゴーレムの中では最下層に位置するゴーレム
      戦闘力も労働力も低く囮にしかならないと言われている

HNアイテム 鉄ゴーレム
       ゴーレムの中では中位に位置するゴーレム
       戦闘力も労働力もそこそこ高く、人の代わりとして使役されることが多い

Rアイテム **人形の翼
      使途不明アイテム

Nアイテム 肉ゴーレム
      ゴーレムの中では最下層に位置するゴーレム
      戦闘力も労働力も低く囮にしかならないと言われている

「出た! 肉ゴーレムが2体に**人形シリーズのアイテムだ。
だけど、Nオーブを開けたのになんでHNアイテムとRアイテムが出たんだ?」

 これは実はカナタの幸運値のせいだった。
カナタは父アラタの呪いの影響下にあったため、幸運値が低く抑制されていた。
それが父アラタが解呪されたために、一気に幸運値が本来の値まで上昇し、現在幸運値は276になっていた。
その尋常ではない幸運値によって確定破棄という現象が発生していた。
これはノーマルと確定していたガチャオーブのレアリティを破棄して、上位のレアリティとして開放するというものだった。
確率変動で上位のレアリティのオーブの取得確率が上がるのと、この確定破棄により、カナタは更に良いアイテムを得られるようになったのだ。

「ニク、【愛砢人形ラブラドールの翼】が出たけど、いるよね?」

「当然です。マスター」

 ニクはカナタから【愛砢人形の翼】を受け取ると、背中に融合した。
たぶん、これが飛行ユニットなのだろうとカナタは思っていた。
飛行ユニットという装置の詳細は知らないが、それが空を飛ぶための装置だということは、知らないはずの知識が教えてくれていた。

「どうせミューには使えないしー。
それより、その2体も早く調べてみてよ」

「そうだな」

 カナタはミューに促されて肉ゴーレムに【魔力探知】をかけた。
すると確かにシステムの反応が3つあった。

「3つ?」

「ああ、こっちもそうかも」

 ミューが指さしたのはアイアンゴーレムだった。

「え? 鉄ゴーレムにも愛砢人形ラブラドールがいるの?」

「えーと、とりあえず直せばわかるよ……」

 ミューが何か引っかかる言い方をしていたが、カナタは気付かずにそのまま【フルリカバー】を3体にかけた。
眩い光に包まれた肉ゴーレム2体に鉄ゴーレム1体。
その光が薄れると、全裸の美少女2人といかにもロボット的な機体が1体立っていた。

「あー。εイプシロンθシータ、それにやっぱり強化外装だね」

「所有権登録が完了いたしました。
εイプシロンは、マスターの指揮下に入ります」

「所有権登録が完了いたしました。
θシータは、マスターの指揮下に入ります」

「はい。よろしく。
とりあえず、これを着ちゃってね」

 カナタはもう慣れたもので、イプシロンとシータにエッチな下着と高級バスローブを与えた。
カナタは呪いの影響がなくなったため、幸運値が本来の数値に戻り急激に上昇した。
そのため、HNオーブでも普通の下着ではなく高級品のエッチな下着が出てしまうのだ。
なので、カナタの在庫にはそんな下着しかなかったのだ。
ちなみにガチャ屋では、お店で売るための売れ筋を出すために、わざわざ幸運値の低いメンバーにアイテムオーブを開けさせるという本末転倒なことになっていた。
売れない高級品より売れる普及品を売った方が儲かるのだ。
売れない高級品はただの在庫として積みあがるだけなのだ。
そんな不良在庫がカナタの【ロッカー】に保管されていたというわけだ。

 話を戻して、新たな愛砢人形ラブラドールはどういった機体なのだろうか。
カナタは興味を持ったのだが、イプシロンとシータは、ニク以上に無口なようだった。

「マスターは何もわかってないし、αアルファ姉さまは説明する気がないみたいだから、私が説明するね」

 ありがたいことにミューが説明を買って出てくれた。

εイプシロン姉さまは私の2代前の量産型ですねー。
基本性能に重きをおいたせいで、内蔵兵器が貧弱という欠陥があります。
その不利を補うために強化外装を装備しまーす。
なんと、それがこいつですね」

 ミューが元鉄ゴーレムをコンコンと叩きながら言う。
どうやらεイプシロンはこの強化外装とセットで性能を発揮するようだ。
片一方しか出なかったら最大性能を発揮出来なかったかもしれない。

θシータ姉さまは索敵型の特殊戦機ですねー。
情報収集用のあらゆるセンサーを持ってます。
戦闘力はほぼありませんねー」

「なかなか解り易かったけど、何か失礼なことを言ってないか?」

 カナタが顔を顰めたのと同じようにイプシロンとシータも苦笑いしていた。
だが、カナタが鵜呑みしてしまった、この兵器が貧弱とか戦闘力が無いという説明は、超破壊兵器の愛砢人形ラブラドールとしてということであり、この世界においては単独で国を殲滅できるレベルだということは知る由もなかった。
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