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南部辺境遠征編
143 エピローグ、黒ローブ密会
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ウルティア国の某所に黒いローブに身を包んだ者たちが集まっていた。
彼らこそが転移の魔導具で次元の傷――カナタの言う所謂赤い点――を作っていた組織の幹部連中だった。
彼らはどうやら、なんらかの活動の顛末を話しているらしい。
「何? 工作員に仕立て上げたAがやられただと?」
「Aは、こちらの制御から逸脱して目立ち過ぎたようだ」
「あの装置の我が強化されてしまう不具合のせいか」
「Aは煩悩が強すぎて余計なことをし出したのだったな?」
「さすがに拙いと警告と装置の調整に向かったのだが、一足遅くAは奴らの手に落ちあの装置を奪われるところだったのだ」
「もしもの時のために人形を同行させたのだったな?」
「ならば、全てを抹消して来たのであろうな?」
「いや、思わぬ邪魔が入ってな。
驚くなよ? 奴らも人形を持っている」
「そんなバカな! 奴らに人形を起動できるわけがない」
「いや、その存在はGで既に確認していたらしい」
「なぜそれを早く報告しなかった!」
「いや、まさか右腕に加えて左腕も稼働させているなどとは思わなかったのでな」
「ならば、奴らが真の価値を見いだす前に、こちらも早急にオプションを手に入れ強化せねばならぬぞ」
「いや、その個体を今のうちに破壊するべきだろう」
「出来るのか? 右腕に加えて左腕も持っているのだぞ?」
「オプションの同時使用は、制御核に負荷がかかる。
処理能力が著しく落ちるはずだから、そこを突けばあるいは……」
「全く……、なぜ人形が稼働している?」
「そこも含めて調べる必要がある」
「次の議題だが、Gでの成果が無さ過ぎではないか?」
「侵攻の失敗は想定の範囲内だが、奴らのダメージが少なすぎた」
「確か、南部辺境伯軍の戦力漸減と辺境伯の命を奪うのが目的だったな?」
「あれだけの魔物を嗾けて成果がないのはどうなのだ?」
「そこでもAが不始末をおこしてな」
「暗殺も出来ぬとは、いったい何のために希少な装置を使ったのか!」
「Aは逆に魔物に襲われて逃げ帰ったそうだ」
「何をやっておるのだあいつは!」
「装置を使う人選を誤ったということだろう」
「結局、装置の回収も出来ないとは、Aは疫病神か!」
「元々そこまでAには期待しておらぬ。
それより副産物としてオプションがみつかる可能性も期待していたはずだが?」
「それがNオーブの流通が一向に増えぬのだ」
「あの規模なら5万は流通するはずなのだろう?」
「それが全て消えてしまったのだ」
「由々しき事態だな」
「Gでの失態に続き、Aの存在の露呈、計画を変更せねばならん」
「やるなら今だろう」
「うむ、軍の移動には時間がかかる」
「幸いAを使って行ったMIでの準備は整っている」
「ならば早急にMIへと侵攻すれば奴らは対処出来ぬということだな?」
「正面で戦力を削ぎ、裏から本隊を侵攻させる。
計画の歯車が狂って来ているのが気になるのだが?」
「「「「「!」」」」」
話の途中だったのだが、全員の顔に緊張が走った。
全員がある魔力波動を感じたからだ。
「今のはまさか?」
「ああ、間違いない」
「「「「「呪いが消えた!」」」」」
「三英雄は年老いたとはいえ、未だ脅威だ」
「その一人の頸木が外れてしまった」
「Gで一人を仕留めそこなったうえに、もう一人も解放されたか」
「いや、勇者は年老いたうえ、その力を一部失っている。
新たな勇者が転生していない今こそこちらに分がある」
「そのために密かにウルティア国を奪ったのだ。
今度こそは我らが栄える世界を作るのだ」
「だが、人形の武器が足らぬのではないか?」
「素の状態でもAランク冒険者よりは強かろう」
「それでも右腕と左腕を持つ奴らの人形には適うまい」
「奴らの人形を破壊するのがまず第一だろう」
「人形はGとMUで確認されている。
南部辺境伯領内のどこかにいるはずだ」
「複数の人形により襲撃すれば、左腕も役に立たぬであろう」
「むしろその右腕と左腕を回収してこちらの戦力とするべきだろう」
「奴らの人形さえどうにかすれば、こちらに分があるはずだ」
「市街地ならば、威力の在り過ぎる右腕は早々使えまい」
「よし、奴らの人形を捜索し叩く。
その任務はナンバー8に一任する」
「俺が?」
「お主は幹部の中で唯一人形を見ているのだろう?」
「そうだ。ナンバー8が適任だ」
「人形は2体支給する」
「やれやれ、貧乏くじを引いたものだな」
ナンバー8と言われた黒ローブの男はそのまま転移の魔導具で何処かへと消えて行った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
この話が会話中心になっているのは、出て来る人物たちが名探偵コ〇ンでいう黒塗り人物の扱いだからです。
話の展開上、あえて個々の人物詳細をぼかす必要があったのです。
ゼ〇レのモノリス的な会話のイメージでもあります。
これでウルティア国遠征編は一先ず終わりです。
結局カナタたちはウルティア国を目指しただけで、ウルティア国に入れもしませんでした。
もしかすると後で章タイトルを変更するかもしれません。
次章は愛砢人形同士による戦闘の話になる予定です。
その前に人物紹介を入れられたら良いのですが……。
覚書のキャラ設定程度しかなく、ファーマットも統一されていないため、時間がかかりそうです。
彼らこそが転移の魔導具で次元の傷――カナタの言う所謂赤い点――を作っていた組織の幹部連中だった。
彼らはどうやら、なんらかの活動の顛末を話しているらしい。
「何? 工作員に仕立て上げたAがやられただと?」
「Aは、こちらの制御から逸脱して目立ち過ぎたようだ」
「あの装置の我が強化されてしまう不具合のせいか」
「Aは煩悩が強すぎて余計なことをし出したのだったな?」
「さすがに拙いと警告と装置の調整に向かったのだが、一足遅くAは奴らの手に落ちあの装置を奪われるところだったのだ」
「もしもの時のために人形を同行させたのだったな?」
「ならば、全てを抹消して来たのであろうな?」
「いや、思わぬ邪魔が入ってな。
驚くなよ? 奴らも人形を持っている」
「そんなバカな! 奴らに人形を起動できるわけがない」
「いや、その存在はGで既に確認していたらしい」
「なぜそれを早く報告しなかった!」
「いや、まさか右腕に加えて左腕も稼働させているなどとは思わなかったのでな」
「ならば、奴らが真の価値を見いだす前に、こちらも早急にオプションを手に入れ強化せねばならぬぞ」
「いや、その個体を今のうちに破壊するべきだろう」
「出来るのか? 右腕に加えて左腕も持っているのだぞ?」
「オプションの同時使用は、制御核に負荷がかかる。
処理能力が著しく落ちるはずだから、そこを突けばあるいは……」
「全く……、なぜ人形が稼働している?」
「そこも含めて調べる必要がある」
「次の議題だが、Gでの成果が無さ過ぎではないか?」
「侵攻の失敗は想定の範囲内だが、奴らのダメージが少なすぎた」
「確か、南部辺境伯軍の戦力漸減と辺境伯の命を奪うのが目的だったな?」
「あれだけの魔物を嗾けて成果がないのはどうなのだ?」
「そこでもAが不始末をおこしてな」
「暗殺も出来ぬとは、いったい何のために希少な装置を使ったのか!」
「Aは逆に魔物に襲われて逃げ帰ったそうだ」
「何をやっておるのだあいつは!」
「装置を使う人選を誤ったということだろう」
「結局、装置の回収も出来ないとは、Aは疫病神か!」
「元々そこまでAには期待しておらぬ。
それより副産物としてオプションがみつかる可能性も期待していたはずだが?」
「それがNオーブの流通が一向に増えぬのだ」
「あの規模なら5万は流通するはずなのだろう?」
「それが全て消えてしまったのだ」
「由々しき事態だな」
「Gでの失態に続き、Aの存在の露呈、計画を変更せねばならん」
「やるなら今だろう」
「うむ、軍の移動には時間がかかる」
「幸いAを使って行ったMIでの準備は整っている」
「ならば早急にMIへと侵攻すれば奴らは対処出来ぬということだな?」
「正面で戦力を削ぎ、裏から本隊を侵攻させる。
計画の歯車が狂って来ているのが気になるのだが?」
「「「「「!」」」」」
話の途中だったのだが、全員の顔に緊張が走った。
全員がある魔力波動を感じたからだ。
「今のはまさか?」
「ああ、間違いない」
「「「「「呪いが消えた!」」」」」
「三英雄は年老いたとはいえ、未だ脅威だ」
「その一人の頸木が外れてしまった」
「Gで一人を仕留めそこなったうえに、もう一人も解放されたか」
「いや、勇者は年老いたうえ、その力を一部失っている。
新たな勇者が転生していない今こそこちらに分がある」
「そのために密かにウルティア国を奪ったのだ。
今度こそは我らが栄える世界を作るのだ」
「だが、人形の武器が足らぬのではないか?」
「素の状態でもAランク冒険者よりは強かろう」
「それでも右腕と左腕を持つ奴らの人形には適うまい」
「奴らの人形を破壊するのがまず第一だろう」
「人形はGとMUで確認されている。
南部辺境伯領内のどこかにいるはずだ」
「複数の人形により襲撃すれば、左腕も役に立たぬであろう」
「むしろその右腕と左腕を回収してこちらの戦力とするべきだろう」
「奴らの人形さえどうにかすれば、こちらに分があるはずだ」
「市街地ならば、威力の在り過ぎる右腕は早々使えまい」
「よし、奴らの人形を捜索し叩く。
その任務はナンバー8に一任する」
「俺が?」
「お主は幹部の中で唯一人形を見ているのだろう?」
「そうだ。ナンバー8が適任だ」
「人形は2体支給する」
「やれやれ、貧乏くじを引いたものだな」
ナンバー8と言われた黒ローブの男はそのまま転移の魔導具で何処かへと消えて行った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
この話が会話中心になっているのは、出て来る人物たちが名探偵コ〇ンでいう黒塗り人物の扱いだからです。
話の展開上、あえて個々の人物詳細をぼかす必要があったのです。
ゼ〇レのモノリス的な会話のイメージでもあります。
これでウルティア国遠征編は一先ず終わりです。
結局カナタたちはウルティア国を目指しただけで、ウルティア国に入れもしませんでした。
もしかすると後で章タイトルを変更するかもしれません。
次章は愛砢人形同士による戦闘の話になる予定です。
その前に人物紹介を入れられたら良いのですが……。
覚書のキャラ設定程度しかなく、ファーマットも統一されていないため、時間がかかりそうです。
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