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南部辺境遠征編
097 ニク、またやらかす
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『紅龍の牙』のパーティーと同行しなければならなくなったカナタたちの獣車は、他の辺境伯に用意された馬車とは別行動となり、その速度もあって先行することになった。
先行隊は冒険者ギルドの職員とその護衛冒険者が中心であり、総勢30人の大所帯になっていた。
旅程も3日が過ぎ、毎日途中途中で野営をすることになり、カナタは『紅龍の牙』のメンバーともそこそこ話すようになっていた。
「へえ、あのダリル盗賊団を討伐したのがカナタたちだったのか」
『紅龍の牙』リーダーのディーンはおしゃべりだった。
『紅龍の牙』のメンバーであるセレーンがカナタたちと行動を共にしているせいで、カナタはディーンの雑談に付き合わされることが多々あった。
カナタはそこで根掘り葉掘り身の上話を引き出されていた。
「俺たちも王都に居た時に討伐任務で一度奴らを追ったことがあったんだが、頭目のダリルは逃がしてしまったんだ。
あの時はクエスト失敗とみなされて大変だったわ」
そのおかげでダリルが王都を離れ、討伐賞金が跳ね上がったとはカナタも思ってもみなかった。
「レグザスを知っているのか、そうかあいつもAランクに昇格したか」
セレーンとディーンは一時期レグザスと組んでいたことがあった。
案外世の中は狭いものだった。
いや、実力のある者は案外惹かれあうのかもしれない。
今の『紅龍の牙』は、その当時からメンバーが変わり、盾職のガンツ、斥候職のキース、回復職のモラドを加えた5人パーティーで、走竜の引く獣車に乗っていた。
そこへギルドの副ギルドマスターが加わったため、女性のセレーンが獣車からあぶれることとなり、空きのあったカナタたちの獣車に便乗することになった。
カナタが子供で、他2人が女性だったことがその決定に影響していた。
「はい、はい。そこまでにして頂戴。子供はもう寝る時間なのよ」
カナタはディーンのおしゃべりに付き合わされて辟易としているところを、セレーンに助けられた。
同じパーティーのメンバーでさえ、用事をみつけては逃げるのだから相当迷惑なのだろう。
セレーンはそんなディーンの扱い方を知り尽くしていた。
「さあ、見張りは男どもに任せて、私達は寝るわよ」
ここ数日、カナタはセレーンと同じテントで宿泊させられていた。
カナタはセレーンに気に入られており、一晩中抱き枕のように抱き着かれていた。
ニクはカナタに危害が加えられることが無ければスルー。
サキは夕食が終わるとさっさと爆睡していた。
「敵襲! 敵襲!」
見張りの冒険者が大声で警告を発した。
爆睡していたサキが最初に飛び起き、剣を持って飛び出す。
それに続くセレーン。
我関せずと外の椅子に座っているニク。
カナタが目覚め寝ぼけ眼を擦っているところに続報が来た。
「ハンターウルフの群です! 数50以上!」
隣国のウルティア国で起きている迷宮の氾濫により、魔物が国境を越えて来ていた。
国境といっても長大な国境線全てに壁があるわけではなく、足の速い魔物は既にここメルティーユ王国へと侵入して来ていた。
ライジン辺境伯領領軍の任務は、後続の魔物本隊を防ぐことであり、このような小物はスルーせざるを得なかった。
かといって、野営中を襲われてはたまらないので、カナタたちを含めた先行隊は魔物を迎撃せざるを得なかった。
「ぼやぼやしてると食われちまうぞ!」
テントの中から慌てて冒険者たちが飛び出してきた。
カナタもテントから顔を出す。それがいけなかった。
表に出て来てしまったカナタへハンターウルフが気付いた。
「マスターへの脅威度拡大。緊急プロセスを始動します」
ニクはカナタへの脅威が拡大していると認識し素早く対応を開始した。
だが、マスターであるカナタにより攻撃を制限されていた。
そのため、緊急プロセスを始動することにしたのだ。
それはカナタの生命を護るという最上位任務を履行するためであり、例えカナタに命令されていてもそれを無視することとなった。
ニクは獣車の上に飛び乗ると射角を確保し周囲を見廻した。
「ターゲット捕捉、フルバースト!」
ニクの右腕から荷電粒子砲が発射された。
それは同時に捕捉した複数のハンターウルフを、目標を次々と変えて貫いた。
その様子を目撃した冒険者たちは、漆黒の闇の中ニクが光の雨を降らせたように見えた。
「ターゲットの殲滅完了。脅威度は安全値まで低下しました。
マスター、おやすみなさい」
ニクのやらかしで頭を抱えていたカナタに、ニクは安心して寝ろと言いたいようだ。
「なんだよ、お前の護衛の魔法は。ちょっと話を聞かせろ」
だが、ニクの魔法の凄さに興奮したディーンにカナタは寝かせてもらえなかった。
先行隊は冒険者ギルドの職員とその護衛冒険者が中心であり、総勢30人の大所帯になっていた。
旅程も3日が過ぎ、毎日途中途中で野営をすることになり、カナタは『紅龍の牙』のメンバーともそこそこ話すようになっていた。
「へえ、あのダリル盗賊団を討伐したのがカナタたちだったのか」
『紅龍の牙』リーダーのディーンはおしゃべりだった。
『紅龍の牙』のメンバーであるセレーンがカナタたちと行動を共にしているせいで、カナタはディーンの雑談に付き合わされることが多々あった。
カナタはそこで根掘り葉掘り身の上話を引き出されていた。
「俺たちも王都に居た時に討伐任務で一度奴らを追ったことがあったんだが、頭目のダリルは逃がしてしまったんだ。
あの時はクエスト失敗とみなされて大変だったわ」
そのおかげでダリルが王都を離れ、討伐賞金が跳ね上がったとはカナタも思ってもみなかった。
「レグザスを知っているのか、そうかあいつもAランクに昇格したか」
セレーンとディーンは一時期レグザスと組んでいたことがあった。
案外世の中は狭いものだった。
いや、実力のある者は案外惹かれあうのかもしれない。
今の『紅龍の牙』は、その当時からメンバーが変わり、盾職のガンツ、斥候職のキース、回復職のモラドを加えた5人パーティーで、走竜の引く獣車に乗っていた。
そこへギルドの副ギルドマスターが加わったため、女性のセレーンが獣車からあぶれることとなり、空きのあったカナタたちの獣車に便乗することになった。
カナタが子供で、他2人が女性だったことがその決定に影響していた。
「はい、はい。そこまでにして頂戴。子供はもう寝る時間なのよ」
カナタはディーンのおしゃべりに付き合わされて辟易としているところを、セレーンに助けられた。
同じパーティーのメンバーでさえ、用事をみつけては逃げるのだから相当迷惑なのだろう。
セレーンはそんなディーンの扱い方を知り尽くしていた。
「さあ、見張りは男どもに任せて、私達は寝るわよ」
ここ数日、カナタはセレーンと同じテントで宿泊させられていた。
カナタはセレーンに気に入られており、一晩中抱き枕のように抱き着かれていた。
ニクはカナタに危害が加えられることが無ければスルー。
サキは夕食が終わるとさっさと爆睡していた。
「敵襲! 敵襲!」
見張りの冒険者が大声で警告を発した。
爆睡していたサキが最初に飛び起き、剣を持って飛び出す。
それに続くセレーン。
我関せずと外の椅子に座っているニク。
カナタが目覚め寝ぼけ眼を擦っているところに続報が来た。
「ハンターウルフの群です! 数50以上!」
隣国のウルティア国で起きている迷宮の氾濫により、魔物が国境を越えて来ていた。
国境といっても長大な国境線全てに壁があるわけではなく、足の速い魔物は既にここメルティーユ王国へと侵入して来ていた。
ライジン辺境伯領領軍の任務は、後続の魔物本隊を防ぐことであり、このような小物はスルーせざるを得なかった。
かといって、野営中を襲われてはたまらないので、カナタたちを含めた先行隊は魔物を迎撃せざるを得なかった。
「ぼやぼやしてると食われちまうぞ!」
テントの中から慌てて冒険者たちが飛び出してきた。
カナタもテントから顔を出す。それがいけなかった。
表に出て来てしまったカナタへハンターウルフが気付いた。
「マスターへの脅威度拡大。緊急プロセスを始動します」
ニクはカナタへの脅威が拡大していると認識し素早く対応を開始した。
だが、マスターであるカナタにより攻撃を制限されていた。
そのため、緊急プロセスを始動することにしたのだ。
それはカナタの生命を護るという最上位任務を履行するためであり、例えカナタに命令されていてもそれを無視することとなった。
ニクは獣車の上に飛び乗ると射角を確保し周囲を見廻した。
「ターゲット捕捉、フルバースト!」
ニクの右腕から荷電粒子砲が発射された。
それは同時に捕捉した複数のハンターウルフを、目標を次々と変えて貫いた。
その様子を目撃した冒険者たちは、漆黒の闇の中ニクが光の雨を降らせたように見えた。
「ターゲットの殲滅完了。脅威度は安全値まで低下しました。
マスター、おやすみなさい」
ニクのやらかしで頭を抱えていたカナタに、ニクは安心して寝ろと言いたいようだ。
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