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帝国内乱編
163 帝国内乱編1 プロローグ
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SIDE: 某所 軍議中 ??? (三人称)
「やれやれ。せっかく揃えた軍備をニアヒューム対策に使えとはな。
陛下の勅命とはいえ、こんなところまでニアヒュームが来るかよ。なあ? お前たち」
綺羅びやかな飾りのついた軍服を身に纏った青年が愚痴る。
彼は会議室の上座となる豪華な椅子に腰を降ろし、参集した配下達をぐるりと見廻した。
現在彼らは軍議の真っ最中だった。
「殿下、我らの星系防御のためでもあります。仕方ないことと存じます」
配下の将軍が慰めるかのように具申する。
それを受け彼は少しは機嫌を直して話しだす。
「まあニアヒュームのおかげで邪魔な|第2皇子《ヘンリー)の軍は弱体化し、第3皇子は死んだ。
そこだけは俺らにとっては都合が良かったな」
「次の継承順位更新では殿下の順位もうなぎ登りでしょうな」
太鼓持ちの配下がニヤケ顔をしておべっかで追従する。
先ほど上座の主を諫めた将軍が苦々し気な表情でそいつを睨みつけるも、殿下と呼ばれた彼のお気に入りは尚もよいしょを続ける。
「次は第2皇子確定ですよ、殿下」
だが、その言葉が彼の怒りに火をつける。
「はぁ? んなわけねーだろうが!
ちくしょう、アキラの野郎は無いわ。
なんでぽっと出のあいつが活躍して陛下に気に入られてるんだ?
俺だって招集に馳せ参じようとしただろうによう!
お前らが慣習だなんだと止めやがったおかげで、ただの弱虫になっちまった!」
彼は機嫌が良くなったと思ったら急に怒り出す。
情緒不安定なのだろうか? 何をし出すかわからない彼に配下も震え上がっている。
「だが、今がチャンスだ。陛下は病み上がり、正規軍も各皇子も対ニアヒュームで戦力を分散させている。
しかもだ、陛下がありがたくも要塞艦を増派してくださった。
これを使い皇子共を各個撃破し戦力を吸収てやるのだ!」
要塞艦は全ての皇子に下賜されたので、戦力差は同じままのはずなのに、彼はそれさえ理解していなかった。
気性が荒いというか、あまりにも考えなしだった。
「大変です、殿下! 我が星系へのニアヒュームの侵攻を確認しました!」
伝令の兵が会議室に駆け込んで来る。
帝都から配備された新型次元レーダーの試運転で、早くも彼の支配星系へと向かうニアヒュームを発見したのだ。
「バカな。なぜこんな僻地にニアヒュームが?」
彼らの星系はニアヒュームが侵攻してくる銀河腕からは遠い位置にあった。
なので「こんなところまでニアヒュームが来るかよ」という発言があったのだ。
慌てる配下たち。
だが、ニアヒューム発見の知らせを聞き、彼だけはニヤリと笑みを浮かべた。
「全軍を出撃させる! 要塞艦も出せ! 敵は隣の星系の第7皇子だ!
奴もニアヒューム対策で戦力を分散派遣中だ。絶好のチャンスだ!」
ここで言う隣の星系というのは、あくまでも次元跳躍門を介しての隣であり、物理的に隣というわけではない。
ハブ次元跳躍門により直通出来る星系、あるいは転移先のハブ次元跳躍門から物理的に近い星系を隣と称している。
この場合、彼の星系と第7皇子の星系はハブ次元跳躍門で1跳躍した先から次元跳躍1回で辿りつけるという、まさにこの隣の星系だった。
「しかし、我が星系にもニアヒュームの危機が!」
「そこは心配ない。なあ、黒騎士!」
彼の視線の先には黒い仮面を被り黒いパイロットスーツに身を包んだ男女が控えていた。
彼はその2人に向けて「行け」というように顎をしゃくった。
「ニアヒュームの対応は最狂の黒騎士に任せられるのだからな」
黒騎士と呼ばれた2人は彼の命令を受け足早に去っていった。
「帝都にニアヒューム発見を通報しろ。それで第7皇子にも話が通る。
奴も、まさかニアヒュームに侵攻されている我が軍が、ニアヒュームを放って襲ってくるとは思わねーだろ?
第7皇子はニアヒュームに殺られることになる。
俺たちはあくまでも奴を助けに向かっただけ。俺って天才だろ?」
そんな都合の良い話にはならない。
なぜなら第7皇子も襲撃を通報するからだ。
今後の苦労を思って自分達や領民にとっては天災だろうと良識派の将軍は思った。
ここで反対の意見を口にすることは出来るだろう。だが、その瞬間自分は一族諸共処刑されることになる。
自分だけならいいが、家族のことを思うと主を諫めることすら出来なかった。
狂った独裁者。それが彼らの主、第5皇子レオナルドだった。
「やれやれ。せっかく揃えた軍備をニアヒューム対策に使えとはな。
陛下の勅命とはいえ、こんなところまでニアヒュームが来るかよ。なあ? お前たち」
綺羅びやかな飾りのついた軍服を身に纏った青年が愚痴る。
彼は会議室の上座となる豪華な椅子に腰を降ろし、参集した配下達をぐるりと見廻した。
現在彼らは軍議の真っ最中だった。
「殿下、我らの星系防御のためでもあります。仕方ないことと存じます」
配下の将軍が慰めるかのように具申する。
それを受け彼は少しは機嫌を直して話しだす。
「まあニアヒュームのおかげで邪魔な|第2皇子《ヘンリー)の軍は弱体化し、第3皇子は死んだ。
そこだけは俺らにとっては都合が良かったな」
「次の継承順位更新では殿下の順位もうなぎ登りでしょうな」
太鼓持ちの配下がニヤケ顔をしておべっかで追従する。
先ほど上座の主を諫めた将軍が苦々し気な表情でそいつを睨みつけるも、殿下と呼ばれた彼のお気に入りは尚もよいしょを続ける。
「次は第2皇子確定ですよ、殿下」
だが、その言葉が彼の怒りに火をつける。
「はぁ? んなわけねーだろうが!
ちくしょう、アキラの野郎は無いわ。
なんでぽっと出のあいつが活躍して陛下に気に入られてるんだ?
俺だって招集に馳せ参じようとしただろうによう!
お前らが慣習だなんだと止めやがったおかげで、ただの弱虫になっちまった!」
彼は機嫌が良くなったと思ったら急に怒り出す。
情緒不安定なのだろうか? 何をし出すかわからない彼に配下も震え上がっている。
「だが、今がチャンスだ。陛下は病み上がり、正規軍も各皇子も対ニアヒュームで戦力を分散させている。
しかもだ、陛下がありがたくも要塞艦を増派してくださった。
これを使い皇子共を各個撃破し戦力を吸収てやるのだ!」
要塞艦は全ての皇子に下賜されたので、戦力差は同じままのはずなのに、彼はそれさえ理解していなかった。
気性が荒いというか、あまりにも考えなしだった。
「大変です、殿下! 我が星系へのニアヒュームの侵攻を確認しました!」
伝令の兵が会議室に駆け込んで来る。
帝都から配備された新型次元レーダーの試運転で、早くも彼の支配星系へと向かうニアヒュームを発見したのだ。
「バカな。なぜこんな僻地にニアヒュームが?」
彼らの星系はニアヒュームが侵攻してくる銀河腕からは遠い位置にあった。
なので「こんなところまでニアヒュームが来るかよ」という発言があったのだ。
慌てる配下たち。
だが、ニアヒューム発見の知らせを聞き、彼だけはニヤリと笑みを浮かべた。
「全軍を出撃させる! 要塞艦も出せ! 敵は隣の星系の第7皇子だ!
奴もニアヒューム対策で戦力を分散派遣中だ。絶好のチャンスだ!」
ここで言う隣の星系というのは、あくまでも次元跳躍門を介しての隣であり、物理的に隣というわけではない。
ハブ次元跳躍門により直通出来る星系、あるいは転移先のハブ次元跳躍門から物理的に近い星系を隣と称している。
この場合、彼の星系と第7皇子の星系はハブ次元跳躍門で1跳躍した先から次元跳躍1回で辿りつけるという、まさにこの隣の星系だった。
「しかし、我が星系にもニアヒュームの危機が!」
「そこは心配ない。なあ、黒騎士!」
彼の視線の先には黒い仮面を被り黒いパイロットスーツに身を包んだ男女が控えていた。
彼はその2人に向けて「行け」というように顎をしゃくった。
「ニアヒュームの対応は最狂の黒騎士に任せられるのだからな」
黒騎士と呼ばれた2人は彼の命令を受け足早に去っていった。
「帝都にニアヒューム発見を通報しろ。それで第7皇子にも話が通る。
奴も、まさかニアヒュームに侵攻されている我が軍が、ニアヒュームを放って襲ってくるとは思わねーだろ?
第7皇子はニアヒュームに殺られることになる。
俺たちはあくまでも奴を助けに向かっただけ。俺って天才だろ?」
そんな都合の良い話にはならない。
なぜなら第7皇子も襲撃を通報するからだ。
今後の苦労を思って自分達や領民にとっては天災だろうと良識派の将軍は思った。
ここで反対の意見を口にすることは出来るだろう。だが、その瞬間自分は一族諸共処刑されることになる。
自分だけならいいが、家族のことを思うと主を諫めることすら出来なかった。
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