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領主編

120 領主編14 ドキッ! アイドルだらけの海洋リゾート 後編

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 今夜、紗綾さーやに誘われたのは冗談として流しておいた。
獣人族護衛に関しても、さすがに今夜も同じ手が使われることはないと思いたい。

「若様、襲撃です」

「また同じ手か!」

 今日はラーテル族のミリアンナさんだった。

「冗談も大概に「いえ。本当です」」

 え? 本当なの?

「ここは私とジェーン様で守ります」

 え? ジェーンまで来るぐらいヤバい状況なの?
ジェーンは見た目立派な女戦士アマゾネスだからな。
それにしてもラーテル2人が護衛につくとはいったい……。

「そこ、しゃがんで」

 僕のパジャマのシャツが引っ張られて強制的にしゃがまされた。
その直ぐ後、僕の立っていた空間に一条の光線が走る。

「はい、次はこっちへ」

 ジェーンが僕を引っ張って胸に抱きしめた。
また光線が過る。

「他のメンバーは大丈夫なの?」

 僕はみんなが心配になった。
しかし、心は激しく混乱していた。ドキドキが止まらない。
これは恐怖によるドキドキなのか、顔に押し付けられた胸によるドキドキなのか?

「みなさんには地下シェルターに移動していただきました」

 そう言いつつ、ミリアンナさんが手に持ったレイガンをぶっ放す。

「はい?」

 なら、どうして僕だけ残されていたんだ?
一番の護衛対象だよね?

「今夜は紗綾さーや様のお部屋でお楽しみ中だと思っていまして……」

 ミリアンナさんが顔を赤らめて言う。
そういや、昼間のあの下りをミリアンナさんは護衛に付いていて聞いていたんだった。
お楽しみの最中だからとギリギリまで待って、いよいよ踏み込んでみたら僕がいなかったと。

「あはは」

 僕は笑うしかなかった。
その時、ドアを蹴破って部屋の中に3人の暴漢が突入して来た。
レイガンを撃ちまくるジェーンとミリアンナさん。
2人を撃ち倒し、その陰になった暴漢も手から突撃銃が落ちる。
暴漢は僕を目にすると腰のナイフを抜いて襲い掛かってくる。
僕はその場を動けずに棒立ちになっていた。
僕を抱きしめて暴漢に背を向けるジェーン。
その背中にナイフを振り下ろそうとした暴漢をミリアンナさんのレイガンが命中し倒した。

「若様! 姫様! ご無事ですか!?」

 ミリアンナさんが叫ぶ。
その目はまだ外の様子を忙しなく伺っている。

「外は制圧を完了した!」

 デリファとライネットがドアの外から顔を出して報告した。
ルーデリアも外で警戒中のようだ。

「僕は大丈夫。ジェーンは!?」

「私がこの程度でやられるわけないだろ?」

 ジェーンの口調が素になっていた。
だが、ジェーンは僕の盾になろうとした。
嬉しくもあり、情けなくもあった。
僕は肉弾戦では何の役にもたたない。

「ちょっと訓練しないと拙いかも」

 そう僕が言うと熊族のデリファさんの目がキラリと光った。

「若様、それは良い事です。
明日から訓練をいたしましょう」

 デリファはジェーンにも増して女戦士アマゾネス体型だ。
僕の脳裏にブートキャンプのイメージが過った。


 僕はずっとジェーンに抱きしめられていたことに今更ながら気付いた。

「ありがとうジェーン。助かった」

 僕が礼を言うとジェーンは厳しい顔になった。

「いいえ、此度の事は護衛のミスです。
要護衛対象の居場所の確認を怠りました。
ラーテル族としてあってはならないことです。
お礼など到底していただくわけにはまいらない失態です」

「終わり良ければ全て良しだと僕は思うけどな」

「若様はお優しい」

 ジェーンは僕の頭を胸に抱き撫で始めた。
ジェーンは身長が178cmもあるので、僕の顔が彼女の胸の位置に来てしまう。
そのまま胸に顔を押し付けられ、いつまでも頭を撫でられていた。
僕の息子がエキサイトしたのは言うまでもない。

『アクア3衛星軌道に工場惑星が次元跳躍ワープアウトしました』

 僕の専用艦の電脳から腕輪に通信が入った。
どうやら僕が襲われたと知って緊急次元跳躍ワープして来たようだ。
襲撃の一報は僕の専用艦による次元通信を通じて護衛隊によってアノイ要塞に伝えられていたのだ。

『親衛艦隊1万艦出撃、星系を封鎖しました。
逃走する艦を確認。停止命令を無視しましたので撃墜しました』

 この星系に襲撃者を送り込んだ艦は撃墜されたようだ。
それにしても、親衛艦隊って初耳だぞ?
いつのまにそんなの創設したんだ?
え? 工場惑星の独断? そうですか。

「この島へ侵入した襲撃者の排除を確認しました。
安心してお楽しみ・・・・ください」

 ミリアンナさんが抱きしめ合うジェーンと僕を見ながらニヤリとする。
こうして今夜僕はジェーンと一夜を共にした。
身を以て僕を守ろうとしたジェーンが愛おしくて仕方なかったのだ。
これをつり橋効果というらしい。
事件のドキドキを恋愛のドキドキと錯覚するという……。
僕は冷静ではなかったのだ。
明らかに自覚のある初夜を迎えてしまった。
まあ、後悔はしていない。
キャリーとジェーンも大好きな嫁だからね。
むしろ喜びと幸福感の方が大きかった。

 翌日、熊族のデリファにブートキャンプでしごかれ、筋トレ的に蹂躙された。
そして夜はマリーにより慰められた。
そこへはキャリーも乱入し優しくしてくれた。
僕には記憶の無かった一昨日のことだが、実は既成事実を偽装しただけで、今回が本当の初夜だった。
まんまとハードルを下げられた気がする。
キャリーとしてしまったからには、他の嫁ともしないとという。
この海洋リゾートへの旅行はいろいろあったが思い出深い新婚旅行となった。
ぼっちの僕に本物の嫁が3人出来た。この日の事を後に楽しく語れる未来を僕は掴む。
僕を襲った黒幕は倒さねばならない。
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