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アイドル編
052 アイドル編28 緊急招集三度目2
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警報が鳴り、リアルタイムで変わる分析図に赤い光点が複数点滅しだした。
光点の数は20以上。敵艦隊というより、もはや敵勢力だ。
この赤点滅は電脳の分析による脅威判定で可及的速やかに対応すべき敵勢力だと認定されたということだ。
敵勢力のコースは、どう見ても僕と綾姫の担当ポイントだ。
この分析図はアヤメ艦とも共有している。
「綾姫、後ろのエリアに撤退して。これは無理だ」
「晶羅はどうするの?」
「エリアリーダーのタカヲ氏に援軍要請して無理なら撤退する」
「たぶん戦線を後退して後ろのエリアで迎撃になると思う」
「わかった。晶羅も気をつけて」
アヤメ艦が後退する。
『エリアリーダー、敵艦隊が集結して一点突破をかけてくる形跡がある。戦線を後退して対応しよう』
僕はエリアリーダータカヲ氏に分析図を送り、敵勢力の予想進路を伝え後退を進言する。
『アキラ、その情報は何だ? こちらからはそんな形跡は把握していない。却下だ。持ち場を離れるなよ』
『了解』
しまった。タカヲ氏からしたら、この分析図は情報源すら疑わしい不確定情報でしかない。
彼の位置から把握出来るレーダー画面では、小惑星や岩塊に隔てられて、まだここまでの分析は不可能だろう。
この分析図は高性能電脳2つとステーションが収集した各艦の索敵情報あってのものだ。
脅威に対して事を急ぎ過ぎてしまったせいで、持ち場を離れることを禁止されてしまった。
説得するには、もっと状況が動くまで待つ必要がある。
まあ、アヤメ艦の後退は僕の権限内だから撤回しない。
「指揮権がないと、上手くいかないもんだな」
僕は次善の策をとることにした。
とりあえず、この担当ポイントの戦力を底上げするしかないな。
僕は自重をやめて次元格納庫からありったけの装備を持ちだした。
まずステーションの専用格納庫に入りきらなかったステルス艦を出す。続けて『すてるす』。
外部兵装を取り出し、右腕に長砲身40cmレールガンを装備、左腕には30cm粒子ビーム砲(単装)を装備。
手首から伸びたエネルギーチューブを接続した。
次に移動砲台化した30cm粒子ビーム砲(連装)を2基浮遊させる。
これは次元格納庫から直でエネルギーチューブが出ている。
「よし、準備完了。視界に入った艦から長距離射撃で数を減らす! 自重なしだ!」
僕は専用艦の右腕の長砲身40cmレールガンを構える。
射撃補正装置の長距離射撃モードを起動し視界に入った敵艦から撃つ。
残弾は40発。弾はまだMAXまで補充されていない。
敵艦が担当エリアに入るのを待つ。
ステーションでは味方を撃たないように、エリアを跨いだ近接エリアへの射撃は禁止されている。
既にスルーされている敵艦だから撃っても大丈夫なのだが、それが確実に敵艦だと把握出来ているのはどうやら僕の専用艦だけらしい。
まあ後退した味方艦が撃たれないためにそのルールがあるわけで、先に後退したアヤメ艦もその恩恵を受けているのでルールを破る気はない。
敵の先頭艦がエリアに侵入する。
待ち構えていた僕はすかさず狙撃する。
「発射!」
鹵獲した戦艦の主砲として搭載されていた長砲身40cmレールガンを撃つ。
敵艦は迎撃ミサイルを発射、弾体を撃ち落とすつもりだ。
長距離を飛んでくる実体弾は距離があればあるほど迎撃のチャンスが増える。
まずミサイルで破壊を狙い、次に射程の短い光学兵器で撃墜を狙ってくる。
弾体になんらかの被害を与え、コースが変わってくれれば儲けものだという思想。
だから僕は2発目を同じコースで連射する。
1発目を囮にして2発目を確実に当てるつもりだ。
戦艦のレールガンの弾体は質量があるため発射のエネルギーが嵩む。
そのエネルギー充填に時間がかかり、それが原因で発射間隔が開いてしまう。
僕の専用艦が連射出来るのは、艦の反応炉と次元格納庫に持つ外部反応炉と2つも反応炉を持っているからだ。
弾数が少ない中、1艦に2発は勿体無いが致し方ない。
敵の先頭艦にレールガンが直撃し粉砕される。
威力があり過ぎて、苦労の割にお金にならない。
敵勢力は僕を脅威と認識したのか、エリア外からミサイルの飽和攻撃をかけて来た。
飽和攻撃とは、こちらが対処しきれない大量の攻撃を加えてくることで、対処漏れの攻撃で被害を与えようというものだ。
僕の専用艦のような巡洋艦クラスなら対宙レーザーが4門くらいが標準だ。
その対宙レーザーが対処しきれない数のミサイルを撃ちこめば、どんな重武装の艦でも被害を与えられるという算段だ。
ざっと40発ぐらい飛んで来ているようだ。
「光学兵装、全砲門一斉射撃!」
僕達を1艦だと思っているのは大間違いだ。
遮蔽フィールドを張った僚艦が2艦(1艦と1機)隠れている。
30cm粒子ビーム砲6門、15cm粒子ビーム砲1門が発射される。
近距離に接近して来たミサイルは10cm対宙レーザー8門が迎撃する。
全ミサイル迎撃成功。
この隙にエリア内に突入して来た後続の敵艦には長砲身40cmレールガンを狙い撃つ。
敵艦を合計6艦撃墜したところで敵勢力がバラけてコースを変えた。
これで味方艦が各個撃破出来るだろう。
こうして僕の三度目の緊急招集が終了した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
格納庫に戻ると社長からのメッセージカードとロブスターのテイクアウトが置いてあった。
『残念だったな。冷めてるが持ってきてやったぞ』
僕は冷めたロブスターを食べながら、自分の艦隊を持つにはどうしたらよいのか考えるのだった。
今のままでは上位者の命令で死にかねない。
自分の意思と自己責任で戦える環境を得ないとならなかった。
アブダクションされないためには綾姫の借金を早く完済するしかない。
父親の会社の負債を被ったらしいけど、いったいいくらあるのだろうか?
あまり急がせて命の危険に晒すわけにもいかないし……。
「アイドル活動中の緊急招集は今後問題になりそうだな。
よし、社長の交渉術でなんとかしてもらおう」
光点の数は20以上。敵艦隊というより、もはや敵勢力だ。
この赤点滅は電脳の分析による脅威判定で可及的速やかに対応すべき敵勢力だと認定されたということだ。
敵勢力のコースは、どう見ても僕と綾姫の担当ポイントだ。
この分析図はアヤメ艦とも共有している。
「綾姫、後ろのエリアに撤退して。これは無理だ」
「晶羅はどうするの?」
「エリアリーダーのタカヲ氏に援軍要請して無理なら撤退する」
「たぶん戦線を後退して後ろのエリアで迎撃になると思う」
「わかった。晶羅も気をつけて」
アヤメ艦が後退する。
『エリアリーダー、敵艦隊が集結して一点突破をかけてくる形跡がある。戦線を後退して対応しよう』
僕はエリアリーダータカヲ氏に分析図を送り、敵勢力の予想進路を伝え後退を進言する。
『アキラ、その情報は何だ? こちらからはそんな形跡は把握していない。却下だ。持ち場を離れるなよ』
『了解』
しまった。タカヲ氏からしたら、この分析図は情報源すら疑わしい不確定情報でしかない。
彼の位置から把握出来るレーダー画面では、小惑星や岩塊に隔てられて、まだここまでの分析は不可能だろう。
この分析図は高性能電脳2つとステーションが収集した各艦の索敵情報あってのものだ。
脅威に対して事を急ぎ過ぎてしまったせいで、持ち場を離れることを禁止されてしまった。
説得するには、もっと状況が動くまで待つ必要がある。
まあ、アヤメ艦の後退は僕の権限内だから撤回しない。
「指揮権がないと、上手くいかないもんだな」
僕は次善の策をとることにした。
とりあえず、この担当ポイントの戦力を底上げするしかないな。
僕は自重をやめて次元格納庫からありったけの装備を持ちだした。
まずステーションの専用格納庫に入りきらなかったステルス艦を出す。続けて『すてるす』。
外部兵装を取り出し、右腕に長砲身40cmレールガンを装備、左腕には30cm粒子ビーム砲(単装)を装備。
手首から伸びたエネルギーチューブを接続した。
次に移動砲台化した30cm粒子ビーム砲(連装)を2基浮遊させる。
これは次元格納庫から直でエネルギーチューブが出ている。
「よし、準備完了。視界に入った艦から長距離射撃で数を減らす! 自重なしだ!」
僕は専用艦の右腕の長砲身40cmレールガンを構える。
射撃補正装置の長距離射撃モードを起動し視界に入った敵艦から撃つ。
残弾は40発。弾はまだMAXまで補充されていない。
敵艦が担当エリアに入るのを待つ。
ステーションでは味方を撃たないように、エリアを跨いだ近接エリアへの射撃は禁止されている。
既にスルーされている敵艦だから撃っても大丈夫なのだが、それが確実に敵艦だと把握出来ているのはどうやら僕の専用艦だけらしい。
まあ後退した味方艦が撃たれないためにそのルールがあるわけで、先に後退したアヤメ艦もその恩恵を受けているのでルールを破る気はない。
敵の先頭艦がエリアに侵入する。
待ち構えていた僕はすかさず狙撃する。
「発射!」
鹵獲した戦艦の主砲として搭載されていた長砲身40cmレールガンを撃つ。
敵艦は迎撃ミサイルを発射、弾体を撃ち落とすつもりだ。
長距離を飛んでくる実体弾は距離があればあるほど迎撃のチャンスが増える。
まずミサイルで破壊を狙い、次に射程の短い光学兵器で撃墜を狙ってくる。
弾体になんらかの被害を与え、コースが変わってくれれば儲けものだという思想。
だから僕は2発目を同じコースで連射する。
1発目を囮にして2発目を確実に当てるつもりだ。
戦艦のレールガンの弾体は質量があるため発射のエネルギーが嵩む。
そのエネルギー充填に時間がかかり、それが原因で発射間隔が開いてしまう。
僕の専用艦が連射出来るのは、艦の反応炉と次元格納庫に持つ外部反応炉と2つも反応炉を持っているからだ。
弾数が少ない中、1艦に2発は勿体無いが致し方ない。
敵の先頭艦にレールガンが直撃し粉砕される。
威力があり過ぎて、苦労の割にお金にならない。
敵勢力は僕を脅威と認識したのか、エリア外からミサイルの飽和攻撃をかけて来た。
飽和攻撃とは、こちらが対処しきれない大量の攻撃を加えてくることで、対処漏れの攻撃で被害を与えようというものだ。
僕の専用艦のような巡洋艦クラスなら対宙レーザーが4門くらいが標準だ。
その対宙レーザーが対処しきれない数のミサイルを撃ちこめば、どんな重武装の艦でも被害を与えられるという算段だ。
ざっと40発ぐらい飛んで来ているようだ。
「光学兵装、全砲門一斉射撃!」
僕達を1艦だと思っているのは大間違いだ。
遮蔽フィールドを張った僚艦が2艦(1艦と1機)隠れている。
30cm粒子ビーム砲6門、15cm粒子ビーム砲1門が発射される。
近距離に接近して来たミサイルは10cm対宙レーザー8門が迎撃する。
全ミサイル迎撃成功。
この隙にエリア内に突入して来た後続の敵艦には長砲身40cmレールガンを狙い撃つ。
敵艦を合計6艦撃墜したところで敵勢力がバラけてコースを変えた。
これで味方艦が各個撃破出来るだろう。
こうして僕の三度目の緊急招集が終了した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
格納庫に戻ると社長からのメッセージカードとロブスターのテイクアウトが置いてあった。
『残念だったな。冷めてるが持ってきてやったぞ』
僕は冷めたロブスターを食べながら、自分の艦隊を持つにはどうしたらよいのか考えるのだった。
今のままでは上位者の命令で死にかねない。
自分の意思と自己責任で戦える環境を得ないとならなかった。
アブダクションされないためには綾姫の借金を早く完済するしかない。
父親の会社の負債を被ったらしいけど、いったいいくらあるのだろうか?
あまり急がせて命の危険に晒すわけにもいかないし……。
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