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第四章 ルナトーク王国奪還戦編

145 占領軍分遣艦隊2

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 飛行機械に魔導砲を撃ち込むことでキルナール王国の艦隊からの長距離魔導砲攻撃を止めることが出来た。
僚艦2艦が撃沈されたが、強化された防御魔法陣により、その直撃も躱すことが出来ると確認されたため、我が分遣艦隊は当初の目的よりも早いが敵艦隊に向け進路を変えて吶喊することにした。
このまま敵艦隊が長距離魔導砲を撃てないなら、この後射程距離に捉えるのはこちらも同時となり、敵艦隊に魔導砲で一矢報いることが出来るだろう。
少しでも敵艦隊を足止め出来れば、主力艦隊が北からなだれ込むはずだった。
混戦状態になれば数の利で勝つことも可能だろう。
もし、こちら分遣艦隊が先に動いたことを主力艦隊が知り呼応してくれれば、こちらに対処するために回頭した敵艦隊の横腹を主力艦隊が突いてくれることだろう。

「あのハダルが上げている黒煙。
あれが主力艦隊からも見えていれば司令は動いてくれるはずだ」

 まさに占領軍分遣艦隊は、決死の覚悟で吶喊していた。


 敵艦隊との距離が38kmにまで狭まった。
その時、地平線の彼方に浮上する陸上戦艦が見えた。
見たことのあるシルエットだが艦尾が異様に長い。

「あれはニムルドか?
新装備といい、まさか改造されているのか!」

 その技術力に恐怖を覚える。
残念ながら、こちらの魔導砲では威力が減衰し当たっても破壊は望めない距離だ。

「拙い。長距離攻撃が来るぞ!」

 敵艦隊には、50kmの距離を越えてこちらの陸上戦艦を破壊し得る魔導砲が存在している。
その魔導砲がまたこちらに向かうとなれば、防御魔法陣に更なる魔力エネルギーを注がなければならない。
これは何度も出来るものではないため、なるべく回数を減らしたいところだが、使用をケチってやられたのでは本末転倒となる。
いつ壊れるかわからないがやるしかないのだ。
すると敵艦からの光条が北へと向かうのが見えた。

「しまった。敵艦の目標は主力艦隊だ!」

 我が分遣艦隊は、敵からの長距離攻撃があることを知っているが、主力艦隊は未だその存在を知らないはずだった。
いつ壊れるかわからない防御魔法陣に無駄な魔力エネルギーは注ぎ込んでいないだろう。

「牽制攻撃だ! 魔導砲発射。
攻撃が効かなくても良い。嫌がらせになるだけでいい!」

「魔導砲、魔力エネルギー不足で発射不能!」

 残念なことに、防御魔法陣に魔力エネルギーを回したせいで魔導砲が発射不能となっていた。
その間にも敵艦は15発ほどの魔導砲を主力艦隊に撃ち込んでいた。
主力艦隊がいるであろう地点からハダルと同様の黒いキノコ雲がいくつも上がっていた。

「おのれ! こちらに通信手段があればむざむざとやられはしなかったものを」

 分遣艦隊司令ダッソーは悔しさに唇を噛んだ。

「機関増速だ! 壊れても構わん!
なんとてでも一矢報いるのだ!」

 その時、地平線の彼方から7つの噴煙が上がった。
4つは主力艦隊に向かい、残る3つはこちらに向かって来た。

「なんだあれは?」

 そう思っているうちに3つの飛翔体がガニメデ、ドゥーベ、アダラにあっと言う間に迫る。
一番先行していた三番艦アダラに飛翔体が浮上するとそのまま中央に突っ込んだ。

ドーーーーーーーーーーーーン!

 物凄い爆発音がするとアダラがゆっくり墜落していく。

「拙い! 迎撃……」

 ダッソーはその後を言うことが出来なかった。
敵が放った飛翔体はそのまま四番艦ガニメデ、五番艦ドゥーベに直撃し撃沈したのだった。
せっかく魔力エネルギーを注いだ防御魔法陣はその飛翔体の速度に機能せず、炸薬の爆発は陸上戦艦の心臓部を破壊しつくしていた。
ここに旧ルナトーク王国占領軍分遣艦隊は、その役目を全う出来ないまま全艦撃沈されたのだった。
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