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第六章 旧領土奪還編

130 対ボルテア公国4

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SIDE:陸上戦艦エリュシオン クランド 一人称視点

「ボルテア七世が死んだ?」

 ボルダード王国に向かおうとしていた俺たちに突然の訃報が届いた。

「はい。どうやら早速契約違反をやらかして契約魔法が発動したようです」

 その報告によるとこのような経緯だったという。


◇  ◇  ◇  ◇  ◆


SIDE:ボルテア公国王宮 ボルテア七世他 三人称視点

「ええい。忌々しい小僧め、我にいい様に命令しやがって!」

 ボルテア七世の怒声が公宮に響く。
公王は契約魔法を信じていなかった。
どうせ脅しのためのまやかしの契約で破っても構わないだろうと思っていた。
しかし、もし本当だったらという一抹の不安も抱えていた。

「そうだ。奴隷に公王位を譲って契約違反をさせてみるのだ。
奴隷が死ねば契約魔法は本物で守るしかないだろう。
だが、死ななければ……」

「公王様、公王位が譲れるなら公王様は契約魔法から逃れられるのではないでしょうか?」

 盲点だった。契約魔法が奴隷に承継されるなら、公王位を渡した公王は契約魔法から逃れられる理屈だ。

「お主も悪よのう」

「いえいえ公王様こそ」

 ボルテア七世はいやらしい笑みを浮かべた。
側近も同様に笑う。

 さっそく奴隷が連れられて来た。
ボルテア七世は、契約魔法そのものの真偽を確認するために奴隷に公王の位を正式な手続きで譲った。
その奴隷に契約違反をさせて契約魔法が本物か確かめようというのだ。
公王の位を譲られた奴隷の右手の甲には契約魔法の契約紋が浮かび上がった。
これにより、公王位の譲渡で契約紋が移ることが証明された。

「よし契約紋が移ったぞ。これで我は契約に縛られぬ!」

 ボルテア七世が契約紋の消えた右手の甲を見て喜ぶ。

「早速奴隷に契約を反故にさせましょう」

「そうだな。よし、おまえ、契約を破棄すると言え!」

 事情のわかっていない奴隷公王にボルテア七世が命令・・した。

「契約を破棄する?」

 奴隷は言われるがまま契約を破棄した。
その時、奴隷の手の契約紋が光り、ボルテア七世の手に契約紋が移動した。
公王に命令した者こそが真の公王だと契約魔法に認定されたのだ。
これにより契約違反行為の懲罰がボルテア七世に向かった。
不正による契約違反は契約紋の疼きなどという甘い対応にならず一気に罰が発動した。
そしてボルテア七世は心臓を押さえると死んだ。急性心不全だろうか。
次に契約紋が手の甲に浮かんだのは、ボルテア七世の第二公子だった。
第一公子でなかったのは、公妃が浮気した時の子だったかららしい。
しかし公王の位は第一公子が継ぎ、自ら契約紋の呪いを身に受けた。
そして契約を守ることを誓ったのだった。


◇  ◇  ◇  ◆  ◇


SIDE:陸上戦艦エリュシオン クランド 一人称視点

「次の公王は誠実な人物のようだな。
俺に恨み言もせず、契約を守ることを誓ってくれた」

「ボルテア七世の子とは思えないほどの出来た人物でしたね」

 ターニャもそう評するぐらいなら安心だろう。
これでボルテア公国は大丈夫だろう。
次はボルダード王国だ。
縁戚のボルテア七世が死んだことが悪い影響を与えなければ良いのだが……。
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