上 下
24 / 60
第一部 始動

第22話  人質救出へ

しおりを挟む
 ――――――――――――――――

 残り時間――8時間17分  

 残りデストラップ――9個

 残り生存者――10名     
  
 死亡者――2名   

 重体によるゲーム参加不能者――1名

 ――――――――――――――――


 ヒロユキが愛莉を伴ってホールから出て行った。その姿が見えなくなりしばらくして、廊下の先からエレベーターの音が聞こえてきた。

 すぐに瓜生が無言のままホールから走り出た。スオウは即座にその後を追った。

 しかし、二人がエレベーター乗り場に着いたときには、すでにエレベーターは動き出していた。

 瓜生がエレベーターの階数表示をじっと見つめる。四階の表示が点滅し、次に三階、二階と点滅が続いて、そこで点滅が止まった。

「よし、二階だな」

「瓜生さん、どうするんですか?」

「時間をかけたらあの子が心配だからな。すぐに後を追う」

「待てよ。オレがひとりで行く」

 瓜生とスオウの会話に突然別の声が入ってきた。スオウが驚いて振り返ると、そこにヒロトの姿があった。どうやらスオウたちの後を追ってきていたらしい。

「どうしたんだ。急に協調性が生まれたのか?」

 瓜生が意外そうな顔でヒロトを見つめた。

「あの男はオレと関係ありなんでな」

「お前、まさか、あの男の仲間になるつも――」

「逆だ」

 ヒロトはスオウの疑問を短く切り捨てた。

「さっきのニュースを見るまでは知らなかったが、どうやらあの男はオレがこのゲームに参加する理由を作ったヤツみたいだからな。オレが直接けりをつけに行ってくる」

「お前さんひとりで平気なのか?」

 瓜生が慎重な口調で訊く。

「大人数で行くよりも、オレひとりの方が動きやすいから平気だ」

「――分かった。どんな事情があるのか知らないが、ここはお前さんに任せることにする」

「ああ」

「ただし、時間がかかるようだったら俺たちも行動するぜ。あの子は強気だったが、相手が拳銃を持っている以上はなにが起こるか分からないからな」

「そのときはあんたらの勝手にすればいいさ」

 それで話し合いは終わりだという風に、ヒロトは二人をその場に残してエレベーター脇の階段に向かって行った。

「ここはあのにいちゃんに任せて、俺たちはいったんホールに戻ろう」

「分かりました」

 スオウは瓜生とともにホールに戻った。

「ねえ、大丈夫だったの? スオウ君たちが出て行ったあと、すぐにボウズ頭君が出て行ったけど」

 心配気な表情を浮かべたイツカが近寄ってきた。

「あの男にはあの男なりの事情があるみたいなんだ。だから、今はあの男に任せることにして、おれと瓜生さんはホールに戻ってきたんだ」

「そうだったんだ。でも、あの人を信用してもいいの? 敵が二人になるだけじゃ……」

「たしかにその可能性もないわけじゃない。だから、すぐに俺も後を追うつもりだ」

 スオウに変わって瓜生が答えた。

「えっ、そうだったんですか?」

 スオウは思わず訊き返した。

「ああ。でも、君はここに残るんだ」

「いや、おれも行きますよ!」

「ダメだ。拳銃を持った男のところに、高校生を連れて行くわけにはいかないからな」

 瓜生は言下に強い口調で否定した。

「だけど、おれだって……」

「君の気持ちは分かるが、これ以上犠牲者を増やすわけにはいかない。それに君は少し休んだ方がいい」

「そんな……」

「――そういうことならば、スオウ君の代わりに私が行こう。今まで休ませてもらっていたからな」

 円城が立候補してきた。

「いいのか? 最初にいっておくが、命の保障はできないぜ」

「命を懸けたゲームをやっている最中にそんなことを言われても、全然説得力がないけどな」

「たしかに、それはいえてるな」

 瓜生が口元を少しだけ歪ませて笑った。

「早速俺と円城さんとであいつらを追いかけることにする。あとのことは君らに任せたぞ」

「分かりました。ただ、瓜生さんたちにもしも――」

「ああ、そのときは君らで判断してくれ」

 スオウの言葉を先回りして、瓜生が答えた。

「それじゃ、円城さん、行こうか」

「ああ、分かったよ」

「瓜生さん、円城さん、二人とも気を付けて下さいね」

 ミネの看病をしているイツカが二人に声をかける。

「ああ、行ってくるよ」

 まるで近所のコンビニにでも買い物に行ってくるというような感じで軽く言って、瓜生はホールから出て行った。

「私も行くよ。みんなもデストラップの前兆を見逃さないように」

 円城が瓜生に続いてホールを出た。

 ホール内には、スオウを含めて六人が残った。

 逃走中の犯罪者という予想外の人物の登場に、スオウの精神は自分でも分かるくらい、かなりの疲労が蓄積されていた。ここは瓜生に言われた通り、少しだけ身体を休まさせてもらうつもりだった。またいつ状況が急変するとも限らないのだから――。


 ゲーム開始からようやく五時間が過ぎた。ゲームはまだまだ続く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女だけど生活のために男装して陰陽師してますー続・只今、陰陽師修行中!ー

イトカワジンカイ
ホラー
「妖の調伏には因果と真名が必要」 時は平安。 養父である叔父の家の跡取りとして養子となり男装をして暮らしていた少女―暁。 散財癖のある叔父の代わりに生活を支えるため、女であることを隠したまま陰陽師見習いとして陰陽寮で働くことになる。 働き始めてしばらくたったある日、暁にの元にある事件が舞い込む。 人体自然発火焼死事件― 発見されたのは身元不明の焼死体。不思議なことに体は身元が分からないほど黒く焼けているのに 着衣は全く燃えていないというものだった。 この事件を解決するよう命が下り事件解決のため動き出す暁。 この怪異は妖の仕業か…それとも人為的なものか… 妖が生まれる心の因果を暁の推理と陰陽師の力で紐解いていく。 ※「女だけど男装して陰陽師してます!―只今、陰陽師修行中‼―」 (https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/892377141) の第2弾となります。 ※単品でも楽しんでいただけますが、お時間と興味がありましたら第1作も読んでいただけると嬉しいです ※ノベルアップ+でも掲載しています ※表紙イラスト:雨神あきら様

処理中です...