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第一部 始動
第22話 人質救出へ
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――――――――――――――――
残り時間――8時間17分
残りデストラップ――9個
残り生存者――10名
死亡者――2名
重体によるゲーム参加不能者――1名
――――――――――――――――
ヒロユキが愛莉を伴ってホールから出て行った。その姿が見えなくなりしばらくして、廊下の先からエレベーターの音が聞こえてきた。
すぐに瓜生が無言のままホールから走り出た。スオウは即座にその後を追った。
しかし、二人がエレベーター乗り場に着いたときには、すでにエレベーターは動き出していた。
瓜生がエレベーターの階数表示をじっと見つめる。四階の表示が点滅し、次に三階、二階と点滅が続いて、そこで点滅が止まった。
「よし、二階だな」
「瓜生さん、どうするんですか?」
「時間をかけたらあの子が心配だからな。すぐに後を追う」
「待てよ。オレがひとりで行く」
瓜生とスオウの会話に突然別の声が入ってきた。スオウが驚いて振り返ると、そこにヒロトの姿があった。どうやらスオウたちの後を追ってきていたらしい。
「どうしたんだ。急に協調性が生まれたのか?」
瓜生が意外そうな顔でヒロトを見つめた。
「あの男はオレと関係ありなんでな」
「お前、まさか、あの男の仲間になるつも――」
「逆だ」
ヒロトはスオウの疑問を短く切り捨てた。
「さっきのニュースを見るまでは知らなかったが、どうやらあの男はオレがこのゲームに参加する理由を作ったヤツみたいだからな。オレが直接けりをつけに行ってくる」
「お前さんひとりで平気なのか?」
瓜生が慎重な口調で訊く。
「大人数で行くよりも、オレひとりの方が動きやすいから平気だ」
「――分かった。どんな事情があるのか知らないが、ここはお前さんに任せることにする」
「ああ」
「ただし、時間がかかるようだったら俺たちも行動するぜ。あの子は強気だったが、相手が拳銃を持っている以上はなにが起こるか分からないからな」
「そのときはあんたらの勝手にすればいいさ」
それで話し合いは終わりだという風に、ヒロトは二人をその場に残してエレベーター脇の階段に向かって行った。
「ここはあのにいちゃんに任せて、俺たちはいったんホールに戻ろう」
「分かりました」
スオウは瓜生とともにホールに戻った。
「ねえ、大丈夫だったの? スオウ君たちが出て行ったあと、すぐにボウズ頭君が出て行ったけど」
心配気な表情を浮かべたイツカが近寄ってきた。
「あの男にはあの男なりの事情があるみたいなんだ。だから、今はあの男に任せることにして、おれと瓜生さんはホールに戻ってきたんだ」
「そうだったんだ。でも、あの人を信用してもいいの? 敵が二人になるだけじゃ……」
「たしかにその可能性もないわけじゃない。だから、すぐに俺も後を追うつもりだ」
スオウに変わって瓜生が答えた。
「えっ、そうだったんですか?」
スオウは思わず訊き返した。
「ああ。でも、君はここに残るんだ」
「いや、おれも行きますよ!」
「ダメだ。拳銃を持った男のところに、高校生を連れて行くわけにはいかないからな」
瓜生は言下に強い口調で否定した。
「だけど、おれだって……」
「君の気持ちは分かるが、これ以上犠牲者を増やすわけにはいかない。それに君は少し休んだ方がいい」
「そんな……」
「――そういうことならば、スオウ君の代わりに私が行こう。今まで休ませてもらっていたからな」
円城が立候補してきた。
「いいのか? 最初にいっておくが、命の保障はできないぜ」
「命を懸けたゲームをやっている最中にそんなことを言われても、全然説得力がないけどな」
「たしかに、それはいえてるな」
瓜生が口元を少しだけ歪ませて笑った。
「早速俺と円城さんとであいつらを追いかけることにする。あとのことは君らに任せたぞ」
「分かりました。ただ、瓜生さんたちにもしも――」
「ああ、そのときは君らで判断してくれ」
スオウの言葉を先回りして、瓜生が答えた。
「それじゃ、円城さん、行こうか」
「ああ、分かったよ」
「瓜生さん、円城さん、二人とも気を付けて下さいね」
ミネの看病をしているイツカが二人に声をかける。
「ああ、行ってくるよ」
まるで近所のコンビニにでも買い物に行ってくるというような感じで軽く言って、瓜生はホールから出て行った。
「私も行くよ。みんなもデストラップの前兆を見逃さないように」
円城が瓜生に続いてホールを出た。
ホール内には、スオウを含めて六人が残った。
逃走中の犯罪者という予想外の人物の登場に、スオウの精神は自分でも分かるくらい、かなりの疲労が蓄積されていた。ここは瓜生に言われた通り、少しだけ身体を休まさせてもらうつもりだった。またいつ状況が急変するとも限らないのだから――。
ゲーム開始からようやく五時間が過ぎた。ゲームはまだまだ続く。
残り時間――8時間17分
残りデストラップ――9個
残り生存者――10名
死亡者――2名
重体によるゲーム参加不能者――1名
――――――――――――――――
ヒロユキが愛莉を伴ってホールから出て行った。その姿が見えなくなりしばらくして、廊下の先からエレベーターの音が聞こえてきた。
すぐに瓜生が無言のままホールから走り出た。スオウは即座にその後を追った。
しかし、二人がエレベーター乗り場に着いたときには、すでにエレベーターは動き出していた。
瓜生がエレベーターの階数表示をじっと見つめる。四階の表示が点滅し、次に三階、二階と点滅が続いて、そこで点滅が止まった。
「よし、二階だな」
「瓜生さん、どうするんですか?」
「時間をかけたらあの子が心配だからな。すぐに後を追う」
「待てよ。オレがひとりで行く」
瓜生とスオウの会話に突然別の声が入ってきた。スオウが驚いて振り返ると、そこにヒロトの姿があった。どうやらスオウたちの後を追ってきていたらしい。
「どうしたんだ。急に協調性が生まれたのか?」
瓜生が意外そうな顔でヒロトを見つめた。
「あの男はオレと関係ありなんでな」
「お前、まさか、あの男の仲間になるつも――」
「逆だ」
ヒロトはスオウの疑問を短く切り捨てた。
「さっきのニュースを見るまでは知らなかったが、どうやらあの男はオレがこのゲームに参加する理由を作ったヤツみたいだからな。オレが直接けりをつけに行ってくる」
「お前さんひとりで平気なのか?」
瓜生が慎重な口調で訊く。
「大人数で行くよりも、オレひとりの方が動きやすいから平気だ」
「――分かった。どんな事情があるのか知らないが、ここはお前さんに任せることにする」
「ああ」
「ただし、時間がかかるようだったら俺たちも行動するぜ。あの子は強気だったが、相手が拳銃を持っている以上はなにが起こるか分からないからな」
「そのときはあんたらの勝手にすればいいさ」
それで話し合いは終わりだという風に、ヒロトは二人をその場に残してエレベーター脇の階段に向かって行った。
「ここはあのにいちゃんに任せて、俺たちはいったんホールに戻ろう」
「分かりました」
スオウは瓜生とともにホールに戻った。
「ねえ、大丈夫だったの? スオウ君たちが出て行ったあと、すぐにボウズ頭君が出て行ったけど」
心配気な表情を浮かべたイツカが近寄ってきた。
「あの男にはあの男なりの事情があるみたいなんだ。だから、今はあの男に任せることにして、おれと瓜生さんはホールに戻ってきたんだ」
「そうだったんだ。でも、あの人を信用してもいいの? 敵が二人になるだけじゃ……」
「たしかにその可能性もないわけじゃない。だから、すぐに俺も後を追うつもりだ」
スオウに変わって瓜生が答えた。
「えっ、そうだったんですか?」
スオウは思わず訊き返した。
「ああ。でも、君はここに残るんだ」
「いや、おれも行きますよ!」
「ダメだ。拳銃を持った男のところに、高校生を連れて行くわけにはいかないからな」
瓜生は言下に強い口調で否定した。
「だけど、おれだって……」
「君の気持ちは分かるが、これ以上犠牲者を増やすわけにはいかない。それに君は少し休んだ方がいい」
「そんな……」
「――そういうことならば、スオウ君の代わりに私が行こう。今まで休ませてもらっていたからな」
円城が立候補してきた。
「いいのか? 最初にいっておくが、命の保障はできないぜ」
「命を懸けたゲームをやっている最中にそんなことを言われても、全然説得力がないけどな」
「たしかに、それはいえてるな」
瓜生が口元を少しだけ歪ませて笑った。
「早速俺と円城さんとであいつらを追いかけることにする。あとのことは君らに任せたぞ」
「分かりました。ただ、瓜生さんたちにもしも――」
「ああ、そのときは君らで判断してくれ」
スオウの言葉を先回りして、瓜生が答えた。
「それじゃ、円城さん、行こうか」
「ああ、分かったよ」
「瓜生さん、円城さん、二人とも気を付けて下さいね」
ミネの看病をしているイツカが二人に声をかける。
「ああ、行ってくるよ」
まるで近所のコンビニにでも買い物に行ってくるというような感じで軽く言って、瓜生はホールから出て行った。
「私も行くよ。みんなもデストラップの前兆を見逃さないように」
円城が瓜生に続いてホールを出た。
ホール内には、スオウを含めて六人が残った。
逃走中の犯罪者という予想外の人物の登場に、スオウの精神は自分でも分かるくらい、かなりの疲労が蓄積されていた。ここは瓜生に言われた通り、少しだけ身体を休まさせてもらうつもりだった。またいつ状況が急変するとも限らないのだから――。
ゲーム開始からようやく五時間が過ぎた。ゲームはまだまだ続く。
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