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第四章
253話 龍
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「三年間も準備期間を与えてくれて感謝するよ。おかげで随分楽に勝てそうだ」
「性急な人間よ……」
「何……?」
私にはこの状況で信長が余裕ぶる意味が分からなかった。
しかしそれはすぐに答え合わせが行われる。
『し、信じられん……あれは……!!!』
「どうしたハオラン」
「レオ様向こうの空をご覧下さい!」
「なッ──!」
戦闘機隊の奮戦により一時は制空権を確保した魔王領上空に、有り得ないほどの敵影が見えた。
『あれはドラゴンだ! 本物の龍だ!』
「ワ、ワイバーンの見間違えではないのか!?」
『我ら竜人が見紛うことはないわ! あれは古龍に違いない!』
たった一匹ですら一国を破滅に追いやるというドラゴン。それが数え切れないほどこちらに向かってきているというのだ。
『こちら第八歩兵師団第三偵察中隊! 前方にリッチとスケルトンの集団!』
「今はそれ所では──」
『奴らは銃を持っています! 魔法で強化された弾丸は軽戦車の装甲を貫通可能です!』
「……対戦車ライフルの真似事か」
「ここからは第二戦ぞ! 人間の王よ!」
魔王軍による本当の最終反攻作戦により我が軍は混乱に陥った。
「対空戦闘用意! 副砲も対空砲として使え!」
空軍の戦闘機隊や陸軍砲兵隊の高射砲では迎撃しきれないドラゴンがこちらへ向かってくる。
「地上の10cm高射砲はドラゴンに有効でした! 胴体を撃ち抜けばドラゴンと言えど死にます!」
「なら副砲の20cm砲なら余裕だ! 仰角取れるだけ取っておけ!」
主砲の51cm砲はその砲身の重さから対空戦闘ができるまでの仰角が取れない。砲身寿命も連戦を想定していない、まさに必殺の兵器だ。
相手がドラゴンとはいえ対空戦闘などに使える品ではない。
「先にドラゴンと交戦した戦闘機隊より報告が入っています! ドラゴンの隙間を埋めるようにワイバーンも混じっており、本物のドラゴンは思ったよりも少ないと!」
「とは言え百匹以上いるがな……」
「またドラゴンの翼は20mm砲で穴を開けることが可能、攻撃し続ければやがて落ちると!」
「地上に落として処理は戦車や砲兵に任せるか」
あくまでも魔王の髑髏武者を撃破するための戦艦だ。そんな本格的な対空戦闘制御システムは搭載していない。
それでもやるしかない。ドラゴンなら戦闘機よりもよっぽど遅いはずだ。
きっとやれる。地上部隊の戦果も挙がっているのだから。
「副砲射撃開始!」
ズドンズドン! と重たい音が響く。副砲を全て前方へ射撃しているからか、艦全体が後ろへズレるような感覚があった。
「命中弾なし!」
「構わん! 撃ち続けろ!」
対空戦闘において重要なのは弾幕である。当たるまで撃ち続ければ当たるのだ。
「どんどんドラゴンが近づいて来ます!」
「次! 45mm連装砲、撃て!」
バンバンバンバン! と子気味良いリズムで対空砲が射撃を開始する。
「副砲で一匹撃墜! 45mm砲では胴体を貫通不能のようです!」
「50mmの鉄板をぶち抜けるんだぞこの化け物め! 45mmも翼を狙って撃て! 20mmは十分に引き付けてからしっかり翼を射撃開始せよ!」
遂に20mm砲がバババババババと連射し始めると、戦艦は対空砲火による光に包まれた。
「……五匹撃墜! ……八匹撃墜! ……十七匹撃墜!」
『命に替えてもレオ様とエルシャ様をお守りしろ!』
「空軍が援軍に来ました!」
『竜人が龍を殺す日が来るとはな……』
「対魔もです!」
地上部隊は地上部隊で新勢力との戦闘に追われている。そこに加えて生きたままドラゴンに暴れられれば、これまでの戦況は一気に覆ってしまうだろう。
だが私を乗せた戦艦がいつまでのこの場に留まるのも得策ではない。
「魔王を倒し、魔王城を破壊するのがこの戦艦の仕事だ! 最大戦速で魔王城を目指せ!」
「了解! 出力全開! 最大戦速!」
射撃音をかき消すようなエンジンの振動と共に艦が加速する。
「突っ切れ!」
戦艦はドラゴンの群れを轢き殺すように中央突破を強行した。
「一匹甲板に張り付かれました!」
「やってくるでござる!」
「……頼んだぞサツキ」
サツキは艦橋から飛び降りた。
世界最高戦力がここに集まっているのだ。一国に匹敵するドラゴンよりも強い。
「ぐぁぁぁ!」
「張り付かれたドラゴンに対空砲が破壊されています!」
「戦艦の全幅よりデカいのか……ドラゴンは……」
そう考えるとドラゴンは50mはあるだろう。到底生き物とは信じたくない化け物だ。
しかしそれよりも信長が使う髑髏武者の方が大きいというのだから恐ろしい。
『レオ様! ちょっと戦艦が減るかもだけど! でも全部なくなっちゃうよりいいでござるよね!?』
「知らんがそれでいい!」
『じゃあやっちゃうでござる! 忍法、爆殺殺法!』
次の瞬間、甲板で暴れていたドラゴンの頭が爆発し上顎が吹き飛んだ。忍法というか、ドラゴンの口に爆薬を放り込んで爆発させたようだ。
やがてドラゴンはグギュギュギュ! と悲痛な叫びを上げながら戦艦から振り落とされていった。
「よくやったサツキ」
『ちょっと甲板も爆破しちゃったでござる!』
「了解だ。救護班は負傷者の手当てを! 修理班は甲板と破壊された対空砲の補修を行え!」
「は!」
こんな攻撃をしても依然として信長は魔王城の前から動こうとはしていなかった。
「……今度こそお前の番だ魔王!」
「クハハ……。来い、人間の王……」
「性急な人間よ……」
「何……?」
私にはこの状況で信長が余裕ぶる意味が分からなかった。
しかしそれはすぐに答え合わせが行われる。
『し、信じられん……あれは……!!!』
「どうしたハオラン」
「レオ様向こうの空をご覧下さい!」
「なッ──!」
戦闘機隊の奮戦により一時は制空権を確保した魔王領上空に、有り得ないほどの敵影が見えた。
『あれはドラゴンだ! 本物の龍だ!』
「ワ、ワイバーンの見間違えではないのか!?」
『我ら竜人が見紛うことはないわ! あれは古龍に違いない!』
たった一匹ですら一国を破滅に追いやるというドラゴン。それが数え切れないほどこちらに向かってきているというのだ。
『こちら第八歩兵師団第三偵察中隊! 前方にリッチとスケルトンの集団!』
「今はそれ所では──」
『奴らは銃を持っています! 魔法で強化された弾丸は軽戦車の装甲を貫通可能です!』
「……対戦車ライフルの真似事か」
「ここからは第二戦ぞ! 人間の王よ!」
魔王軍による本当の最終反攻作戦により我が軍は混乱に陥った。
「対空戦闘用意! 副砲も対空砲として使え!」
空軍の戦闘機隊や陸軍砲兵隊の高射砲では迎撃しきれないドラゴンがこちらへ向かってくる。
「地上の10cm高射砲はドラゴンに有効でした! 胴体を撃ち抜けばドラゴンと言えど死にます!」
「なら副砲の20cm砲なら余裕だ! 仰角取れるだけ取っておけ!」
主砲の51cm砲はその砲身の重さから対空戦闘ができるまでの仰角が取れない。砲身寿命も連戦を想定していない、まさに必殺の兵器だ。
相手がドラゴンとはいえ対空戦闘などに使える品ではない。
「先にドラゴンと交戦した戦闘機隊より報告が入っています! ドラゴンの隙間を埋めるようにワイバーンも混じっており、本物のドラゴンは思ったよりも少ないと!」
「とは言え百匹以上いるがな……」
「またドラゴンの翼は20mm砲で穴を開けることが可能、攻撃し続ければやがて落ちると!」
「地上に落として処理は戦車や砲兵に任せるか」
あくまでも魔王の髑髏武者を撃破するための戦艦だ。そんな本格的な対空戦闘制御システムは搭載していない。
それでもやるしかない。ドラゴンなら戦闘機よりもよっぽど遅いはずだ。
きっとやれる。地上部隊の戦果も挙がっているのだから。
「副砲射撃開始!」
ズドンズドン! と重たい音が響く。副砲を全て前方へ射撃しているからか、艦全体が後ろへズレるような感覚があった。
「命中弾なし!」
「構わん! 撃ち続けろ!」
対空戦闘において重要なのは弾幕である。当たるまで撃ち続ければ当たるのだ。
「どんどんドラゴンが近づいて来ます!」
「次! 45mm連装砲、撃て!」
バンバンバンバン! と子気味良いリズムで対空砲が射撃を開始する。
「副砲で一匹撃墜! 45mm砲では胴体を貫通不能のようです!」
「50mmの鉄板をぶち抜けるんだぞこの化け物め! 45mmも翼を狙って撃て! 20mmは十分に引き付けてからしっかり翼を射撃開始せよ!」
遂に20mm砲がバババババババと連射し始めると、戦艦は対空砲火による光に包まれた。
「……五匹撃墜! ……八匹撃墜! ……十七匹撃墜!」
『命に替えてもレオ様とエルシャ様をお守りしろ!』
「空軍が援軍に来ました!」
『竜人が龍を殺す日が来るとはな……』
「対魔もです!」
地上部隊は地上部隊で新勢力との戦闘に追われている。そこに加えて生きたままドラゴンに暴れられれば、これまでの戦況は一気に覆ってしまうだろう。
だが私を乗せた戦艦がいつまでのこの場に留まるのも得策ではない。
「魔王を倒し、魔王城を破壊するのがこの戦艦の仕事だ! 最大戦速で魔王城を目指せ!」
「了解! 出力全開! 最大戦速!」
射撃音をかき消すようなエンジンの振動と共に艦が加速する。
「突っ切れ!」
戦艦はドラゴンの群れを轢き殺すように中央突破を強行した。
「一匹甲板に張り付かれました!」
「やってくるでござる!」
「……頼んだぞサツキ」
サツキは艦橋から飛び降りた。
世界最高戦力がここに集まっているのだ。一国に匹敵するドラゴンよりも強い。
「ぐぁぁぁ!」
「張り付かれたドラゴンに対空砲が破壊されています!」
「戦艦の全幅よりデカいのか……ドラゴンは……」
そう考えるとドラゴンは50mはあるだろう。到底生き物とは信じたくない化け物だ。
しかしそれよりも信長が使う髑髏武者の方が大きいというのだから恐ろしい。
『レオ様! ちょっと戦艦が減るかもだけど! でも全部なくなっちゃうよりいいでござるよね!?』
「知らんがそれでいい!」
『じゃあやっちゃうでござる! 忍法、爆殺殺法!』
次の瞬間、甲板で暴れていたドラゴンの頭が爆発し上顎が吹き飛んだ。忍法というか、ドラゴンの口に爆薬を放り込んで爆発させたようだ。
やがてドラゴンはグギュギュギュ! と悲痛な叫びを上げながら戦艦から振り落とされていった。
「よくやったサツキ」
『ちょっと甲板も爆破しちゃったでござる!』
「了解だ。救護班は負傷者の手当てを! 修理班は甲板と破壊された対空砲の補修を行え!」
「は!」
こんな攻撃をしても依然として信長は魔王城の前から動こうとはしていなかった。
「……今度こそお前の番だ魔王!」
「クハハ……。来い、人間の王……」
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