炎の唄

Yuki-Hana

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第1章 君と出会う

灯火の力

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灯火の力は心の力。心の力が無ければ、魂そのものが代償となる。

君がいないと心の奥底がひどく痛い。

敵軍の能力者は相当な力の持ち主だ。純粋な怒り。感情の激流に飲み込まれそうだ。

「君はそんなにも恨んでいるのか。」
私のことを。この国を。
力の制御ができなくなる。火球が水龍へと変わる。

私が灯火の力に目覚めた幼少の頃、父が言った。『怒りにも悲しみにも飲み込まれてはいけない。灯火の力は大地の力。自然を育み人の心を救い上げる力』

悲しい。痛い。もう温かい灯火を作れる心は残っていない。華蓮の口から血が流れる。

父は早くに亡くなった。それは歴代の能力者と違わなかった。父は望んだ。平和な国を。私が長く生きながらえる時代を。

この激動と戦乱の時代、それは儚い夢。

水龍が敵軍の火球を飲み込む。そして敵陣営に水禍となって襲い掛かる。

儚い夢でも、君とだけは戦いたくなかった。
この戦乱の時代、戦って死んでもいい。力に魂を食い潰されてもいい。
君がいるのなら、それで良かった。

「父上。今ならあなたの葛藤が分かります。」

君に生きていて欲しい。
国を守らなければならない。
怒りの炎に、悲しみの水禍に、飲み込まれないでいて欲しい。

願わくば、灯火を心に抱いて欲しい。

灯火の力など無くなってしまえばいい。

「ここまできても、君への執着が捨てられない。」

いつから私たちは、花の咲かない蓮池に共に沈んでしまったのだろう。

仮面の男が、私に矢を射る。命を奪う為のものではない。

それは宣戦布告。

「戦おう。君か私が死ぬまで。」

国をも巻き込む片愛。

愚かで恐ろしい執着、それが私の罪。

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