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第1章 君と出会う
綺央へ
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綺央地方の1/3は焦土と化し六華から陸王にかけての砦は崩れた。死者数はまだ把握できていない。
遠い空で夕焼けが沈んでいく。灯火の力は大地の力。この地を保つためのもの。
「陛下、綺央地方に再び進軍です。」
使者が私の部屋まで駆け入り、急いで報告をする。なんと予想通りに事が進むことか。
この力が忌々しい。
「あらかじめ配置しておいた兵はどうだ。」
「それが、、。」
使者は言い淀む。
「なんですか。早く言いなさい。」
律夏は叱責し使者を急かす。けれど、私は分かっていた。それもずっと前から。
「灯火の力が私以外に出現したな。」
使者はうつむき声をひそめた。
「はい、それも完全な力です。軍の半数を失いました。残り半数は碧壁まで後退しなんとか進軍を食い止めていますが、いつまでもつか分かりません。」
「なぜ綺央ばかりを狙うのか。」
律夏は文官出身だ。5年前の大戦をその目では見ていない。
「綺央は因縁の地だからだよ。灯火の力には灯火の力。私も出る。律夏しばらく内政を任せた。早馬を出し全軍に伝えなさい。私が辿り着くまで死しても碧壁を守れと。」
あの時から、私はこの地で生きている感覚がしない。他者の死も自身の死も、どこか遠くにあるみたいだ。沈んではまた登るあの夕焼けのように。壊れ続ける世界の悪夢が永遠に繰り返されているようなのだ。
「早く帰ってこないと、王都乗っ取りますからね!」
律夏の激励の言葉を背に、馬に跨り彼の方を振り返る。
「律夏になら任せられるさ。」
相変わらず運動神経の悪い律夏はエントランスの階段でよろめきながら、駆け降りてきた。
律夏ならほんとうにこの国を正しく導けるだろう。
愛という罪を犯した私などより。きっと。
黒馬の烙陽に乗り華蓮は綺央地方、碧壁に向かった。
夕陽はほとんど沈み、地平線から漏れ出でる残り火と暗闇が混ざり合っていた。
遠い空で夕焼けが沈んでいく。灯火の力は大地の力。この地を保つためのもの。
「陛下、綺央地方に再び進軍です。」
使者が私の部屋まで駆け入り、急いで報告をする。なんと予想通りに事が進むことか。
この力が忌々しい。
「あらかじめ配置しておいた兵はどうだ。」
「それが、、。」
使者は言い淀む。
「なんですか。早く言いなさい。」
律夏は叱責し使者を急かす。けれど、私は分かっていた。それもずっと前から。
「灯火の力が私以外に出現したな。」
使者はうつむき声をひそめた。
「はい、それも完全な力です。軍の半数を失いました。残り半数は碧壁まで後退しなんとか進軍を食い止めていますが、いつまでもつか分かりません。」
「なぜ綺央ばかりを狙うのか。」
律夏は文官出身だ。5年前の大戦をその目では見ていない。
「綺央は因縁の地だからだよ。灯火の力には灯火の力。私も出る。律夏しばらく内政を任せた。早馬を出し全軍に伝えなさい。私が辿り着くまで死しても碧壁を守れと。」
あの時から、私はこの地で生きている感覚がしない。他者の死も自身の死も、どこか遠くにあるみたいだ。沈んではまた登るあの夕焼けのように。壊れ続ける世界の悪夢が永遠に繰り返されているようなのだ。
「早く帰ってこないと、王都乗っ取りますからね!」
律夏の激励の言葉を背に、馬に跨り彼の方を振り返る。
「律夏になら任せられるさ。」
相変わらず運動神経の悪い律夏はエントランスの階段でよろめきながら、駆け降りてきた。
律夏ならほんとうにこの国を正しく導けるだろう。
愛という罪を犯した私などより。きっと。
黒馬の烙陽に乗り華蓮は綺央地方、碧壁に向かった。
夕陽はほとんど沈み、地平線から漏れ出でる残り火と暗闇が混ざり合っていた。
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