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第三章
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「マークも久しぶり」
抱きしめられていた力が抜けて、メイド長が離れていきながらそう言った。私は少し名残惜しさを感じる。
「お久しぶりです」
丁寧にマークが頭を下げる。メイド長は次にグリネアとイズに目を向けた。
「こちらは見ない顔ですね……はじめまして、メイドのノクリーアと申します」
マークに負けづ劣らずの丁寧なお辞儀をするメイド長に対して、グリネアがたどたどしく頭を下げながら挨拶する。
「グリネアです」
それと対照的にイズは頭も下げずに「イズだ」と短く告げた。少しくらい、丁寧さを持ってもいいのではと思っていると、メイド長が問いかけてくる。
「イズさんは、魔物ですか?」
メイド長は私がテイムを使えるのは当然知っている。だから普通のトラではないのはすぐわかっただろう。体のカラーリングも違う。でもポイズンタイガーと言うまでは、詳細を知らないメイド長は気付かない。本題に入る前に事情を話した方が良いだろう。
「そうよ、しかもただの魔物じゃない」
「そうなのですか?」
「あの、ポイズンタイガーよ!」
いつも、冷静沈着でいるメイド長の表情が驚きに変わる。
「あのポイズンタイガーですか……無茶をされた様ですね」
メイド長はマークに視線を送ると、マークが肩をすくめて、返す。どういう意味なのか、とても気になるけど、私は話を続ける。
「そういう事で、ポイズンタイガーがいた土地は、毒の溢れる場所じゃなくなってね、しかも誰の土地でもないから、そこに私の国を作るつもり」
簡単だけど、とりあえずの説明を終えた。本当はもっといろいろあったけど、そんな冒険譚はまた時間のある時じゃないと、話せない。
「なるほど……本当に、そこまで」
「疑ってた?」
私は少し意地悪な笑みを浮かべてそう聞いてやる。メイド長は少し、申し訳なさそうな顔をして、返した。
「疑ってたというより、信じがたかったというか」
何個か似たような言葉を並べるメイド長。つまりは、まさかやるとは思ってなかった、という事だろう。
「まぁ、とりあえずそれはいいわ、時間もないから本題に入るわね」
「……はい」
「その土地を今、人が住めるようにいろいろ施してる最中なんだけど、問題が起こったのよ」
「問題?」
「そう、半島にある山にだけどね、アンデットが出たのよ」
私の言葉にビクリとメイド長が体を強張らせた。メイド長は言葉だけで、ビビる様な怖がりではなかったような。私は少し不思議に思いつつ、続ける。
「それで、聖魔法を使える人を知らないか聞きに来たのよ」
抱きしめられていた力が抜けて、メイド長が離れていきながらそう言った。私は少し名残惜しさを感じる。
「お久しぶりです」
丁寧にマークが頭を下げる。メイド長は次にグリネアとイズに目を向けた。
「こちらは見ない顔ですね……はじめまして、メイドのノクリーアと申します」
マークに負けづ劣らずの丁寧なお辞儀をするメイド長に対して、グリネアがたどたどしく頭を下げながら挨拶する。
「グリネアです」
それと対照的にイズは頭も下げずに「イズだ」と短く告げた。少しくらい、丁寧さを持ってもいいのではと思っていると、メイド長が問いかけてくる。
「イズさんは、魔物ですか?」
メイド長は私がテイムを使えるのは当然知っている。だから普通のトラではないのはすぐわかっただろう。体のカラーリングも違う。でもポイズンタイガーと言うまでは、詳細を知らないメイド長は気付かない。本題に入る前に事情を話した方が良いだろう。
「そうよ、しかもただの魔物じゃない」
「そうなのですか?」
「あの、ポイズンタイガーよ!」
いつも、冷静沈着でいるメイド長の表情が驚きに変わる。
「あのポイズンタイガーですか……無茶をされた様ですね」
メイド長はマークに視線を送ると、マークが肩をすくめて、返す。どういう意味なのか、とても気になるけど、私は話を続ける。
「そういう事で、ポイズンタイガーがいた土地は、毒の溢れる場所じゃなくなってね、しかも誰の土地でもないから、そこに私の国を作るつもり」
簡単だけど、とりあえずの説明を終えた。本当はもっといろいろあったけど、そんな冒険譚はまた時間のある時じゃないと、話せない。
「なるほど……本当に、そこまで」
「疑ってた?」
私は少し意地悪な笑みを浮かべてそう聞いてやる。メイド長は少し、申し訳なさそうな顔をして、返した。
「疑ってたというより、信じがたかったというか」
何個か似たような言葉を並べるメイド長。つまりは、まさかやるとは思ってなかった、という事だろう。
「まぁ、とりあえずそれはいいわ、時間もないから本題に入るわね」
「……はい」
「その土地を今、人が住めるようにいろいろ施してる最中なんだけど、問題が起こったのよ」
「問題?」
「そう、半島にある山にだけどね、アンデットが出たのよ」
私の言葉にビクリとメイド長が体を強張らせた。メイド長は言葉だけで、ビビる様な怖がりではなかったような。私は少し不思議に思いつつ、続ける。
「それで、聖魔法を使える人を知らないか聞きに来たのよ」
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