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第一章
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「言ったわね、じゃあ私と契約して、それで毒を止められたら、この土地に私の国を作らせて」
「止められるわけが」
「出来る! やって見せる」
私はポイズンタイガーの言葉を遮るように言った。ポイズンタイガーは私をじっと見つめる。しばらくすると「わかった」と呟いた。
「よし、見てなさい」
私はポイズンタイガーに近づく。魔力を集中して、魔法陣を展開させた。
「私はセフィア・ロドリス、あなたに私を守り、助ける者として、名を贈る」
名前を私は考える。どうしようか。勢いで始めてしまったから、考えていなかった。ポイズンタイガー。そこから取るか。ポイズンはなんかダサイ。タイガーも同じくダサイ。いろいろ考えて私は閃く。
「あなたの名前は『イズ』この名前を受け取るならば、跪き私の手の甲に忠誠のキスを、それを持って契約は成される」
私は右手の甲を上にして、前に突き出す。ポイズンタイガーはお座りをして、私を見つめた。少し迷ったようにすると、手の甲に口をつける。その瞬間、魔法陣が縮小して、私の手首とイズの首に紋様を付けた。
「……これで終わりか?」
イズが恐る恐る訪ねて来る。
「そんなわけないでしょ、これからよ」
私は集中する。イズ自身でさえ止められないほどの強力な力。それを止めなければならない。私はイズの力を感じ取る。イズ自身の昔の記憶が少し見えてきた。
「元は普通のトラだったのね」
昔の記憶の中にあった。イズは魔法が使えた。しかもかなり強力な力だ。そして、ある日、毒魔法を習得する。適性があったのか、どんどん上達して、強大な毒魔法の使い手になっていく。それでも成長し続ける毒魔法の力は、すでに自分では止められなくなっていた。ただのトラが、ポイズンタイガーという魔物へと転じてしまう瞬間だった。毒魔法と一体化した様な状態になったイズは、自分の意志で毒を止められず、いずれ人間に追い立てられ、この地へやってくる。
私はイズの力の源を見つけた。大きく強く光って、そして、恐れ、怯えている。防衛本能が働き続けているような状態。訳も分からず、強大になっていく毒魔法、そして魔物へと転じ、人間に追い立てられる。怯えて自分を守ろうとして当然だ。私はその力の源に優しく触れた。
「もう大丈夫……私がついてるわ」
力の源が反応する。大きく強く光っていたのが、次第に収束していった。
「ふぅ」
集中するのをやめて、私は意識を戻す。
「どう?」
私はニカリと笑って、イズを見る。体から流れ出ていた毒はもう止まっていた。周辺の毒たまりも消え、空気も澄んでいる。邪魔する物が無くなった昼のあたたかな光が、私達に降り注いだ。
「止められるわけが」
「出来る! やって見せる」
私はポイズンタイガーの言葉を遮るように言った。ポイズンタイガーは私をじっと見つめる。しばらくすると「わかった」と呟いた。
「よし、見てなさい」
私はポイズンタイガーに近づく。魔力を集中して、魔法陣を展開させた。
「私はセフィア・ロドリス、あなたに私を守り、助ける者として、名を贈る」
名前を私は考える。どうしようか。勢いで始めてしまったから、考えていなかった。ポイズンタイガー。そこから取るか。ポイズンはなんかダサイ。タイガーも同じくダサイ。いろいろ考えて私は閃く。
「あなたの名前は『イズ』この名前を受け取るならば、跪き私の手の甲に忠誠のキスを、それを持って契約は成される」
私は右手の甲を上にして、前に突き出す。ポイズンタイガーはお座りをして、私を見つめた。少し迷ったようにすると、手の甲に口をつける。その瞬間、魔法陣が縮小して、私の手首とイズの首に紋様を付けた。
「……これで終わりか?」
イズが恐る恐る訪ねて来る。
「そんなわけないでしょ、これからよ」
私は集中する。イズ自身でさえ止められないほどの強力な力。それを止めなければならない。私はイズの力を感じ取る。イズ自身の昔の記憶が少し見えてきた。
「元は普通のトラだったのね」
昔の記憶の中にあった。イズは魔法が使えた。しかもかなり強力な力だ。そして、ある日、毒魔法を習得する。適性があったのか、どんどん上達して、強大な毒魔法の使い手になっていく。それでも成長し続ける毒魔法の力は、すでに自分では止められなくなっていた。ただのトラが、ポイズンタイガーという魔物へと転じてしまう瞬間だった。毒魔法と一体化した様な状態になったイズは、自分の意志で毒を止められず、いずれ人間に追い立てられ、この地へやってくる。
私はイズの力の源を見つけた。大きく強く光って、そして、恐れ、怯えている。防衛本能が働き続けているような状態。訳も分からず、強大になっていく毒魔法、そして魔物へと転じ、人間に追い立てられる。怯えて自分を守ろうとして当然だ。私はその力の源に優しく触れた。
「もう大丈夫……私がついてるわ」
力の源が反応する。大きく強く光っていたのが、次第に収束していった。
「ふぅ」
集中するのをやめて、私は意識を戻す。
「どう?」
私はニカリと笑って、イズを見る。体から流れ出ていた毒はもう止まっていた。周辺の毒たまりも消え、空気も澄んでいる。邪魔する物が無くなった昼のあたたかな光が、私達に降り注いだ。
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