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「私は、ナナとの婚約を破棄する! 加えて、反逆の罪によって、ナナを国外追放とする!」
「まっ、そんな!」
「命を奪わないのは、せめてもの情けだ、抵抗するならそれも撤回せざる負えないが」
 マージルの冷たい声が私の体を冷やし、震えさせる。本気だと感じる。体が抵抗してはダメだと、訴えてくる。私はガクリと力を抜いた。その時、私の影が映る床に、もう一つの影が伸びて、誰かが近づいてきた事を悟る。そして聞こえる声。
「王子は私の物、ざまぁ」
 私にだけ聞こえる声。ただ確かにエリィから発せられた声だった。コイツ。私はエリィを見つめる。とても険しい視線にしたかった、でもおそらく怯えるような視線になっていた。心の中はこのエリィという女の恐ろしさで、一杯だった。しかしエリィは怯えるようにマージルの胸の中に飛び込む。私はそのまま兵士に引きずられるように、その場から移動するしかなかった。



 恐ろしく手際良く、私の国外追放は実行された。たった数日の間に、私は流刑の地に立っていた。陽の降り注ぐ何もない草原。もしかしたら、すべて計画されていたのかもしれない。エリィという女。あいつは正直、悪女だ。私なんかより、よっぽど。知らない間に、マージルに取り入り、計画して、私の追放を実行したのではないかと思う。それだけの事をやる女と、声をかけられた時に感じた。だから心の中は恐ろしさで一杯になったのだ。敵わないという動物的本能の様な物。それが働いた感覚。私なんかあの女の前にではただのウサギで、あの女はライオンだったのだ。
「愚かだったわ」
 悪役を気取っていたけど、私なんかそんなの向いていない。何であんなことをしてしまったんだろう。自分が恥ずかしくなる。
「私なんかはこれから、地道に人の迷惑にならないように生きよう、私はその辺に転がってる石と同じよ」
 私はひとしきり、言葉を吐き出すと、のろのろと歩き出す。これからの生き方は重要だけど、まずは今の事を考えなければいけない。
「ここはどこだろう」
 温情ととるべきか、周りを見回しても、危険そうな感じはしない。
「途中で転移魔法の感触があったし、経過した日数はあてにならない」
 ずっと目隠しされていて、全く手掛かりもない。数日で来れるだけの場所というわけでもない。本当にどこなんだ。私は広がる草原を見渡す。歩いていると感じる草の柔らかさを感じる。それだけ。見える範囲に何もない。歩いて移動して、どこかにたどり着けるかどうかも分からない。
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