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「お帰り」
「ただいま」
「うわぁ!! どうしたの? これ」
玄関を開けてすぐに、陸が目の前に現れた大きな花束に歓声を上げた。
「だって、誕生日じゃん」
「そうだけど……。これ、何本あるの??」
「……ベタに100」
「え?? 100本??」
そう、ベタだとは思いつつも、祝いたい気持ちを示したくて、赤いバラ100本の花束を買ってきてしまった。その花束を両手で受け取った陸が、驚いた顔でつやつやと輝くバラたちを眺めていたが、やがてにっこりと笑顔を見せた。
「ありがとう。嬉しい」
「あと、ケーキとワインも買ってきたから」
そう言って袋に入った高級ワインと人気店のケーキが入った箱を持ち上げてみせた。
「……ほんとによかったのに……」
すまなさそうに陸が言った。
「いいの。俺がしたかったんだから。ほら、いこ」
そう答えて一緒にリビングへと向かう。食欲を刺激する良い匂いが哲也の鼻をくすぐった。
「いい匂いだな」
「ほんと? 今日はちょっと豪華にしたから。もうすぐできるから、着替えて待ってて」
「うん」
言われたとおりに寝室に向かい、スーツを脱いで部屋着に着替える。
リビングへと戻ると、すでにダイニングテーブルはきちんとセットされ、食事が運ばれていた。哲也がプレゼントした花束も大きな花瓶に入れられて飾られていた。
「おおっ、美味そうだな」
和食中心の料理が多い陸には珍しく、今夜は洋食のメニューだった。
オードブルにスモークサーモンとクリームチーズのタルト、アボカドディップに海老が乗ったカナッペなどが並び、メインはビーフシチューとサイドに食べやすい大きさに切られたバゲットが添えられていた。
「あんまり洋食は作らないから上手くできたか自信ないんだけど……」
「いや、すげぇ美味そうだけど」
「ワイン、飲む?」
「うん、飲む」
陸が哲也のワイングラスにワインを注いだ。カベルネ・ソーヴィニヨンという少し重みのある赤ワインを選んだのは正解だった。このワインは肉料理との相性がよいのだ。今夜のビーフシチューとよく合うだろう。
「貸して」
哲也は陸からワインボトルを奪うと、陸のワイングラスにもワインを注いだ。いつもはせっせと陸が世話を焼いてくれるのだが、今日は陸の誕生日なので自分で晩酌させるわけにはいかない。
「ありがとう」
陸が微笑んでこちらを見た。
「乾杯しようか」
「うん」
お互いグラスを持ち上げて見つめ合う。
「陸。誕生日おめでとう」
「ありがとう」
グラスを合わせてからワインを一口含んだ。濃厚で少し苦みのある赤ワイン独特の香りと味が広がった。
「美味しい」
陸が少し驚いた顔をして、グラスの中のワインを見つめた。哲也も陸の言葉に同意する。
「さすが高級ワインだよな」
「俺、前、店で結構高い酒を飲まされてきたけど、このワインはそれよりも全然美味しい」
「そうか。喜んでくれたなら嬉しいよ。そしたら食べない?俺、めちゃめちゃ腹減ってるんだよね」
「うん、食べよう」
いただきます、と2人で手を合わせて口にすると、ナイフとフォークを手にして食べ始めた。
「美味い」
オードルブルも、ビーフシチューも、作り慣れていないと言った陸の言葉が信じられないほど美味だった。哲也が感嘆の声を上げると、陸が嬉しそうに笑った。
「良かった」
そこからしばらくは、今日あった1日の出来事をお互い話しながら食事は進んだ。久しぶりにゆっくりと陸との時間を持てた気がした。
「ただいま」
「うわぁ!! どうしたの? これ」
玄関を開けてすぐに、陸が目の前に現れた大きな花束に歓声を上げた。
「だって、誕生日じゃん」
「そうだけど……。これ、何本あるの??」
「……ベタに100」
「え?? 100本??」
そう、ベタだとは思いつつも、祝いたい気持ちを示したくて、赤いバラ100本の花束を買ってきてしまった。その花束を両手で受け取った陸が、驚いた顔でつやつやと輝くバラたちを眺めていたが、やがてにっこりと笑顔を見せた。
「ありがとう。嬉しい」
「あと、ケーキとワインも買ってきたから」
そう言って袋に入った高級ワインと人気店のケーキが入った箱を持ち上げてみせた。
「……ほんとによかったのに……」
すまなさそうに陸が言った。
「いいの。俺がしたかったんだから。ほら、いこ」
そう答えて一緒にリビングへと向かう。食欲を刺激する良い匂いが哲也の鼻をくすぐった。
「いい匂いだな」
「ほんと? 今日はちょっと豪華にしたから。もうすぐできるから、着替えて待ってて」
「うん」
言われたとおりに寝室に向かい、スーツを脱いで部屋着に着替える。
リビングへと戻ると、すでにダイニングテーブルはきちんとセットされ、食事が運ばれていた。哲也がプレゼントした花束も大きな花瓶に入れられて飾られていた。
「おおっ、美味そうだな」
和食中心の料理が多い陸には珍しく、今夜は洋食のメニューだった。
オードブルにスモークサーモンとクリームチーズのタルト、アボカドディップに海老が乗ったカナッペなどが並び、メインはビーフシチューとサイドに食べやすい大きさに切られたバゲットが添えられていた。
「あんまり洋食は作らないから上手くできたか自信ないんだけど……」
「いや、すげぇ美味そうだけど」
「ワイン、飲む?」
「うん、飲む」
陸が哲也のワイングラスにワインを注いだ。カベルネ・ソーヴィニヨンという少し重みのある赤ワインを選んだのは正解だった。このワインは肉料理との相性がよいのだ。今夜のビーフシチューとよく合うだろう。
「貸して」
哲也は陸からワインボトルを奪うと、陸のワイングラスにもワインを注いだ。いつもはせっせと陸が世話を焼いてくれるのだが、今日は陸の誕生日なので自分で晩酌させるわけにはいかない。
「ありがとう」
陸が微笑んでこちらを見た。
「乾杯しようか」
「うん」
お互いグラスを持ち上げて見つめ合う。
「陸。誕生日おめでとう」
「ありがとう」
グラスを合わせてからワインを一口含んだ。濃厚で少し苦みのある赤ワイン独特の香りと味が広がった。
「美味しい」
陸が少し驚いた顔をして、グラスの中のワインを見つめた。哲也も陸の言葉に同意する。
「さすが高級ワインだよな」
「俺、前、店で結構高い酒を飲まされてきたけど、このワインはそれよりも全然美味しい」
「そうか。喜んでくれたなら嬉しいよ。そしたら食べない?俺、めちゃめちゃ腹減ってるんだよね」
「うん、食べよう」
いただきます、と2人で手を合わせて口にすると、ナイフとフォークを手にして食べ始めた。
「美味い」
オードルブルも、ビーフシチューも、作り慣れていないと言った陸の言葉が信じられないほど美味だった。哲也が感嘆の声を上げると、陸が嬉しそうに笑った。
「良かった」
そこからしばらくは、今日あった1日の出来事をお互い話しながら食事は進んだ。久しぶりにゆっくりと陸との時間を持てた気がした。
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