なんにも知らないのは君だけ【お知らせあります】

文字の大きさ
上 下
3 / 15
本編

俺はゲイなのか

しおりを挟む
 大卒で地元の市役所に勤めて早5年。20代も後半になり、晩婚の傾向があるとはいえ、周りの友人たちも段々と家庭を持つ者が出てきた。大学を卒業してから相手のいる気配がない慎弥に、友人たちも色々と探りを入れてくるが、適当な言い訳をしてここまで流してきた。

 こうやってどこまで誤魔化していけるだろう。ふと考える。

 慎弥が、どうやら自分は同性愛者のようだと気づいたのは大学生のときだった。それまではなんの疑問もなく、みなと同じように彼女を作り、体の関係も持った。けれど、どの彼女とも長く続かなかった。付き合う内にどうしても彼女たちに対して恋愛対象ではなく友達のような感覚になってしまうのだ。

 相手を抱きたい、とか相手を想像してひとりでやる、とか、そんな欲求が生まれることもなかったし、興味もなかった。それでも相手に悪いと思い、半分義務のように関係を続けていたりした。だけど、そんな慎弥の誤魔化しに相手が気づかないわけがない。大抵、自分のことはもう好きではないのか、と詰め寄られ、返答に困って振られる。このパターンだった。

 最初、自分は他人に性的魅力を感じない、アセクシュアルなのではないかと疑った。もしそうだとしたら、それを理解してでも慎弥と一緒にいてくれる人など見つけるのは難しいだろうと思った。ならば彼女を作らずにいたらいいのだけど。自分の中でそんな自分の性癖を否定したい気持ちもあって、大学生までは結局誤魔化しながら過ごしてきてしまった。

 しかし、大学生活を送っていたあるとき。バイト先の居酒屋の店長に告白というか、迫られて初めて『男』を意識した。意識した途端、それがとてもしっくりときた。そういえば。思い起こせば小学校のころから、彼女たちといるより男友達といる方が楽しかったし、着替えのときになぜか男友達の裸を意識したり、接触されるとなんとなく高揚したりしていた気がする。

 そうか。俺はゲイなのか。

 それを確かめたくて、その店長と関係を持った。驚いた。付き合ってきた彼女たちとでは全く感じられなかった快感がそこにはあった。自分が自然に『受け』に回っていたことにも驚いた。男の手で触れられることが、ごく当たり前のことに思えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

ヤンデレでも好きだよ!

はな
BL
春山玲にはヤンデレの恋人がいる。だが、その恋人のヤンデレは自分には発動しないようで…? 他の女の子にヤンデレを発揮する恋人に玲は限界を感じていた。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...