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 説明を求めて尚人たちを振り返った。尚人が、静かに口を開いた。

「黒崎くんはね、目撃した……たぶん、そこにいた親子連れの人だと思うけど。その人たちの話によると、晃良くんが川に落ちてすぐ晃良くんを助けようとして飛び込んだみたい」
「え……川に?」
「うん。左腕が使えない状態で、それでも晃良くんに向かって必死に泳いでたみたい。で、晃良くんが大きな岩にぶつかって、動かなくなって沈みそうになる直前に、黒崎くんが追いついて、晃良くんを抱え上げたらしい」
「黒崎が……」
「だけど、川の流れが強くて黒崎くんも押される形で岩に着いたから、そんとき、黒崎くん自身も頭を打ったみたいだったって」
「…………」
「頭から血が流れてたって。それでも、晃良くんを抱えて、そこから川岸までゆっくりだけど近づいていって、なんとか2人とも流されずに済んだみたい」
「そんな……」
「着いてすぐ黒崎くんも動かなくなって、見てた人もパニックになったんだけど、すぐにふもとから人が来てくれて救急車手配してくれたんだって」
「…………」

 理解が追い付いてこなかった。黒崎が自分を助けるために飛び込んだ? 雨で増水した濁流の中を? 下手をしたら自分だって溺れてしまうかもしれないのに。しかも、撃たれて自由の利かない左腕なしで泳ぐなんて。自殺行為もいいところだ。

 からからになった喉で、なんとか言葉を絞り出した。

「……くろさきは……」
「……頭の傷は大丈夫。晃良くんと一緒で切れたみたいだけど、その傷自体は治るものだって。ただ……」

 そこで、尚人が言葉を切った。どう言おうかと考えているような表情をした。涼がその後を続ける。

「黒崎くん、岩に頭ぶつけたとき、脳しんとう起こしたんじゃないかって。晃良くんはぶつけたって言うよりは岩の角で切った感じだったから大丈夫だったみたいだけど、黒崎くんの場合は、岩にそのまま頭を打ち付ける形になったらしくて。そんな状態でよくすぐ気を失わなかったなって医者もビックリしてたらしいけど……。検査の結果、脳に出血等は見られなかったから損傷はないみたいなんだけどさ……。ずっと意識が戻らなくて。医者の話だと、脳しんとうの程度にもよるらしいんだけど、このまま意識が戻るかどうかもわからないし、意識が戻ったとしても何か障害が残る可能性があるって」
「障害……?」
「うん……。頭痛やめまい、あと……記憶障害」
「……それって……」
「……昔の、晃良くんと同じような状態みたいらしい」
「…………」

 頭が真っ白になった。何も考えられなかった。自分のせいで。自分を助けるために。

 手が自然と震え出す。

「どうしよう……俺……」
「晃良くん……。まだ、何か起きるって決まったわけじゃないから。最悪の状態だとそれってだけで。何の障害もなく意識が戻ることもあり得るんだし」
「……意識が戻らなかったら?」
「…………」
「黒崎の意識がこのまま戻らなかったら……俺……」

 どうしよう。

 体がふらついた。涼が咄嗟とっさに晃良の体を支える。

「晃良くん……」

 しばらく誰一人声を出さず、その場に立っていた。こんな状況など全く自分には関係ないとでもいうように、穏やかに眠り続ける黒崎をただ見つめていた。
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