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 尚人と涼の説明によると、晃良と黒崎は暴漢に襲われて負傷した被害者という扱いで、襲ってきた4人組はその場で銃刀法違反および、傷害罪で逮捕されたらしい。それを聞いて、黒崎はあのとき、日本で事件を起こすことの面倒さも咄嗟とっさに判断して、男を殺さないように急所を僅かに外して銃を撃ったのだな、とわかった。現場に居合わせたあの親子連れが、晃良たちは危険を回避するために反撃に出たと証言してくれたらしく、2人とも正当防衛が認められたそうだ。

 今回、黒崎関連の事件だったのもあり、裏でアメリカ側と何か交渉があったのもあるだろう。公には、観光客が外国人強盗集団に襲われて負傷、という発表がされたらしい。4人組の顔や名前は公表されているため、わかる人間にはこれが、黒崎(アメリカ)へ恨みを持つ国の国際的、政治的絡みの事件だったとわかるだろう。今回、わざと突発的な事件として処理したことは、アメリカ側の「今回は濁してやったけれど、今度あったらただじゃ済まさない」という裏メッセージが込められているらしかった。これで、少しは黒崎の身の危険が軽減されるといいのだが。

 しかし、晃良には事件のことよりも、黒崎自身のことが気になってしかたがなかった。尚人と涼に尋ねる。

「なあ。事情徴収の前に黒崎に会えないかな」
「……会えるとは思うけど……。だけど、先に事情聴取した方がいいんじゃない? 晃良くんの目が覚めるのずっと待ってたし」
「そうなの?」
「うん」

 そのタイミングで、今度は警察官と思われる男2人が現れた。結局そのまま事情聴取が始まった。晃良も元警察官であるし要領は得ているので、事情聴取はすんなりと終わった。警察官たちが退室すると同時に起き上がり、ベッドから降りる。

「晃良くん?」

 廊下で待機していた涼と尚人が病室に入ってきて、立ち上がっている晃良を見た。

「黒崎のところへ連れていってくれ」
「…………」

 2人は顔を見合わせて視線を交わした後、同時に晃良へと向いた。涼が静かに口を開いた。

「わかった」

 廊下を進む度に、段々と不安が大きくなっていく。気持ちは焦るのに。脚が追いつかない。何が起きたのか、これから何が起こるのか見当も付かないまま、尚人と涼に連れられて晃良の病室と同じ階の反対側へと移動する。一番奥の部屋の前に辿たどり着いた。名札には何も書かれていなかった。

 ちらっと尚人と涼を見る。2人が同時にうなずいた。

 一呼吸置いてから、ドアをノックする。応答がなかった。

「有栖くんと、黒崎くんのご両親がいるはずなんだけど。どこか行ってるのかも」

 そう言われて、そっとドアのノブをつかんで開けた。一歩部屋に入り、目の前に飛び込んできた光景に一瞬足を止めた。

 黒崎?

 黒崎はそこにいた。しかし、起き上がることもなくベッドに横たわったままだった。頭に怪我をしたらしく包帯が巻かれている。

 ゆっくりと黒崎に近づいていく。かすれた声で小さく黒崎を呼んだ。

「……黒崎?」

 黒崎は目をつむったままで何の反応も示さなかった。穏やかな表情で、ただ眠っているようにも見える。
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