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This is the moment ㉙

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「「晃良くんっ!」」

 ゆっくりと意識が覚醒し、目を開けると。一番に聞こえてきたのは、馴染なじみのあるあの2人の声だった。病院特有の匂いが晃良の鼻先から入ってくる。声がした方向へぼんやりと目を向けた。

「尚人……涼……」
「ちょっと、本当になんだよ、もうっ! 心配したんだからな!!」
「良かった……晃良くん……」
「なんで、いんの?」
「はあ?? 晃良くん何言ってんの!! 晃良くんが襲われて川に落ちて病院運ばれたって連絡きたから仕事全部キャンセルして飛んできたんだって!!」
「……落ちた?」
「そう。橋から落ちて、そのまま流されて、岩で頭打って、意識失ってたんだって」
「晃良くん、3日間も寝たままだったし、凄ぇ心配したんだからなっ」
「……3日……」

 段々と思い出してきた。そうだ。自分は黒崎と一緒に男たち4人組に襲われて、黒崎が助けてくれた直後に川に落ちたのだ。

 そこで、黒崎の気配が病室のどこにもないことに気づく。

「黒崎は?」

 そう尋ねると、尚人も涼も急に言葉を止めて黙り込んだ。嫌な予感がした。

「なあ、黒崎は? どうした??」

 無理やり体を起こそうとした途端、めまいがした。手で頭に触れると、包帯が巻かれているのに気づく。尚人が慌てて晃良を支えようと椅子から立ち上がって近づいてくる。

「晃良くん、そんな急に起き上がったらダメだって! 頭怪我してるし、まだ目が覚めたばかりなんだから!」
「俺、誰か呼んでくる」

 涼が素早く立ち上がると、病室を出ていった。

「尚人。黒崎はどうした? 何があった? なんでいないんだよ」

 たたみかけるように尚人を問いただすと、尚人が困ったような顔をして晃良を見た。

「……黒崎くんもいるよ」
「どこに??」
「ここにいるんだけど……今、晃良くんには会えない状態で……」
「……どういうこと?」
「…………」

 尚人はなんと説明してよいのか迷うような表情を見せて黙った。尚人の服を強くつかむ。

「尚人っ!」
「……黒崎くんも入院してる。運ばれて」
「……撃たれたところ……酷かったのか?」
「……出血は多かったけど、撃たれたところは大した傷じゃなかったみたい」

 そう聞いてほっとする。良かった。だけど。じゃあ、なぜ会うことができないのだろう。

「なんで、会うことができないんだ?」
「……厳密に言えば、会うことはできると思うけど……」
「……説明してくれる?」
「……やっぱり説明するより、直接会った方がいいかもしれない」

 そこへ、涼に連れられて医者と看護師が病室に入ってきた。一通り体をチェックされ、質問を受ける。どうやら自分は頭に切り傷を負っただけで、他に異常もなく、数日で退院できるということだった。ただ、これから警察との簡単な事情聴取が待っていた。
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