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Ready to fight ①

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 凍えるような寒さの冬を越えて、少しずつ暖かな日が増えてきた3月。晃良のいつもの1日が、いつものように始まる。

 定時に起きて、すぐに服を着替える。今日は休みの日なので、仕事着の黒スーツではなく、ジーンズに薄手の長袖ニットを身に着けた。自室を出てリビングへと向かうと、珍しく涼がすでに起床して、ダイニングテーブルで牛乳をすすっていた。涼は昔から起きたらまず牛乳を必ず飲む。コーヒーなどの苦い飲み物は苦手で、甘ったるいジュースや乳製品が好きらしい。偏食なのもあって食べ物の好みが煩いのだが、いくら言っても嫌いな物は食べないので、もう小言は言わないことにした(尚人はまだ言っているようだが)。

 テレビでは契約している有料チャンネルの国際ニュースが流れている。これはいつものことだ。

「おはよう」
「おはよう」
「早いな」
「ん。今日集合が早いんだよ」
「そうか。大変だな」
「その代わり昼までだけどな。晃良くんは休みだろ?」
「うん。2週間ぶり」

 涼と会話を続けながら、キッチンに立ってコーヒーをれる。尚人は仕事や特別な用事がない限り、朝早く起床することはない。確か今日は午後から仕事だったはずなので、まだベッドの中だろう。

 仕事は忙しかったが、ここのところ平和な毎日が続いていた。相変わらず黒埼からは毎週花束が届くし、電話やらメールやら、気まぐれに連絡もあった。黒埼と再会して約半年。そんな日々が当たり前なものに変わりつつあった。晃良にとって、それが喜ばしいことなのかはよく分からなかった。

 前月のことで、隠しておきたかった晃良の黒埼に対する気持ちは、尚人と涼(と有栖)に露見してしまったのだが(黒埼は晃良の気持ちは自分にあると初めから疑っていないストーカー野郎なので置いておく)、それでも晃良は変わらず否定し続けることを徹底していた。
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