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Just the way it is ⑦

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『しょっちゅう来てたし。ジュンと。よく色んなところ行ってるから』

 黒埼とこのレストランへ来た時、黒埼は有栖としか来ていないようなニュアンスでそう言っていた。その際、晃良の中でに落ちない感じがしたのだが、今、分かった。それは、おそらく黒埼がうそをついていたからだ。誤魔化すような気配を晃良が敏感に感じ取ったのだろう。

 それは、思いのほか晃良にショックを与えた。

 なんでうそつくわけ?

 それに。晃良をずっと想っていたと言っていたが、結局のところ、他にも相手がいたわけだ。その相手は頻繁に変わっていたみたいだが。こんな高級なレストランに何でもない相手と来るわけがないし。晃良にストーカー行為を働いている一方で、他の誰かともちゃんと遊んでいたのだろう。

 もちろん、晃良と再会する前のことのようだし、いくら晃良にれていたとしても20代の男が性欲を我慢できるわけがない。だから、他で経験があることがおかしくないのは分かっている。分かってはいるのだが。

 晃良の中に生まれた重い塊が、さらに沈んでいくような気がした。

「晃良くん、大丈夫?」

 ここ数日、尚人が晃良に対して何度もする問いかけを、また口にした。

「……大丈夫だけど。ちょっと、びっくりした」
「でも、晃良くんに会う前のことだし。まだどの人とも関係があったって決まったわけじゃないしね」
「そうそう、まあ確かにそれが事実だったら、黒埼くん、いい加減な奴だとは思うけどな」
「別に……黒埼がいい加減だろうとなんだろうと俺には関係ないけど……」
「……晃良くん。関係ないって言う割には凄く暗い顔になってるよ」
「あの……何か余計なことを言ってしまったみたいで……申し訳ありません」

 そこで、先ほどから晃良たちの様子をうかがっていた店員が、申し訳なさそうに頭を下げた。そんな店員に、晃良は慌てて言葉を返した。

「いえ、本当に全然大丈夫なんで。気にしないで下さい。聞いたのは俺らの方ですし」

 涼の交代時間が迫っていたので、それ以上はゆっくり会話ができそうもなかった。慌ただしく精算を済ませ、何度も謝る店員をなだめながら外へと出た。

「じゃあ……また、後で」

 涼が少し心配そうにこちらを見て、仕事に戻っていった。その涼の背中を見送って、何気なく空を見上げた。

 先ほどまで快晴だった空に、黒い雲が広がって、今にも雨が降り出しそうだった。まるで今の自分の気持ちを表しているかのような空模様だな、と心の中で苦笑いした。
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