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Just the way it is ⑤
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晃良は自分のことに関してはかなり無頓着なのだが、服装はその極みにある。そのため、尚人(もしくは涼)の好きなブランド店での買い物に付き合うついでに、店員や尚人たちに自分の服も見繕ってもらったりしている。この日もそんな風に過ごして、何件か店を回った。
「結構、買っちゃったな」
「そうだな。まあ、久しぶりにゆっくり買い物できたんだから、いいんじゃねぇの?」
「晃良くんももっと買ったら良かったじゃん。なかなか買い物する機会ないでしょ?」
「ん……なんか、いいなっていうのがあんまりなかったわ。選んでもらっといて申し訳ないけど」
「そんなの別にいいけど。まあ、そういう時もあるよね。買い物モードじゃなかったんじゃない?」
「そうかもな」
「そういや、晃良くん、誕生日もうすぐじゃん。なんか欲しいものある?」
「いいって、そんなの。俺、物欲ないし」
「えーでも、せめてお祝いしようよ~」
「お祝いもいいって」
自分でもすっかり忘れていたが、今月末は晃良の誕生日がある。しかし、三十路も近くなって自分のためにわざわ ざ祝ってもらうのが申し訳なくなって、ここ最近は断り続けている。でも結局、なんやかんやで毎年2人ともいつもプレゼントを用意してくれるのだ。
祝うかどうかの押し問答をしつつ時刻を確認すると、ちょうど昼過ぎだった。尚人とどこかでランチをしようと相談していたところで、ふと思い出した。
あ、この辺って黒埼と行ったイタリアンの店の近くじゃね?
黒埼と初めてデート(と黒埼が思っている)した時、黒埼に連れてきてもらったイタリアンレストランがこの近くにあったはずだった。洒落た店だったので、常連でもない晃良が予約もせずに入れるか分からなかったが、あの美味かったパスタを尚人にも食べさせてやりたくなった。
尚人に話すと、ダメ元で行ってみようということになり、とりあえずそのレストランを目指した。そこで、涼の仕事場もこの近くだったことを思い出して、一応声をかけてみた。すると、ちょうどよいタイミングで交代になったらしく、涼も合流することになった。
「いらっしゃいませ」
レストランに着くと、見覚えのある初老の店員が迎えてくれた。晃良を見た途端、ああ、という顔になって笑いかけてきた。
「先日は黒埼様とご来店いただきありがとうございました」
「覚えていてくれたんですか?」
「もちろんでございます。黒埼様はよくご利用していただきますし、お客様も素敵な方だったので」
「いや、そんな……でも、あの……ありがとうございます。それで、予約をしてないんですけど、大丈夫でしょうか? 後からもう1人来るんですけど……」
「大丈夫です。常連様用に常に個室は何室か用意させていただいていますので。ご案内致します」
個室へ案内される途中、すっごい洒落た店だね。と尚人が小声で晃良に耳打ちしてきた。
個室は、黒崎と前に訪れた時と同じ場所だった。4人ぐらいまで十分入れそうな、ゆったりしたスペースに、洋風のテーブルと椅子が設けられている。壁にはおそらく価値が高いのだろうなと予想できる絵画が飾られていた。前回は落ち着かなくてインテリアまで見る余裕もなかったが、こうして改めて眺めると、ここは本当に金持ち対象の店なのだと実感する。
手渡されたメニューを眺めているところへ、涼も合流した。店の高級な雰囲気に驚いたような顔をして、晃良たちのいる個室へと案内されてきた。
「なにここ。凄え高そうじゃん。晃良くん、よくこんな洒落たとこ知ってたな」
「この前、黒埼と来た」
「へぇー、黒埼くんってやっぱ金持ちなんだな」
「結構、買っちゃったな」
「そうだな。まあ、久しぶりにゆっくり買い物できたんだから、いいんじゃねぇの?」
「晃良くんももっと買ったら良かったじゃん。なかなか買い物する機会ないでしょ?」
「ん……なんか、いいなっていうのがあんまりなかったわ。選んでもらっといて申し訳ないけど」
「そんなの別にいいけど。まあ、そういう時もあるよね。買い物モードじゃなかったんじゃない?」
「そうかもな」
「そういや、晃良くん、誕生日もうすぐじゃん。なんか欲しいものある?」
「いいって、そんなの。俺、物欲ないし」
「えーでも、せめてお祝いしようよ~」
「お祝いもいいって」
自分でもすっかり忘れていたが、今月末は晃良の誕生日がある。しかし、三十路も近くなって自分のためにわざわ ざ祝ってもらうのが申し訳なくなって、ここ最近は断り続けている。でも結局、なんやかんやで毎年2人ともいつもプレゼントを用意してくれるのだ。
祝うかどうかの押し問答をしつつ時刻を確認すると、ちょうど昼過ぎだった。尚人とどこかでランチをしようと相談していたところで、ふと思い出した。
あ、この辺って黒埼と行ったイタリアンの店の近くじゃね?
黒埼と初めてデート(と黒埼が思っている)した時、黒埼に連れてきてもらったイタリアンレストランがこの近くにあったはずだった。洒落た店だったので、常連でもない晃良が予約もせずに入れるか分からなかったが、あの美味かったパスタを尚人にも食べさせてやりたくなった。
尚人に話すと、ダメ元で行ってみようということになり、とりあえずそのレストランを目指した。そこで、涼の仕事場もこの近くだったことを思い出して、一応声をかけてみた。すると、ちょうどよいタイミングで交代になったらしく、涼も合流することになった。
「いらっしゃいませ」
レストランに着くと、見覚えのある初老の店員が迎えてくれた。晃良を見た途端、ああ、という顔になって笑いかけてきた。
「先日は黒埼様とご来店いただきありがとうございました」
「覚えていてくれたんですか?」
「もちろんでございます。黒埼様はよくご利用していただきますし、お客様も素敵な方だったので」
「いや、そんな……でも、あの……ありがとうございます。それで、予約をしてないんですけど、大丈夫でしょうか? 後からもう1人来るんですけど……」
「大丈夫です。常連様用に常に個室は何室か用意させていただいていますので。ご案内致します」
個室へ案内される途中、すっごい洒落た店だね。と尚人が小声で晃良に耳打ちしてきた。
個室は、黒崎と前に訪れた時と同じ場所だった。4人ぐらいまで十分入れそうな、ゆったりしたスペースに、洋風のテーブルと椅子が設けられている。壁にはおそらく価値が高いのだろうなと予想できる絵画が飾られていた。前回は落ち着かなくてインテリアまで見る余裕もなかったが、こうして改めて眺めると、ここは本当に金持ち対象の店なのだと実感する。
手渡されたメニューを眺めているところへ、涼も合流した。店の高級な雰囲気に驚いたような顔をして、晃良たちのいる個室へと案内されてきた。
「なにここ。凄え高そうじゃん。晃良くん、よくこんな洒落たとこ知ってたな」
「この前、黒埼と来た」
「へぇー、黒埼くんってやっぱ金持ちなんだな」
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