変態ストーカーの専属BGにはなりません！

Going out with you ⑯

　たこ焼きを１パックと、美味しそうだったのでついでに焼きそばも１パック買った。どこかで食べようと座る場所を探していると、広場から少し離れた木々に囲まれたところで、なにやら男の子たちが言い合いをしているのが見えた。

　あ。

　よく見ると、さっき射的の店にいた小学生たちだった。二手に分かれてなにか揉もめているようだ。二組の内一組は、あのぬいぐるみを欲しがっていた可愛らしい男の子と背の高い男の子の二人組だった。状況からして、背の高い男の子が、もう１人の小さな男の子を後ろにかばって、２、３人の集団と対峙たいじしているらしかった。

　気になって、そちらへと足を向ける。

「アキちゃん？」

　黒埼が怪訝けげんそうにしつつも晃良に付いてきた。少し離れた木の影から様子を伺う。小さい方の男の子は泣きながらその場にしゃがみ込んでいた。その足下にたこ焼きがいくつも散らばっている。

「こいつに構うな」
「はぁ？　構ってなんてねえよ。気持ち悪いって言っただけだよ。女みたいにすぐ泣くし。お前の後ばっかりくっついて。あいつ、お前のこと好きなんじゃねーのか」
「……ほっとけ」
「あれ？　もしかしてお前も好きなんじゃねーの？　うわぁ、男同士で気持ち悪ぅ」

　集団の男の子たちが、気持ち悪ぅ、とからかうように連呼し始めた。背の高い男の子の方は、拳を握りしめて、どうしようか迷っているようだ。今にも殴りかかりそうな雰囲気を全身に醸し出してはいるが、ぐっと耐えるような顔をしてその集団を睨にらみ付けている。

　晃良は迷わず踏み出した。が、肩をぐっと掴まれて、静止する。

「黒埼？」

　肩を掴つかんだ黒埼が、たこ焼きと焼きそばの入った袋を地面に置き、そのまま晃良の隣をすり抜けて少年たちの方へ歩いていった。

「ちょっと、お前ら」

　黒崎が集団に声をかけると、少年たちが驚いた顔で黒埼を見た。一瞬ひるんだような顔を見せたが、その集団の中心らしき少年が黒埼を睨にらんで声を上げた。

「なんだよ、おっさん」
「……おっさん？」

　黒埼が速攻で不機嫌になるのがわかった。

「おい、お前。今、なんて言った？」
「え？　だから、なんだよ、おっさんって……」
「おっさん？？　どこが、おっさんだっ！！　お兄さんだろうがっ！！　こんなまだまだ若い男前つかまえといておっさんじゃねぇだろ！」

　おいおい、キレるポイントそこ？？

　晃良は心の中でツッコみを入れる。やっぱり自分が間に入った方がいいのではないか。迷ったが、黒崎がこういった他人事に自ら関わろうとするのは珍しい気がするし、とりあえずもう少し様子を見てみようと見守ることにする。

　突然わけのわからないことでキレ出した黒埼を見て、子供たちが怯おびえているのがわかった。

　黒埼はキッとおっさん呼びしてきた子供を睨にらみ付ける。

「お前さぁ、あの子のこと好きだろ？」

　黒埼の一言に、その男の子は一瞬で顔が真っ赤になった。背の高い男の子も、泣いていた男の子も驚いて黒埼を見上げる。

「ほんと、素直じゃないのも可愛くないし、好きな子にどうしようもできねーから苛めようっていうその根性も最低だな、お前」

　そう言われて、さっきまで威勢の良かったその男の子は、泣きそうな顔をして俯いた。

「そんな最低な自分は、この子らをからかう資格もない。こっちの奴みたいに何言われても堂々とできるぐらい男前になってから出直してこい」

　そう言って黒埼が顎で背の高い男の子を示した。

「そんで、ついでに、かっこいいイケメンのお兄さんをおっさんと思うそのずれた美的感覚も直してこい」

　いや、それは美的感覚の問題じゃないだろ。

　と、晃良は再び心の中でツッコんだ。30代手前の男なんて、小学生からしたら十分おっさんではないのか。