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Going out with you ⑫

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 黒埼は少し考えるような表情をした後、ニヤリと笑って晃良を見た。

「やっぱ、教えられないかなぁ。怒られるし」
「……お前、なんでニヤついての?」
「でもぉ。アキちゃんが俺の家族になってくれたら、教えてもいいよ」
「は?」
「アキちゃんを信用してないわけじゃないけど。やっぱり関係ない人間には教えられないし。だけど、アキちゃんが俺の専属ボディーガードになってくれて、そんでついでに俺と結婚とかしてくれたら、もう隠す必要もないし」
「……じゃあ、教えてくれなくていい」
「なんで? あんな興味ありそうだったくせに」
「てかさ、お前、そんな国家の極秘案件を簡単に漏らそうとしていいのかよ。結婚しようがなんだろうが、ダメだろ、そんなあっさりは」
「まあ、国家の極秘案件……と言われればそうなのかな。だけど、あと数年したら関係なくなると思うし」
「それ……あと数年で使用されるってことか?」
「え? うーん、どうだろ? まだできるかもわからないし。研究段階だから」
「……よく見えねぇな、実態が」
「そう? そんな複雑じゃないけど。だけど、今は極秘事項には変わんないから。知りたい奴いっぱいいるみたいだけどな」
「まあ、そうだろうな。だからお前、要人になってるわけだし」

 そこで、会話に集中し過ぎてパスタをフォークに巻いたまま手が止まっていたことに気づいた。温かい内にと口に運ぶ。

 うまっ。

 そのあまりのうまさに驚いた。晃良が注文したのはトマトベースのスパゲティーパスタだった。具材には旬の野菜とベーコン、あとはモッツラレラチーズがふんだんに使われている。それぞれの素材の旨味がしっかり伝わってきて、そこにモッツアレラチーズの優しい味が絶妙なバランスでアクセントになっている。

「凄ぇ、うまいんだけど」
「食材とかかなりこだわって、手間暇かけて作ってるらしいから」
「なるほどな」

 その後、晃良は、黒崎と会話をするという本来の目的をそっちのけで、パスタを夢中で食べ進めることになった。黒埼も、そんな晃良をうれしそうに見ながら箸を進めていた。

 結局そのまま大して会話もせずに、パスタを食べ終えてしまった。それに気づいた晃良はこれではいけないと、のんびりとデザートを待つ間、質問を再開した。

「表向きの研究は何してんの?」
「ああ、脳関係の研究」
「……さすがインテリだな」
「そう?」
「お前って、研究所に勤めてんだろ? 立ち位置ってどこら辺なの?」
「俺? 今はマネージャーだけど」
「それって凄いんじゃねぇの?」
「どうだろ? 他にもマネージャークラスはいっぱいいるし、そうでもないと思うけど。まあ、一応、所属研究室のトップだから、あんまり怒られないのはいいけど」

 その代わり、下から凄ぇ文句言われてそうだな。

 勝手に抜け出したり、我儘わがままを言ったり、好き放題している姿が目に浮かぶ。有栖が上手くフォローしているのだろうが、有栖がいなかったら黒埼はかなりの敵を作ったに違いない。

 黒埼は昔からこんな我儘わがままし放題な性格だったのだろうか。養子に出されたとき、黒埼の養父母はなぜ黒埼を選んだのだろう。

「なあ。お前の養父母ってどんな人たちなの?」
「ふつうのアメリカ人のおじさんとおばさん」
「だけど、大富豪なんだろ?」
「まあ……何個か会社は持ってるよ。政界の知り合いも多いみたいだし。俺もよくパーティーとか付き合わされる」
「いい人たちか?」
「そうだな。俺がやりたいことは何でもさせてくれたし。医者になりたいって言ったときも、軍に入りたいって言ったときも、反対は一切なかったし」
「そうなのか」
「ん。だから感謝はしてるよ。全く血もつながってない自分をちゃんと育ててくれたから」
「……そうか」
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