変態ストーカーの専属BGにはなりません！

Going out with you ⑤

　そこでふと疑問に思う。

「お前、俺の予定も確認せずに急に来たけど、今日仕事休みじゃなかったらどうするつもりだったわけ？」
「だけど、アキちゃん休みだったんでしょ？　ならいいじゃん」
「はあ……」

　晃良が２日連続で休みを取れるのは本当に久しぶりなことだったが、そこに合わせてタイミングよく黒埼が来るなんて偶然あるだろうか。誤魔化されたような何ともすっきりしない黒埼の回答だったが、起きたばかりの晃良の頭では、それ以上深く追求することは面倒だった。そこで、疑問は一旦置いておくことにした。

「とりあえず、俺、今起きたばかりだから。リビングで待ってて」

　そう言って黒埼をリビングに通すと、自室に戻って適当に服を選んだ。寝間着代わりに着ていた長袖のTシャツとスウェットのパンツを脱ぐ。下着１枚になったところで動きを止め、はぁ、と大きく溜息ためいきを吐いた。

「おい。バレてるから」
「あ、ほんとに？」

　別に隠れて見てたわけじゃないけどぉ、と言いながら寝室の入り口に黒埼が現れた。

「俺の裸はもう見ただろ」
「いいじゃん、何回見ても。アキちゃんの体、飽きないし」
「……お前、その誤解の生まれるような言い方やめろ。お前とヤったことないだろ」
「そしたらヤる？　今から」

　そう言って、黒埼が晃良に近づいてきた。黒埼との距離を保つため、下着姿のままじりじりと後ずさりをする。

「ヤらねーって！！」
「えー、だけど、もうヤったようなもんじゃん。最初に会ったとき、アキちゃんイかせたし」
「あれは無理やりだろ！　合意じゃねぇし、挿れられてねぇし！　ヤったことにはなんねーから！」
「指は挿れたよ、ラブホで」
「あんなの、挿れたに入るか！　半分、拷問だっただろ！」
「拷問じゃないって。お仕置きね」
「どっちでもいいわ！　とにかく、お前とはヤらない」
「……アキちゃん。なんでそんなに俺とヤりたくないの？」
「それは……」

　そう聞かれて言葉に詰まる。確かに、なんで、と言われるとよくわからない。ただ、黒埼の最初の印象が最悪だったので、そういう対象になるわけがない、いや、絶対ならないっ、と頑なに思ってはいた。それに、出会って数ヶ月で生まれたこの黒埼に対する情と、恋愛感情は別だと思っている（思いたい）こともある。

　だからこそ、その辺のけじめというか、線引きを意地でもしたいところがあるのかもしれない。しかしそんなことを黒埼に正直に言ったところで、ツンデレだの（デレた覚えは決してないが）、素直になれないだけだの、黒崎が都合よく解釈するだけで、きっと晃良に迫ることを止めさせることはできないだろう。