太陽、時々悪魔

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別れのセックスなのに

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「井上?」

 怪訝な顔で井上の動きを追う。井上はくるりと反転してこちらを向くと、再び桜井の体に跨がって腰を下ろした。右手で桜井の自身を後ろ手に掴むと、再び井上の中に導いた。奥に入ったな、と思った途端、井上が腰を上下に動かし始めた。桜井を再び快感が襲う。井上が喘ぎ始めた。

「あっ、あっ、はっ……あっ……」
「ん……ちょ……井上?」
「いいから……ん……疲れたんだろ?……俺が……あっ、あっ……やるわ」

 いままで数え切れないほど井上と交わってきたが。こうして対面で重なり合うのは初めてだった。いつも大抵後ろからするか、横からするか。正常位もあるにはあったが、抱き合うような体勢にはならず距離を取ったまま済ませることが常だった。別にそうしようと決めたわけではないのに、なぜか2人とも正面から密着し合うのは避けてきた。

 井上の理由は知らないけれど。桜井がこういった体勢をなんとなく避けてきたのは、たぶん、井上との距離が近くなりすぎて、逃げ場がなくなる感じがしたからだ。心も、体も。

 だから、なぜ今夜、井上がこの体位を選んだのか。その意味を、桜井は知りたくもあり、知りたくもなかった。

 桜井の上で腰を動かす井上を見上げる。井上が瞑っていた目を開いた。視線が絡み合う。井上の右手が桜井の頭を撫でた。こんなに近くで井上と見つめ合ったことがあっただろうか。

「桜井……」

 井上が微笑んだ。その笑顔に微笑み返して両腕を井上の背中に回す。ぐっと力を込めた。井上が落としてきたキスを受け止める。優しく啄むようなキスを繰り返した。その間もゆっくりと井上が腰を動かした。

 穏やかだが、激しい熱がじわじわと井上と繋がったところから広がっていく。

 自分たちは一体なんなのだろう。

 最後なのに。これは別れのセックスなのに。一旦交われば、まるで愛し合う恋人同士のような交わり方をしてしまう。自然と笑い合い。自然と甘くなる。

 キスを続けながら、右手で井上の自身を掴んだ。びくっと井上の体が震えた。先走りが流れる井上の自身を力を入れて扱く。井上が堪らず唇を離して訴えた。

「あっ、桜井っ、そっちもされたら……もっ……あっ……あっ……」
「イったらいいじゃん」
「あっ……あっ……」
「ここ?」

 そう言って、左手で井上の肩を掴んで角度を調整しつつ腰を突き返した。例の敏感な箇所に擦れるように動かす。

「んあっ……そこっ……ちょっ、も、ダメっ、あっ、あっ、イっ、あああっ……」

 掠れた声で井上が振り絞るように叫んだ。と同時にびくびくと腰辺りが痙攣する。井上の自身からも欲が飛び出して、2人の間に飛び散った。
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