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鏡越し
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鏡越しに笑顔のない井上の顔が見えた。少し黙った後、井上がおもむろに脱げかかっていたジーンズを下着と一緒に引きずり下ろした。靴下もさっさと脱いで脇に投げ置いた。そして桜井の胸に体を預けて両脚を開いた。
「……これでいいか?」
言ってしまいそうになったことを後悔した。そんなこと言わなくても。どうせ終わるのだから。まるで自分がそれを理由に井上に無理を強要しているような気がした。嫌だとは言えない井上に。
「……やっぱ、いい。ベッド、行こ」
「……なんで?」
「だって、嫌だろ? 井上」
「……いいよ」
「え?」
「嫌じゃないから」
「だけ……」
井上が顔だけ振り向かせて、言葉を発していた桜井の唇を塞いだ。
もう、なんにも言うな。
そう言われている気がした。そのまま舌を絡ませて、再び井上の体へと手を這わせた。左手は胸を攻め、右手は井上の股へと伸ばした。内腿をゆっくりと撫でた後、井上の自身を掴んで優しく愛撫した。
「はっ……あっ……」
執拗に愛撫を受けていた井上の体は少しの刺激でも敏感に反応した。桜井が首筋に舌を這わせる度。左手で胸の突起を転がす度。右手の指先で先をゆっくりと擦る度。井上の体はびくびくと小さく波打って、井上の口から吐息が漏れた。
両手の動きは緩めずに井上の右耳を再び舌で舐め回しながら、ふと前方に立てかけてある姿見を見た。
鏡の中の井上と目が合った。見つめ合ったまま、桜井は両手に軽く力を入れた。
「んあっ、あっ……はぁっ……」
いつもの井上なら。桜井が強く攻めるとその攻めに耐えられなくなって逃げようとすることが多いのに。
井上は声を上げながらも桜井から目を逸らさなかった。快感に耐えるというよりは。まるで何かと戦っているかのように。挑戦的な視線で。
その視線に負けず嫌いな桜井の征服欲が掻き立てられた。
「井上、準備した?」
そう言って、井上の自身を握っていた右手を井上の股深くに伸ばした。孔の周りに軽く触れる。桜井はふっと笑って井上の耳元で囁いた。
「すげぇ、開いてる」
「……お前が来る時はいつもしてるから。念のため」
「念のため?」
桜井は口角上げて、鏡の中の井上に笑いかけた。
「お前と俺がここで会って、ヤらなかった日なんてないだろ」
ヤるために、会ってたんだから。
そうだ。こいつの誘うような笑顔に引き寄せられて。井上の喘ぐ顔が見たくて。井上のことしか考えられなくなって。
こいつに会った瞬間から。こいつを自分の物にしたいって、強く思う。いつも。
「……これでいいか?」
言ってしまいそうになったことを後悔した。そんなこと言わなくても。どうせ終わるのだから。まるで自分がそれを理由に井上に無理を強要しているような気がした。嫌だとは言えない井上に。
「……やっぱ、いい。ベッド、行こ」
「……なんで?」
「だって、嫌だろ? 井上」
「……いいよ」
「え?」
「嫌じゃないから」
「だけ……」
井上が顔だけ振り向かせて、言葉を発していた桜井の唇を塞いだ。
もう、なんにも言うな。
そう言われている気がした。そのまま舌を絡ませて、再び井上の体へと手を這わせた。左手は胸を攻め、右手は井上の股へと伸ばした。内腿をゆっくりと撫でた後、井上の自身を掴んで優しく愛撫した。
「はっ……あっ……」
執拗に愛撫を受けていた井上の体は少しの刺激でも敏感に反応した。桜井が首筋に舌を這わせる度。左手で胸の突起を転がす度。右手の指先で先をゆっくりと擦る度。井上の体はびくびくと小さく波打って、井上の口から吐息が漏れた。
両手の動きは緩めずに井上の右耳を再び舌で舐め回しながら、ふと前方に立てかけてある姿見を見た。
鏡の中の井上と目が合った。見つめ合ったまま、桜井は両手に軽く力を入れた。
「んあっ、あっ……はぁっ……」
いつもの井上なら。桜井が強く攻めるとその攻めに耐えられなくなって逃げようとすることが多いのに。
井上は声を上げながらも桜井から目を逸らさなかった。快感に耐えるというよりは。まるで何かと戦っているかのように。挑戦的な視線で。
その視線に負けず嫌いな桜井の征服欲が掻き立てられた。
「井上、準備した?」
そう言って、井上の自身を握っていた右手を井上の股深くに伸ばした。孔の周りに軽く触れる。桜井はふっと笑って井上の耳元で囁いた。
「すげぇ、開いてる」
「……お前が来る時はいつもしてるから。念のため」
「念のため?」
桜井は口角上げて、鏡の中の井上に笑いかけた。
「お前と俺がここで会って、ヤらなかった日なんてないだろ」
ヤるために、会ってたんだから。
そうだ。こいつの誘うような笑顔に引き寄せられて。井上の喘ぐ顔が見たくて。井上のことしか考えられなくなって。
こいつに会った瞬間から。こいつを自分の物にしたいって、強く思う。いつも。
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