太陽、時々悪魔

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焦らした分焦らされる

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「ちょっ、急に触んなって」
「お前がいつまでも焦らすからじゃん」
「あ、バレてた?」
「バレるもなにも、こんな長いこと乳首だけ弄られてたら誰だって焦らされるっていうか、腹立つだろ」
「だったら、言ったらいいじゃん」
「だから、今、言ってんだろーが!」

 井上が怒りに任せて右手に力を入れた。

「いたっ! 力入れるなって!」
「さっさと進まねーなら、お前の可愛い息子を再起不能にしてやる」
「ガラわりーな……どこの組のやつだよ、お前は」
「井上組」

 そんな返し要らねー、と思いながら、拗ねた顔でこちらを睨む目の前の男を見る。

 全くこいつは。そんな頬膨らまして。本当に30代半ばなのだろうか。おっさんに近い年齢とは思えないこの可愛さはなんなのだろうか。こいつから滲み出る『可愛さ』は専売特許のレベルに値するのではないか。しかも、時々見せる男気のある強気な部分もギャップとなってなんとも言えない魅力がこいつにはある。

 だからこそ、もっと焦らして苛めたくなるのだ。この可愛さをもっと出させたくて。

「そんな先進めて欲しいんだったら、たまにはそっちから求めてくれたらいいじゃん」
「……何を?」
「もっと欲しい気持ち出してみてよ。そしたら応えるから」
「どうやって?」
「そんなの、自分で考えろって。俺が応えたくなるようなお願いしてみて」
「…………」

 少しの間、井上はじっと桜井を見て何か考えていたが、くるりと体を反転させてこちらを向いた。四つん這いになって、ぐっと顔を近づけてくる。そのまま唇を重ねてきた。チュッ、と何度も音を立てて吸われた。それは、ちょうだい、と餌をねだる雛のような仕草だった。

 するっと舌が口内に入ってきた。優しく絡んできたな、と思ったらぐっと強く吸われた。それを繰り返しながら動きは激しくなっていった。

 湿り気を帯びた唇が吸い付くように何度も重なり合う。桜井は目を瞑って、その感触を楽しんだ。

「ん……は……」

 井上の吐息が漏れるのを聞きながら、自分の体が再び熱くなっていくのを感じていた。井上に触れたくなる衝動が生まれるが、それを抑えてキスをただ受け続けた。

 すると、井上の右手が再び桜井の自身を掴んだ。今度はとても優しくそっと右手の中に包まれる。水中でゆっくりと右手が動き始める。井上の左手が桜井の右内腿辺りをさわさわとなぜた。その動きに合わせて、ちゃぽっ、と水が音を立てる。

 井上を焦らした分。自分だって焦らされているのだ。

 やばい。

 このままだと、井上の中に入る前に限界が来てしまうかもしれない。

 そう思った時、井上がふと右手を止めた。唇をそっと離すと桜井の目を潤んだ瞳でじっと見つめた。少し顔を傾けて、物欲しそうな表情で囁くように聞いた。

「……まだ、ダメ?」
「……お前、可愛い過ぎる」

 桜井はそのまま井上の唇を奪う。

「ん……ふふっ……桜井……ん……うまく……お願い……ん……できてた?」

 キスの合間に井上が楽しげに尋ねてきた。桜井は一旦キスを止めると、井上に向かって軽く口角を上げた。

「120点満点だったわ」
「100点越えた?」
「うん」
「そうか……。なんか……嬉しいかも。桜井にそう言われると」

 どちらかともなく微笑み合った。

「とりあえず、進めるか。のぼせそうだわ」
「そうだな。折角の俺の120点満点が無駄になるからな」
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