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クローバー
運命の分かれ道 ③
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そこでふと会話が途切れた。しばらく2人とも黙っていた。もしかするとあの幼稚園の時の出来事を、亜貴も思い出していたのかもしれない。
『……洋介』
「……何?」
『幼稚園の頃……俺がクローバーあげたん覚えてる?』
「……覚えてるよ」
『……そうか』
「……それがどうかしたん?」
『俺な、あん時、最初から洋介にあげよう思うて四つ葉のクローバー探しててん』
「そうなん?」
『おん。おかんから教えてもろてん』
「何を?」
『……花言葉』
「花言葉?」
『おん。花言葉って1つとは限らへんくて色々あんねんけど。クローバもな、『幸運』とか『約束』とかあってな。四つ葉のクローバーには同じ『幸運』の他に、も1つあんねん』
「なんなん?」
『それは、言われへん』
「なんでやねん」
『言うたら……お前が困るから』
「…………」
さっきの仕返しやな。
ふふっと、亜貴の笑った声が聞こえた。
『まあ……調べたら分かることやしな』
「そりゃ、そうやな」
『おん。でも俺からは教えへん』
「やから、なんでやねん」
『だって。これは俺の気持ちやから』
「…………」
『お前にクローバーをあげた時から、ずっと変わらへん気持ちやから。今まで気づきもせえへんかったお前には簡単に教えられへんわ』
「それ……どういう……」
『もう、切るわ。お前、今日発表やろ?』
「え? そうやけど……」
『そしたらまたな』
「ちょっ、待てって!」
『……洋介』
「え?」
亜貴が聞こえるか聞こえないかのような小さな声で何か呟いた。そのままぷつりと唐突に通話が切れる。
「…………」
携帯を耳に当てたまま。しばらく動けないでいた。
『……洋介』
「……何?」
『幼稚園の頃……俺がクローバーあげたん覚えてる?』
「……覚えてるよ」
『……そうか』
「……それがどうかしたん?」
『俺な、あん時、最初から洋介にあげよう思うて四つ葉のクローバー探しててん』
「そうなん?」
『おん。おかんから教えてもろてん』
「何を?」
『……花言葉』
「花言葉?」
『おん。花言葉って1つとは限らへんくて色々あんねんけど。クローバもな、『幸運』とか『約束』とかあってな。四つ葉のクローバーには同じ『幸運』の他に、も1つあんねん』
「なんなん?」
『それは、言われへん』
「なんでやねん」
『言うたら……お前が困るから』
「…………」
さっきの仕返しやな。
ふふっと、亜貴の笑った声が聞こえた。
『まあ……調べたら分かることやしな』
「そりゃ、そうやな」
『おん。でも俺からは教えへん』
「やから、なんでやねん」
『だって。これは俺の気持ちやから』
「…………」
『お前にクローバーをあげた時から、ずっと変わらへん気持ちやから。今まで気づきもせえへんかったお前には簡単に教えられへんわ』
「それ……どういう……」
『もう、切るわ。お前、今日発表やろ?』
「え? そうやけど……」
『そしたらまたな』
「ちょっ、待てって!」
『……洋介』
「え?」
亜貴が聞こえるか聞こえないかのような小さな声で何か呟いた。そのままぷつりと唐突に通話が切れる。
「…………」
携帯を耳に当てたまま。しばらく動けないでいた。
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