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文化祭 ①

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 翌日は、文化祭日和のいい天気だった。秋らしい爽やかな風が吹き、暑すぎることも涼しすぎることもなく過ごしやすかった。

 今朝は亜貴と一緒には登校しなかった。準備があるから、という理由で亜貴は先に登校していった。

「なんかみんな楽しそうやね」

 由美が周りを見てそう言った。

「由美は? 楽しないの?」
「楽しいよ。顔にあんま出えへんけど」

 相変わらずのクールな顔で由美がニコリともせずに言った。約束した通り由美と校内を回って歩く。当高校の文化祭は毎年まあまあ力が入っており、覗くだけでもなかなか面白い催しものが多かった。

 校庭に設けられたステージで行われている漫才やバンド演奏などを2人真顔(特に由美が)で眺めた後、教室での出し物を見るため校舎内へ入る。

 お化け屋敷に入り、全身を白く塗られたぬりかべをからかってから、亜貴のクラスの前を通りかかった。

「めっちゃ、繁盛してるやん」

 亜貴のクラスが催している『メイドカフェ』はかなり混み合っていた。メイド、と謳っているので客は男子生徒が多かったが、女子生徒もまあまあ入っているようだった。教室の外にまで順番待ちの客が並んでいる。一体この繁盛振りの要因はなんだろう、と廊下側の窓から覗いてみる。すると。

 は??

 俺は、今、自分が見たものを疑った。その隣で一緒に窓から覗いていた由美が珍しく感情を込めたはしゃいだ声を上げた。

「え?? あれ、亜貴くん?」

 そう、『あれ』は亜貴だった。しかし、いつもの亜貴とは違う。短いフリフリの黒いワンピースにニーハイソックス。これまたフリフリの白いエプロンと髪飾りも付けている。この繁盛の原因はきっと、可愛い女子生徒のメイド姿に加え、可愛い男子生徒のメイド姿という相乗効果のせいだと一瞬で悟る。

俺は思わず行列を押し分けて中に入った。後ろから聞こえる文句なんぞは耳に届かなかった。
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