17 / 58
クローバー
文化祭 ①
しおりを挟む
翌日は、文化祭日和のいい天気だった。秋らしい爽やかな風が吹き、暑すぎることも涼しすぎることもなく過ごしやすかった。
今朝は亜貴と一緒には登校しなかった。準備があるから、という理由で亜貴は先に登校していった。
「なんかみんな楽しそうやね」
由美が周りを見てそう言った。
「由美は? 楽しないの?」
「楽しいよ。顔にあんま出えへんけど」
相変わらずのクールな顔で由美がニコリともせずに言った。約束した通り由美と校内を回って歩く。当高校の文化祭は毎年まあまあ力が入っており、覗くだけでもなかなか面白い催しものが多かった。
校庭に設けられたステージで行われている漫才やバンド演奏などを2人真顔(特に由美が)で眺めた後、教室での出し物を見るため校舎内へ入る。
お化け屋敷に入り、全身を白く塗られたぬりかべをからかってから、亜貴のクラスの前を通りかかった。
「めっちゃ、繁盛してるやん」
亜貴のクラスが催している『メイドカフェ』はかなり混み合っていた。メイド、と謳っているので客は男子生徒が多かったが、女子生徒もまあまあ入っているようだった。教室の外にまで順番待ちの客が並んでいる。一体この繁盛振りの要因はなんだろう、と廊下側の窓から覗いてみる。すると。
は??
俺は、今、自分が見たものを疑った。その隣で一緒に窓から覗いていた由美が珍しく感情を込めたはしゃいだ声を上げた。
「え?? あれ、亜貴くん?」
そう、『あれ』は亜貴だった。しかし、いつもの亜貴とは違う。短いフリフリの黒いワンピースにニーハイソックス。これまたフリフリの白いエプロンと髪飾りも付けている。この繁盛の原因はきっと、可愛い女子生徒のメイド姿に加え、可愛い男子生徒のメイド姿という相乗効果のせいだと一瞬で悟る。
俺は思わず行列を押し分けて中に入った。後ろから聞こえる文句なんぞは耳に届かなかった。
今朝は亜貴と一緒には登校しなかった。準備があるから、という理由で亜貴は先に登校していった。
「なんかみんな楽しそうやね」
由美が周りを見てそう言った。
「由美は? 楽しないの?」
「楽しいよ。顔にあんま出えへんけど」
相変わらずのクールな顔で由美がニコリともせずに言った。約束した通り由美と校内を回って歩く。当高校の文化祭は毎年まあまあ力が入っており、覗くだけでもなかなか面白い催しものが多かった。
校庭に設けられたステージで行われている漫才やバンド演奏などを2人真顔(特に由美が)で眺めた後、教室での出し物を見るため校舎内へ入る。
お化け屋敷に入り、全身を白く塗られたぬりかべをからかってから、亜貴のクラスの前を通りかかった。
「めっちゃ、繁盛してるやん」
亜貴のクラスが催している『メイドカフェ』はかなり混み合っていた。メイド、と謳っているので客は男子生徒が多かったが、女子生徒もまあまあ入っているようだった。教室の外にまで順番待ちの客が並んでいる。一体この繁盛振りの要因はなんだろう、と廊下側の窓から覗いてみる。すると。
は??
俺は、今、自分が見たものを疑った。その隣で一緒に窓から覗いていた由美が珍しく感情を込めたはしゃいだ声を上げた。
「え?? あれ、亜貴くん?」
そう、『あれ』は亜貴だった。しかし、いつもの亜貴とは違う。短いフリフリの黒いワンピースにニーハイソックス。これまたフリフリの白いエプロンと髪飾りも付けている。この繁盛の原因はきっと、可愛い女子生徒のメイド姿に加え、可愛い男子生徒のメイド姿という相乗効果のせいだと一瞬で悟る。
俺は思わず行列を押し分けて中に入った。後ろから聞こえる文句なんぞは耳に届かなかった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる