One Night Stand

文字の大きさ
上 下
13 / 38

ほっぺプクーは断固拒否

しおりを挟む
「ああ、俺、小さいころ、誘拐されそうになったことがあったんだけど。そのことがあってからどっか行く時は同行させろって言われてて、その名残みたいなもん」
「そうなの……?」

 さらっと言ってるけど、誘拐って。かなり深刻な過去じゃねーの?

 そう心の中で思ったが、なにも言わずに相良の話の続きを聞く。

「まあ、もう俺もでかいし、必要ないと言えばないけど、この状況に慣れてるから。ある意味こいつはもう友達みたいなもんだし。ガードというよりは付き合ってもらう感覚でたまに付けてる」

 『友達』と言われた、黒人のボディーガードをチラリと見ると、思いっきり目が合った。ビビる瑛斗をよそに、ニコリと笑顔を返してきた。

 それに気づいた相良が、ボディーガードに英語でなにか話しかけた。

 当たり前だけど、そりゃ、喋れるよな、英語。

 ボディーガードがそれに対してなにか答えると、相良は満足そうに笑った。

「なあ、今、なに話してたの?」

 自分のことをなにか言われていた気がして、相良に聞いてみる。

「ん? ああ、瑛斗に手ぇ出すなよって言っただけ。俺のだから」
「……それ、どういう意味?」

 っていうか、いつからお前のもんになったんだ、俺は。

「言葉通りだろ。そしたら、そんな上玉の可愛らしい子には恐れ多くて手ぇ出せないって」
「なにそれ……」

 俺は、どっかの芸妓か。

 自分が男として扱われてない気がしてなんだか腹が立つ。ボディーガードの彼からすると、それは褒め言葉として言ってくれたのかもしれないが、今まで普通に男として生きてきた自分には『可愛い』と言われることには抵抗があった。

 反抗する意味を込めて相良を軽く睨むと、顔を逸らしてふんっ、と顔を窓へと向けた。その際に、無意識にプクっと頬を膨らませていたらしい。

「瑛斗……」

 名前を呼ばれてちらりと視線を向けると、相良が歓喜の表情でこちらを見ていた。

「なんだよ?」
「それ、もう1回やって。ほっぺプクーって」
「は?」
「今したじゃん。めちゃめちゃ可愛い」
「ただの癖なんだけど……」
「いいじゃん。すげぇいい。ほら、もう1回」
「嫌だ!!」

 可愛い、可愛い、うっさいんだよっ!!

 瑛斗はそれから着陸するまで、脅されようがなにされようが、断固としてほっぺプクーを拒否したのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

隣の家

午後野つばな
BL
源が俺のこと好きになればいいのにーー。 あらすじ  宇野篤郎(うの あつろう)の隣人、日高源(ひだか はじめ)は著名な画家だ。   ひとの心をつかむような絵をまるで息をするように自然に描くことができ、そのくせ絵のこと以外は何もできない、むしろ何もする気がないろくでなし。人好きのする穏やかな笑みを浮かべているくせに、基本他人には興味がなく、ときに残酷なほど冷酷に振る舞える三十過ぎの隣人の中年男に、篤郎はもう長いこと初恋をこじらせているのだった……。 子ども扱いされたくない。けれど自分たちの間にある差はそう簡単には埋めることはできなくてーー。  若いからこそ無謀とも言える勢いと強さとを持つ高校生の主人公と、大人になってしまったからこそ臆病になる大人のずるさ。   二回り年の離れたふたりのじれったいほどの恋物語です。 すてきなイラストはShivaさん(@kiringo69)よりいただきました。

スノードロップに触れられない

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
*表紙* 題字&イラスト:niia 様 ※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください (拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!) アルファだから評価され、アルファだから期待される世界。 先天性のアルファとして生まれた松葉瀬陸真(まつばせ りくま)は、根っからのアルファ嫌いだった。 そんな陸真の怒りを鎮めるのは、いつだって自分よりも可哀想な存在……オメガという人種だ。 しかし、その考えはある日突然……一変した。 『四月から入社しました、矢車菊臣(やぐるま きくおみ)です。一応……先に言っておきますけど、ボクはオメガ性でぇす。……あっ。だからって、襲ったりしないでくださいねぇ?』 自分よりも楽観的に生き、オメガであることをまるで長所のように語る後輩……菊臣との出会い。 『職場のセンパイとして、人生のセンパイとして。後輩オメガに、松葉瀬センパイが知ってる悪いこと……全部、教えてください』 挑発的に笑う菊臣との出会いが、陸真の人生を変えていく。 周りからの身勝手な評価にうんざりし、ひねくれてしまった青年アルファが、自分より弱い存在である筈の後輩オメガによって変わっていくお話です。 可哀想なのはオメガだけじゃないのかもしれない。そんな、他のオメガバース作品とは少し違うかもしれないお話です。 自分勝手で俺様なアルファ嫌いの先輩アルファ×飄々としているあざと可愛い毒舌後輩オメガ でございます!! ※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!! ※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

ACCOMPLICE

子犬一 はぁて
BL
欠陥品のα(狼上司)×完全無欠のΩ(大型犬部下)その行為は同情からくるものか、あるいは羨望からくるものか。  産まれつき種を持たないアルファである小鳥遊駿輔は住販会社で働いている。己の欠陥をひた隠し「普通」のアルファとして生きてきた。  新年度、新しく入社してきた岸本雄馬は上司にも物怖じせず意見を言ってくる新進気鋭の新人社員だった。彼を部下に据え一から営業を叩き込むことを指示された小鳥遊は厳しく指導をする。そんな小鳥遊に一切音を上げず一ヶ月働き続けた岸本に、ひょんなことから小鳥遊の秘密を知られてしまう。それ以来岸本はたびたび小鳥遊を脅すようになる。  お互いの秘密を共有したとき、二人は共犯者になった。両者の欠陥を補うように二人の関係は変わっていく。 ACCOMPLICEーー共犯ーー ※この作品はフィクションです。オメガバースの世界観をベースにしていますが、一部解釈を変えている部分があります。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...