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17, 仕事と勉強

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「素晴らしいです」
 アルの嬉しそうな声が執務室に響く。
「たった1週間で文字をほとんどマスターされるとは」
 毎日10時から12時までをペネとの勉強に、13時から16時までを執務室でアルの仕事にあてることが日課になった。
 勉強なんて中学生以来で大変より、むしろ楽しいという感情が勝る。なにより
「僕の教え方が上手いからだね」
 得意げなペネの言う通り彼は文字もこの国の歴史も、魔法についても丁寧に教えてくれた。私の識字力に合わせた本も紹介してくれるおかげで、どんどん目に見えて知識がついていった。
「そんなことないだろう、これはセイナさんの頑張りによるものだ。お前のおかげでは無い」
「勉強で疲れたセイナに無理やり仕事をさせるアルに言われたくない。仕事がなければ午後もセイナと一緒にいられるのに」
「どんどん本音が漏れていってるぞ、このバカめ。そんなんだからみんなに愚鈍な魔道士なんてよばれるんだよ」
「アルこそ可哀想な美少年なんて不名誉なあだ名がついているくせに」
「ずっと言いたかったけど、そうやってアルって呼ぶのやめてくれないかな。私は兄なんだ、アルーセス兄様と呼べ」
「そんな気持ち悪い呼び方できるか」
「なんだと」
  この喧嘩ももう日常茶飯事で、初めは私も慌ててクロッセスを呼びに行っていたのだが、今では傍観することを覚えた。いつもは丁寧なアルも喧嘩では口調が乱れ、いつも無表情なペネもアルとの喧嘩では眉がよく動く。私はそれがあまりにもおかしくてクスクスと笑って見ている。

「2人とも、ぼちぼち喧嘩もやめて仕事にかかろう。私仕事も勉強も好きだからできることなら両方やっていたいな」
私がそう言うと2人は掴みあっていた手を離して、大人しく席に着いた。
「仕事もこなしていると文字もそうだけどこの世界のことも知れて本への理解が深まるし、なによりここに置いてもらってることへのお礼だから」
「セイナがそういうなら……」
 ペネはそう言って頷いた。
 なにより、こうして私が仕事を手伝いに来るとペネも後ろを着いてくることがわかった。ペネは執務室に来た以上多少なり仕事を手伝ってくれるので、アルの仕事も軽くなっているのでは、と私は勝手に企んでいる。

 それより心配なのが、末っ子のトアセスである。
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