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2, 厄災

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 姉と言った途端、私たちは2人揃って温かな部屋へ案内された。豪華絢爛な装飾、出される見たこともないお菓子。初めの緊張はどこへやら、涼奈は大はしゃぎでお菓子に手をつけた。
 私はそれをたしなめながら、促された席に着く。あまりにも腰が深く沈むソファに驚いたが、必死に顔は取り繕う。私が座ると涼奈も隣に座った。
 お菓子が置かれたテーブルを挟んで、向かいの席には先程の顔面偏差値の高い偉そうな男が偉そうに座っている。
そして、その後ろの扉のすぐそばに全身黒い軍服で固めた、ガタイのいい男が立っている。万に一つも逃げられそうにない。
 その隣には眼鏡をかけたいかにも賢そうな優男もいる。目が合う度に微笑まれるので、キョロキョロと周りを見渡しずらい。
 私は諦めて偉そうな翠の美しい瞳に目を合わせた。
「それで、涼奈が聖女というのはどういうことでしょう」
 先程よりも落ち着いている私の声に、偉そうな男は顎で後ろの男に指図した。
 私との会話はするに値しないということだろうか。怒りがふつふつと沸き立つ。
 そんな私をよそに、後ろの優男は1歩前に出てきた。綺麗な紺青の髪が揺れる。
「このお方はこの国の第1王子、ルバート・アッヘンヴル様です。今回の聖女召喚の代表責任者でもあります。今回我々が聖女様をお呼び致しましたのは、我が国に100年周期で起きます『悪魔との戦争』に聖女様のお力をお借りしようとしたためでございます。」
 淡々と告げられる事実にまだ頭が追いつかない。しかし質問する間もなく男は続ける。
「この国では100年おきに悪魔が目覚めます。その悪魔は国の民を養分に育ちいずれ世界を滅ぼします。初めて悪魔が現れたのは、1000年前。その時当時王太子妃であったメルエム様が聖女としての力を覚醒され、軍隊とともに悪魔を討伐したのです。しかし聖女様は戦いで力を使い切り子をなすことなくお亡くなりになられました。そのため聖女の力を受け継ぐものがおらず、その次の悪魔襲来の際には、神官たちが命懸けの術を使い別世界から聖女様を召喚することに成功致しました。それ以来その術を使い毎度の悪魔襲来に対抗しているのです」
 まるで諭すように私を見るその目が、身の毛もよだつほどに不快に感じる。能天気な妹と違い私は今まで何事にもひとりで対処してきた。両親が死んだあとの手続きも、足りないお金も、好奇の視線も、全て1人で何とかしてきた。1人で涼奈を守ってきたのだ。私を騙せると思ったら大間違いだ。
「いくつか質問させてください」
「なんでしょう」
 私の言葉に男は笑顔で言った。私は遠慮なく口を開いた。
「まず、先程聖女が子をなす前に亡くなったと仰っていましたが、もしや聖女が産んだ子は聖女の力を宿すということでしょうか」
「ええ、その可能性が高いと言われています、しかし今までの聖女様はお子をなさなかったので毎度別世界から探しております」
「子をなさなかったのではなく、なせなかったのでは」
 その問で一気に空気が凍りついた。
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