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帰宅後、頭の冷えた董哉は酷く落ち込んでいた。狭い部屋に無理矢理押し込んだようなベッドに倒れ込み、顔を覆った。
やってしまった。
今までどうにか堪えてきたのに、食を馬鹿にされた瞬間ついに我慢が効かなくなってしまった。大学生にもなってあるまじき失態である。
董哉はアルファの女性の元にオメガの男性が嫁いだ夫婦の元に産まれた次男である。自慢ではないが実家はそこそこ太い。
そんな家で董哉より先に生まれたアルファの兄は、他人よりやや傲慢に育ち、捻くれていた。家長であるアルファ親は女性であることもあり物理的に抑えることは難しく、兄はオメガ親のことは下に見ていた。
兄の舐め腐った態度が気に食わなかった董哉は兄との衝突も多く、口論を繰り返すうちに引きずられるように董哉の口まで悪くなってしまった。
普段は気をつけているが、カッとなると口の悪さが露顕する。留学先では気をつけようと思っていた矢先でこれだ。
「終わった…………」
口にしたことで余計に絶望の淵に立たされた気分になる。
口論に発展しなかったのが奇跡だが、客に暴言を吐いた時点でクビ確定だ。
折角の経験を積むチャンスを、国の風潮と何より自分の沸点の低さでおじゃんにしてしまった。少しずつ近づいていた夢が一気に遠のいた気がした。
アメリカではクビの場合、連絡が来るのだろうか?ヘンリーは2度と来るなとは言わなかったが、董哉の擁護もしなかった。今頃我に返ってカンカンに怒っている可能性だってある。
一応大学からの紹介でもあるのだ。今回の事が大学にまで伝わったら、最悪評価だって下がりかねない。そうすれば、下手をすれば留学を手伝ってくれた母国の人達にまで迷惑をかける。
考えれば考えるほど悪い未来予想しかできず、留学してから過去最悪な夜を過ごすこととなった。
死刑宣告を待つ囚人のような気持ちで夜を明かし、大学にも向かったが、一向にヘンリーからの連絡はない。
これは無言で首を切られたのだろうか?しかし、もしもまだ雇用されているのだとしたら……今日もシフトが入っているのでまたあの食堂へ向かわなければならない。
それはそれで気が滅入る。折角積み上げたであろう努力と信頼を自ら壊したあの現場に平気で迎える程、流石に董哉の面の皮は厚くなかった。
結果、クビを突きつけられるつもりで再び訪れたキッチンで再開したヘンリーの表情は、驚愕の中に安堵が含まれていた。
「ああ、トーヤ!来るかどうか心配していたよ!」
なら連絡しろよ、と言わなかった自分を董哉は褒めた。
「ヘンリー、昨日はすまなかった。僕はもう……」
「まさか辞めるなんて言わないよな?昨日はトラブルこそあったけれど、カラアゲは完売だよ!!是非もう一度作ってほしい!!」
董哉は我が耳を疑った。
「完売?」
「今日は材料がないから無理だけど、また取り寄せたら美味しいカラアゲを頼むよ!それじゃあ、今後も君には期待してるから!」
色々と酷い出来事だったアレを"トラブル"の一言で済ませるのか?とか、言いたいことは他にもあった。
だが、聞き返す董哉の言葉をスルーし、ヘンリーは告げたいことだけ告げてその場を後にする。
「…………完売???」
ヘンリーに取り残された董哉は、1人首を傾げていた。
やってしまった。
今までどうにか堪えてきたのに、食を馬鹿にされた瞬間ついに我慢が効かなくなってしまった。大学生にもなってあるまじき失態である。
董哉はアルファの女性の元にオメガの男性が嫁いだ夫婦の元に産まれた次男である。自慢ではないが実家はそこそこ太い。
そんな家で董哉より先に生まれたアルファの兄は、他人よりやや傲慢に育ち、捻くれていた。家長であるアルファ親は女性であることもあり物理的に抑えることは難しく、兄はオメガ親のことは下に見ていた。
兄の舐め腐った態度が気に食わなかった董哉は兄との衝突も多く、口論を繰り返すうちに引きずられるように董哉の口まで悪くなってしまった。
普段は気をつけているが、カッとなると口の悪さが露顕する。留学先では気をつけようと思っていた矢先でこれだ。
「終わった…………」
口にしたことで余計に絶望の淵に立たされた気分になる。
口論に発展しなかったのが奇跡だが、客に暴言を吐いた時点でクビ確定だ。
折角の経験を積むチャンスを、国の風潮と何より自分の沸点の低さでおじゃんにしてしまった。少しずつ近づいていた夢が一気に遠のいた気がした。
アメリカではクビの場合、連絡が来るのだろうか?ヘンリーは2度と来るなとは言わなかったが、董哉の擁護もしなかった。今頃我に返ってカンカンに怒っている可能性だってある。
一応大学からの紹介でもあるのだ。今回の事が大学にまで伝わったら、最悪評価だって下がりかねない。そうすれば、下手をすれば留学を手伝ってくれた母国の人達にまで迷惑をかける。
考えれば考えるほど悪い未来予想しかできず、留学してから過去最悪な夜を過ごすこととなった。
死刑宣告を待つ囚人のような気持ちで夜を明かし、大学にも向かったが、一向にヘンリーからの連絡はない。
これは無言で首を切られたのだろうか?しかし、もしもまだ雇用されているのだとしたら……今日もシフトが入っているのでまたあの食堂へ向かわなければならない。
それはそれで気が滅入る。折角積み上げたであろう努力と信頼を自ら壊したあの現場に平気で迎える程、流石に董哉の面の皮は厚くなかった。
結果、クビを突きつけられるつもりで再び訪れたキッチンで再開したヘンリーの表情は、驚愕の中に安堵が含まれていた。
「ああ、トーヤ!来るかどうか心配していたよ!」
なら連絡しろよ、と言わなかった自分を董哉は褒めた。
「ヘンリー、昨日はすまなかった。僕はもう……」
「まさか辞めるなんて言わないよな?昨日はトラブルこそあったけれど、カラアゲは完売だよ!!是非もう一度作ってほしい!!」
董哉は我が耳を疑った。
「完売?」
「今日は材料がないから無理だけど、また取り寄せたら美味しいカラアゲを頼むよ!それじゃあ、今後も君には期待してるから!」
色々と酷い出来事だったアレを"トラブル"の一言で済ませるのか?とか、言いたいことは他にもあった。
だが、聞き返す董哉の言葉をスルーし、ヘンリーは告げたいことだけ告げてその場を後にする。
「…………完売???」
ヘンリーに取り残された董哉は、1人首を傾げていた。
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