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明智君、しばしの有給だからな
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「警視長、申し訳ないですけど、警視長はここにいてもらえませんか? 明智君が目覚めた時に誰かがいないと、ふてくされるので。マリ先生と警視長がいたら、それだけで大満足なんです」
「分かりました。先輩は、白シカ組組長の暴行犯と明智君に毒物を飲ませた人物は、同一犯だと思いますか?」
「十中八九そうですね。私たちが真相に近づいているのを恐れて、警告のつもりだったんでしょう。私の家族である明智君が犠牲になったのも大きいですけど、犬なら亡き者にしてもいいという考えをしている、そいつを許すつもりはありません。だけど、警さ……。もう少しはっきりするまでは黙っていようと思っていたんですけど、真犯人は警察関係者の可能性があります。警視長がヘリの副操縦士の方にサンプルのドッグフードを渡しに行った時に、言うべきか迷ったんですけど。あの人は信用できますよね?」
「彼は信用できるが、あくまでもヘリの操縦士なので、捜査には参加しないんです。あっ、さっきのドッグフードを捜査機関に渡すと、揉み消されるかもしれない。しまった……」
「それは、もう諦めましょう。なので、あのドッグフードに関しての警察のデータは、まるっきりあてにしないようにしましょう。幸い、マリ先生に2個渡したので問題ないでしょう。それよりも事件現場です。警察関係者の誰かが怪しいと言っても、事件に関与しているのは一人か二人です。一人の可能性が高いですけどね。そしてその一人に上手く立ち回られると、事件を有耶無耶にされかねないでしょう。被害者が暴力団と、こんな事言いたくないですけど犬一頭となったら、警察もそこまで真剣にならないと思うんですよ」
「残念ながら、そうですね。でも白シカ組はさておき、明智君をあんな目に合わした奴をほっとくわけには……。しかし真犯人が警察関係者というのは厄介ですね。先輩の捜査のじゃまを堂々とできるし、実際にするでしょうね」「なので事件現場の警備を……その……白イノシシ会に頼んでしまいました。詳しくは言えませんが、私のお願いを忠実に実行してくれるので。ただ、警備だけなら白イノシシ会に任せても大丈夫ですけど、捜査をさせるわけにはいきません。暴力団が見つけた証拠を鵜呑みにするなんてありえないですから。それで、ある警察官に捜査指揮をさせたいんです。その者は、派閥に属するわけでもなく賄賂につられることもなく、我が道を行きながら、ただ純粋に警察の仕事を全うしています。そんなバカ正直な人は、私の知る限りでは一人しかいないでしょうね。ただ、欠点が一つ二つ三つ……。知識はまあまああるんですけど、それを使う能力がない。間違いを犯しても、反省しない。ノミの心臓。分かりやすい嘘をついてすぐにサボる。自分より立場の低い者に対してだけ、めっぽう強い。他には……あっ、じょじょじょ冗談ですよ。ほんの少し大げさに言っただけです。それにいざ責任ある立場にさせると、案外できるかもしれないですし。可能性は限りなくゼロですけど」
「せ、先輩、そのくらいで。この際、贅沢は言ってられないですね。その者に現場の指揮を任せてみましょうか。だけど一人だけ捜査するは難しくないですか?」
「メインの捜査は私たちがするので安心してください。警察内にいる真犯人が、私たちのじゃまをしたり証拠をもみ消すような動きを、牽制してくれるだけで十分です」
「うーん、それでも現場を見張るのが精一杯というか、それすらも難しいですよ。鑑識さんが真犯人から賄賂なり直訴なりされていたら、簡単に証拠を消せるでしょうし」
「そういう時のための、白イノシシ会の若い衆なんです。なので唯一の信用できる警察官には、捜査をするというよりも采配をしてもらいたいんです。白イノシシ会の若い衆は、ある意味信用できます。裏切ることはまずありませんし、全力で働いてくれると保証できます。なにせ組長と私の目がありますからね。再度言っておきますが、理由は聞かないでくださいね」
「分かりました。先輩が言うんだから信用しましょう。緊急事態だし、他に選択肢はないですしね。それで、その信頼できる警察官とは、もしかしたらあの男ですか?」
「はい、残念ながら。あの万年巡査部長です。今回の事件の被害者が判明していない段階で、被害者が着ていた服をきれいに洗ってDNAなどの痕跡を落としてくれました。なので巡査部長から巡査に格下げしてもらいたかったというのが本音です。だけど本当に心の底から残念で情けないですけど、あの巡査部長を警部に昇進させてもらえませんか? 制服の巡査部長や巡査だと、白イノシシ会の若い衆に舐められるので。それに指揮するには箔をつけておかないとだめだと思うので。もしかしたら警察内部に風を吹き込んでくれるかもしれないですよ。いい風か悪い風かはともかく」
「そ、そうですね。先輩が所属していた交番での私の新人時代の研修で、そこにいた万年巡査部長をバカにしすぎた罪滅ぼしもあるので。私の一存で警部にしてみます。あーあ、私の経歴に傷がつくかも……。私のささやかな抵抗として、給料は巡査部長のままにしておきます」
「け、警視長……相変わらずですね。明智君も喜ぶと思いますよ。給料据え置きではなくて、警部昇進の方を。明智君は随分かわいがってもらっていたので。本当の意味でですよ。明智君はどこかでバカにしているのが見え見えだったのに、それでも手を挙げるどころか怒ることすらなかったんですよね」
「まあ、それは、明智君のキャラクターがあってのことでしょう。あの万年巡査部長改め給料据え置き警部が、良い人とかいうのではないですよ。それはさておき、すぐに辞令を出して現場に向かわせますね。先輩が着く頃には、最低限の初動捜査をしてくれていると……期待し……いえ、現場をむちゃくちゃにしないでただ立っているだけで、良しとしましょうか」
「そ、そうですね。では、行ってまいります」
病院の駐車場には、阿部君パパが待機してくれていた。目が充血していることからも、しばらく泣いていたに違いない。このクールな奴が泣くだなんて、明智君を羨ましがっている私がいる。とりあえず、その明智君と一番仲良しなのは、私なのだ。と心の中でマウントを取り、そして悦に浸り、溜飲を下げる。大人気ないと言ってくれて構わない。どんなに誹謗中傷があろうとも、私には明智君がいてくれる。それだけで幸せだ。
「阿部君パパ、事件現場に向かってくれるかい?」
「はい。安全運転で行かせてもらいますね。車が疲れてるみたいなんです」
ありがとう、阿部君パパの車さん。明智君のために随分無理をしてくれたようだな。もう少しだけ無理を聞いてくれるかい?
「阿部君パパ、とりあえず私たちを現場まで送ってくれたら、自動車整備工場に行って最高級のメンテナンスをしてもらってくれるかい。それから丁寧に洗車もしてあげておくれ。私たちは、帰りは給料据え置き警部に送ってもらうから、アジトで待っていてくれ」
「はい。ちなみに、代金の方は?」
おおー、いつもの阿部君パパになってきたな。
「そんな分かりきったことを聞くんじゃない。明智くんが払って……いてっ。トラゾウ、今のは冗談なんだぞ。明智君は絶対に助かるけど、もし今の会話が明智君に聞こえていたとしたら、強欲な明智君ならさらに回復が早まるからな」
「ガオンガガオ」
トラゾウが本気とは言えないまでも、私に手を出すなんて。トラゾウ、明智君を絶対に助けような。例え医者が諦め死神が明智君を迎えに来ようとも、私たちが死神を倒して明智君をこっちの世界に引き戻してやる。明智君、最後は精神力が物を言うからな。
「阿部君パパ、とりあえず立て替えておいてくれるかい? 後で給料と一緒に払うから」
「は、はあ……」
こ、こいつ……信じてないな。明智君がしばらく不在だからなのだろうか。我々怪盗団が明智君で持っていると思っているのだろう。否定はしないが正しくもない。私たちは、私と阿部君と明智君の3人が揃って初めて真価を発揮すると言ってもいいからな。本当だから。信用しておくれ。そんな疑っていたら、阿部君がかわいそうだろ。努力してくれよ、阿部君。
「リーダー、何をいつもの100倍だらしない顔をしてるんですか。私はただでさえ明智君の分まで頑張らないといけないっていうのに。トラゾウ一人だけでは、そんな足手まといのリーダーのフォローは持て余しますよ。こんな時こそしっかりしないとだめでしょ。まったくもおー。パパ、とりあえず車にかかるお金は、私が即金で立て替えるから安心して。一週間分の給料も、私がリーダーにきっちり耳を揃えて払わせるよ。だから、頑張ろうね。今は明智君のために」
「アイアイサー!」
う、嘘だろ……。またもや「アイアイサー」と言ったぞ。今の阿部君の私に対する暴言への怒りはなくなったが、それよりも私への八つ当たりが恐いな。阿部君の顔を見ることさえできない。なにせ2回目だもんな。それにしても静かだ。「アイアイサー」が初耳のトラゾウでさえ、気まずい空気の意味が分かっているようだ。
うーん、ここは聞こえなかったことにするのが、最大にして唯一の解決策だな。
「阿部君、トラゾウ、事件現場に戻るぞ。はっきり言って、今の私たちに何ができるのかわからない。しかし明智君を安心させるためにも、いつものように空元気とハッタリで押しまくろう」
「はいっ!」「ガオッ!」
後で阿部君パパに忠告しておくか。二度と「アイアイサー」と言わないように。少なくとも身内の前では。1回なら笑えるが、何度も言われると気を使うだけだ。初めて阿部君に同情してしまったもんな。
事件現場までは、あえて阿部君パパには話しかけなかった。何かの拍子でもう一度「アイアイサー」と言われると、阿部君が壊れるからだ。言葉を巧みに操れる私を持ってしても、何とフォローしていいかわからない。
明智君がいたとしても、できる事はなかっただろう。私とトラゾウと一緒に震えながら身を寄せ合って、静かな嵐が去るのを待っていたに違いない。いや、緊張のあまりうっかりくしゃみをしてしまい、それに驚いた阿部君パパが事故を起こすリスクがある。……。それでも明智君には、私のそばに……。
落ち込んでいる場合ではなかった。明智君が目覚めた時には、せめて解決の目処を立てて良い報告をしてあげないと。なので事件現場に着くまでは精神統一でもしよう。静かに。トラゾウは阿部君と遊ぶ係を選んでくれた。阿部君は癒やされている。阿部君パパは運転だけに集中してくれた。これで事件現場に着く頃には、いつもの私たちになっていることだろう。
悪徳政治家宅まで送ってもらった頃には、ひまわり探偵社の面々は笑顔で阿部君パパにお礼を言えるようにまでなていた。よしよし。捜査に集中できそうだ。
いつもの警備している警察官に挨拶がてら話を聞きに行くと、いつもと違う警察官が正門に立っていた。と言っても知らない顔ではない。あの給料据え置き警部だ。え? どうして、現場で指揮をとっていないんだ? そのために警部にしたのに。
まさか……。いや、きっとそうだ。捜査の仕方が分からないんだな。手伝うしかないのか。まいったな。現場には私が頼んだ白イノシシ会の若い衆がいるというのに。だから、いつもの警備の警察官と悪徳政治家夫人にだけ話を聞いて、現場の状況は警部からの報告で済まそうと決めたところだぞ。だって白イノシシ会の奴らに顔を知られたくないから。
白イノシシ会の組長宅でひと悶着起こした時は変装していて……あっ、そう言えば変装道具を阿部君パパの車に積みっぱなしにしてあるぞ。昨日のトラゾウ捜索で使おうとしたのは無駄ではなかった。トラゾウのおかげだな。阿部君パパは……よし、まだ出発していない。「アイアイサー」の後で空気が激変したから、さすがに反省しているのだろうか。阿部君パパに限ってそれはないか。
私はロボットアニメのお面を、阿部君はトラの覆面を、急ぎ取りに戻った。トラゾウはアジトからずっとライオンの覆面を被っているので、ただ付いてきた。今さらだけど、トラゾウを見た人たちは、トラゾウをワンちゃんだと認識してくれたのだろうか。野球場の人たちはトラゾウが大声で鳴くまでは気づいてなかったようだし、トラだと知った後も騒ぎ立てもしなかったから、トラゾウは市民権を得たとしておくか。
それよりも今は、気にしないといけない事がある。変装したとして、白イノシシ会の若い衆が私たちをあの時の怪盗だと認識してくれるかどうかだ。私のお面はグレードアップしているし、阿部君とトラゾウは面識がない。トラゾウは当時は私たちとも知り合っていなかったので、面識がないのは当然だろう。ではなぜ阿部君までもが面識がないのかというと、私を囮にして、阿部君と明智君は組長一人に二人がかりで襲って速攻で逃げ帰ったからだ。なので私一人で白イノシシ会の若い衆5人を相手にしないといかなかった。
しかしケガの功名で、人生において一度もケンカをしたことがなかった私は、自分の強さを知ってしまったのだ。4人をほぼ一撃で倒し、それを見た最後の一人は恐れおののき、勝手にやられたふりをして地面に這いつくばった。これは本当に信じておくれ。全然大げさにも言ってない。若い衆5人が組長命令とはいえ進んで来ていることからも、分かってもらえると思うが。
ただ、それはそれこれはこれだ。暴力団に恐れられているとはいえ、顔を知られていないに越したことはない。たまたま偶然に街なかでばったり会ってしまい、私を見て大泣きしてチビりながら逃げられたら、私が注目の的となってしまう。恥ずかしいじゃないか。私は照れ屋さんなんだぞ。
それはいいとして、いつもの警備の警察官はどこに行ったのだろうか。この給料据え置き警部に泣きつかれて……いや、こいつは泣きつくようなやつではない。上から目線で命令されて、泣く泣く現場の指揮をとらされているのだろうか。でも制服で行って、白イノシシ会の若い衆に舐められないだろうか。階級社会の警察で、警部から言われたら逆らえないもんな。あの警部の警察官の階級は何なのだろう。制服だから巡査部長以下だというのは偏見かもしれないな。結構年を取ってるみたいだったし。くだらない事を考えていないで、現場に急ごう。
しかし、このふざけたお面を被っていって、私だと信じてもらえるのだろうか。連れている阿部君がタイガーマスクの覆面だし、明智君の代わりにライオンの覆面を被ったトラがいるというのに。それに、この快盗時の変装を警察官に見られるのも、この先の怪盗活動に支障は出ないだろうか。被害者が万が一私たちを見て警察に証言したなら、一発で分かってしまう。まあ、私たちは、警察に被害届を出すのに躊躇ってしまうようなスネに傷のある悪者からしか盗まない……。いや、いよいよ生活に困ったら、私は全力で引き止めるが、阿部君と明智君は見境がなさそうだな。
そのいよいよの状況になったら、変装をさらにグレードアップというか、もっと怪盗らしいものに変えればいいだけだ。よりによって、ロボットアニメのお面だなんて、大人が付けていたら笑われるか逆にサイコパスなイメージを植え付けてしまいかねない。世界中のチビっ子が憧れる大怪盗は、かっこよすぎて近寄りがたくあっても、親しみだって持ち合わせているべきだ。
それに怪盗団なのだから、全員が同じ扮装かもしくは全くバラバラでないといけないだろう。なのに阿部君と明智君がおそろいで、私だけが全くの別物だなんて、悪意ある人なら私が仲間外れだと信じる。人を見る目のある人なら、私がずば抜けて優れているのを見透かして、孤高の存在ゆえの一人だけ全く違う変装だと理解してくれるだろうが。
でもまあ、おそろいの変装をそれとなく阿部君にお願いしてみよう。阿部君パパに取られていなかったなら、一度は私にもトラの覆面を提供する意思があったのだから、案外聞いてくれるかもしれない。そのためにも、この事件を鮮やかに解決してやるとするか。ついでに何か様になるかっこいい覆面のアイデアも考えてみよう。うん。このロボットアニメのお面とはオサラバかも。給料据え置き警部にでもあげるか。
私は自然とニヤニヤしながら、正門に立っている給料据え置き警部に近寄っていった。なぜか阿部君とトラゾウもニヤニヤしている。まさか私の考えが、ひとり言となって漏れていたのか。ということは、阿部君とトラゾウのニヤニヤの意味は違ってくる。うーん、捜査に集中するのが一番体に良いようだ。
「分かりました。先輩は、白シカ組組長の暴行犯と明智君に毒物を飲ませた人物は、同一犯だと思いますか?」
「十中八九そうですね。私たちが真相に近づいているのを恐れて、警告のつもりだったんでしょう。私の家族である明智君が犠牲になったのも大きいですけど、犬なら亡き者にしてもいいという考えをしている、そいつを許すつもりはありません。だけど、警さ……。もう少しはっきりするまでは黙っていようと思っていたんですけど、真犯人は警察関係者の可能性があります。警視長がヘリの副操縦士の方にサンプルのドッグフードを渡しに行った時に、言うべきか迷ったんですけど。あの人は信用できますよね?」
「彼は信用できるが、あくまでもヘリの操縦士なので、捜査には参加しないんです。あっ、さっきのドッグフードを捜査機関に渡すと、揉み消されるかもしれない。しまった……」
「それは、もう諦めましょう。なので、あのドッグフードに関しての警察のデータは、まるっきりあてにしないようにしましょう。幸い、マリ先生に2個渡したので問題ないでしょう。それよりも事件現場です。警察関係者の誰かが怪しいと言っても、事件に関与しているのは一人か二人です。一人の可能性が高いですけどね。そしてその一人に上手く立ち回られると、事件を有耶無耶にされかねないでしょう。被害者が暴力団と、こんな事言いたくないですけど犬一頭となったら、警察もそこまで真剣にならないと思うんですよ」
「残念ながら、そうですね。でも白シカ組はさておき、明智君をあんな目に合わした奴をほっとくわけには……。しかし真犯人が警察関係者というのは厄介ですね。先輩の捜査のじゃまを堂々とできるし、実際にするでしょうね」「なので事件現場の警備を……その……白イノシシ会に頼んでしまいました。詳しくは言えませんが、私のお願いを忠実に実行してくれるので。ただ、警備だけなら白イノシシ会に任せても大丈夫ですけど、捜査をさせるわけにはいきません。暴力団が見つけた証拠を鵜呑みにするなんてありえないですから。それで、ある警察官に捜査指揮をさせたいんです。その者は、派閥に属するわけでもなく賄賂につられることもなく、我が道を行きながら、ただ純粋に警察の仕事を全うしています。そんなバカ正直な人は、私の知る限りでは一人しかいないでしょうね。ただ、欠点が一つ二つ三つ……。知識はまあまああるんですけど、それを使う能力がない。間違いを犯しても、反省しない。ノミの心臓。分かりやすい嘘をついてすぐにサボる。自分より立場の低い者に対してだけ、めっぽう強い。他には……あっ、じょじょじょ冗談ですよ。ほんの少し大げさに言っただけです。それにいざ責任ある立場にさせると、案外できるかもしれないですし。可能性は限りなくゼロですけど」
「せ、先輩、そのくらいで。この際、贅沢は言ってられないですね。その者に現場の指揮を任せてみましょうか。だけど一人だけ捜査するは難しくないですか?」
「メインの捜査は私たちがするので安心してください。警察内にいる真犯人が、私たちのじゃまをしたり証拠をもみ消すような動きを、牽制してくれるだけで十分です」
「うーん、それでも現場を見張るのが精一杯というか、それすらも難しいですよ。鑑識さんが真犯人から賄賂なり直訴なりされていたら、簡単に証拠を消せるでしょうし」
「そういう時のための、白イノシシ会の若い衆なんです。なので唯一の信用できる警察官には、捜査をするというよりも采配をしてもらいたいんです。白イノシシ会の若い衆は、ある意味信用できます。裏切ることはまずありませんし、全力で働いてくれると保証できます。なにせ組長と私の目がありますからね。再度言っておきますが、理由は聞かないでくださいね」
「分かりました。先輩が言うんだから信用しましょう。緊急事態だし、他に選択肢はないですしね。それで、その信頼できる警察官とは、もしかしたらあの男ですか?」
「はい、残念ながら。あの万年巡査部長です。今回の事件の被害者が判明していない段階で、被害者が着ていた服をきれいに洗ってDNAなどの痕跡を落としてくれました。なので巡査部長から巡査に格下げしてもらいたかったというのが本音です。だけど本当に心の底から残念で情けないですけど、あの巡査部長を警部に昇進させてもらえませんか? 制服の巡査部長や巡査だと、白イノシシ会の若い衆に舐められるので。それに指揮するには箔をつけておかないとだめだと思うので。もしかしたら警察内部に風を吹き込んでくれるかもしれないですよ。いい風か悪い風かはともかく」
「そ、そうですね。先輩が所属していた交番での私の新人時代の研修で、そこにいた万年巡査部長をバカにしすぎた罪滅ぼしもあるので。私の一存で警部にしてみます。あーあ、私の経歴に傷がつくかも……。私のささやかな抵抗として、給料は巡査部長のままにしておきます」
「け、警視長……相変わらずですね。明智君も喜ぶと思いますよ。給料据え置きではなくて、警部昇進の方を。明智君は随分かわいがってもらっていたので。本当の意味でですよ。明智君はどこかでバカにしているのが見え見えだったのに、それでも手を挙げるどころか怒ることすらなかったんですよね」
「まあ、それは、明智君のキャラクターがあってのことでしょう。あの万年巡査部長改め給料据え置き警部が、良い人とかいうのではないですよ。それはさておき、すぐに辞令を出して現場に向かわせますね。先輩が着く頃には、最低限の初動捜査をしてくれていると……期待し……いえ、現場をむちゃくちゃにしないでただ立っているだけで、良しとしましょうか」
「そ、そうですね。では、行ってまいります」
病院の駐車場には、阿部君パパが待機してくれていた。目が充血していることからも、しばらく泣いていたに違いない。このクールな奴が泣くだなんて、明智君を羨ましがっている私がいる。とりあえず、その明智君と一番仲良しなのは、私なのだ。と心の中でマウントを取り、そして悦に浸り、溜飲を下げる。大人気ないと言ってくれて構わない。どんなに誹謗中傷があろうとも、私には明智君がいてくれる。それだけで幸せだ。
「阿部君パパ、事件現場に向かってくれるかい?」
「はい。安全運転で行かせてもらいますね。車が疲れてるみたいなんです」
ありがとう、阿部君パパの車さん。明智君のために随分無理をしてくれたようだな。もう少しだけ無理を聞いてくれるかい?
「阿部君パパ、とりあえず私たちを現場まで送ってくれたら、自動車整備工場に行って最高級のメンテナンスをしてもらってくれるかい。それから丁寧に洗車もしてあげておくれ。私たちは、帰りは給料据え置き警部に送ってもらうから、アジトで待っていてくれ」
「はい。ちなみに、代金の方は?」
おおー、いつもの阿部君パパになってきたな。
「そんな分かりきったことを聞くんじゃない。明智くんが払って……いてっ。トラゾウ、今のは冗談なんだぞ。明智君は絶対に助かるけど、もし今の会話が明智君に聞こえていたとしたら、強欲な明智君ならさらに回復が早まるからな」
「ガオンガガオ」
トラゾウが本気とは言えないまでも、私に手を出すなんて。トラゾウ、明智君を絶対に助けような。例え医者が諦め死神が明智君を迎えに来ようとも、私たちが死神を倒して明智君をこっちの世界に引き戻してやる。明智君、最後は精神力が物を言うからな。
「阿部君パパ、とりあえず立て替えておいてくれるかい? 後で給料と一緒に払うから」
「は、はあ……」
こ、こいつ……信じてないな。明智君がしばらく不在だからなのだろうか。我々怪盗団が明智君で持っていると思っているのだろう。否定はしないが正しくもない。私たちは、私と阿部君と明智君の3人が揃って初めて真価を発揮すると言ってもいいからな。本当だから。信用しておくれ。そんな疑っていたら、阿部君がかわいそうだろ。努力してくれよ、阿部君。
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「アイアイサー!」
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うーん、ここは聞こえなかったことにするのが、最大にして唯一の解決策だな。
「阿部君、トラゾウ、事件現場に戻るぞ。はっきり言って、今の私たちに何ができるのかわからない。しかし明智君を安心させるためにも、いつものように空元気とハッタリで押しまくろう」
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後で阿部君パパに忠告しておくか。二度と「アイアイサー」と言わないように。少なくとも身内の前では。1回なら笑えるが、何度も言われると気を使うだけだ。初めて阿部君に同情してしまったもんな。
事件現場までは、あえて阿部君パパには話しかけなかった。何かの拍子でもう一度「アイアイサー」と言われると、阿部君が壊れるからだ。言葉を巧みに操れる私を持ってしても、何とフォローしていいかわからない。
明智君がいたとしても、できる事はなかっただろう。私とトラゾウと一緒に震えながら身を寄せ合って、静かな嵐が去るのを待っていたに違いない。いや、緊張のあまりうっかりくしゃみをしてしまい、それに驚いた阿部君パパが事故を起こすリスクがある。……。それでも明智君には、私のそばに……。
落ち込んでいる場合ではなかった。明智君が目覚めた時には、せめて解決の目処を立てて良い報告をしてあげないと。なので事件現場に着くまでは精神統一でもしよう。静かに。トラゾウは阿部君と遊ぶ係を選んでくれた。阿部君は癒やされている。阿部君パパは運転だけに集中してくれた。これで事件現場に着く頃には、いつもの私たちになっていることだろう。
悪徳政治家宅まで送ってもらった頃には、ひまわり探偵社の面々は笑顔で阿部君パパにお礼を言えるようにまでなていた。よしよし。捜査に集中できそうだ。
いつもの警備している警察官に挨拶がてら話を聞きに行くと、いつもと違う警察官が正門に立っていた。と言っても知らない顔ではない。あの給料据え置き警部だ。え? どうして、現場で指揮をとっていないんだ? そのために警部にしたのに。
まさか……。いや、きっとそうだ。捜査の仕方が分からないんだな。手伝うしかないのか。まいったな。現場には私が頼んだ白イノシシ会の若い衆がいるというのに。だから、いつもの警備の警察官と悪徳政治家夫人にだけ話を聞いて、現場の状況は警部からの報告で済まそうと決めたところだぞ。だって白イノシシ会の奴らに顔を知られたくないから。
白イノシシ会の組長宅でひと悶着起こした時は変装していて……あっ、そう言えば変装道具を阿部君パパの車に積みっぱなしにしてあるぞ。昨日のトラゾウ捜索で使おうとしたのは無駄ではなかった。トラゾウのおかげだな。阿部君パパは……よし、まだ出発していない。「アイアイサー」の後で空気が激変したから、さすがに反省しているのだろうか。阿部君パパに限ってそれはないか。
私はロボットアニメのお面を、阿部君はトラの覆面を、急ぎ取りに戻った。トラゾウはアジトからずっとライオンの覆面を被っているので、ただ付いてきた。今さらだけど、トラゾウを見た人たちは、トラゾウをワンちゃんだと認識してくれたのだろうか。野球場の人たちはトラゾウが大声で鳴くまでは気づいてなかったようだし、トラだと知った後も騒ぎ立てもしなかったから、トラゾウは市民権を得たとしておくか。
それよりも今は、気にしないといけない事がある。変装したとして、白イノシシ会の若い衆が私たちをあの時の怪盗だと認識してくれるかどうかだ。私のお面はグレードアップしているし、阿部君とトラゾウは面識がない。トラゾウは当時は私たちとも知り合っていなかったので、面識がないのは当然だろう。ではなぜ阿部君までもが面識がないのかというと、私を囮にして、阿部君と明智君は組長一人に二人がかりで襲って速攻で逃げ帰ったからだ。なので私一人で白イノシシ会の若い衆5人を相手にしないといかなかった。
しかしケガの功名で、人生において一度もケンカをしたことがなかった私は、自分の強さを知ってしまったのだ。4人をほぼ一撃で倒し、それを見た最後の一人は恐れおののき、勝手にやられたふりをして地面に這いつくばった。これは本当に信じておくれ。全然大げさにも言ってない。若い衆5人が組長命令とはいえ進んで来ていることからも、分かってもらえると思うが。
ただ、それはそれこれはこれだ。暴力団に恐れられているとはいえ、顔を知られていないに越したことはない。たまたま偶然に街なかでばったり会ってしまい、私を見て大泣きしてチビりながら逃げられたら、私が注目の的となってしまう。恥ずかしいじゃないか。私は照れ屋さんなんだぞ。
それはいいとして、いつもの警備の警察官はどこに行ったのだろうか。この給料据え置き警部に泣きつかれて……いや、こいつは泣きつくようなやつではない。上から目線で命令されて、泣く泣く現場の指揮をとらされているのだろうか。でも制服で行って、白イノシシ会の若い衆に舐められないだろうか。階級社会の警察で、警部から言われたら逆らえないもんな。あの警部の警察官の階級は何なのだろう。制服だから巡査部長以下だというのは偏見かもしれないな。結構年を取ってるみたいだったし。くだらない事を考えていないで、現場に急ごう。
しかし、このふざけたお面を被っていって、私だと信じてもらえるのだろうか。連れている阿部君がタイガーマスクの覆面だし、明智君の代わりにライオンの覆面を被ったトラがいるというのに。それに、この快盗時の変装を警察官に見られるのも、この先の怪盗活動に支障は出ないだろうか。被害者が万が一私たちを見て警察に証言したなら、一発で分かってしまう。まあ、私たちは、警察に被害届を出すのに躊躇ってしまうようなスネに傷のある悪者からしか盗まない……。いや、いよいよ生活に困ったら、私は全力で引き止めるが、阿部君と明智君は見境がなさそうだな。
そのいよいよの状況になったら、変装をさらにグレードアップというか、もっと怪盗らしいものに変えればいいだけだ。よりによって、ロボットアニメのお面だなんて、大人が付けていたら笑われるか逆にサイコパスなイメージを植え付けてしまいかねない。世界中のチビっ子が憧れる大怪盗は、かっこよすぎて近寄りがたくあっても、親しみだって持ち合わせているべきだ。
それに怪盗団なのだから、全員が同じ扮装かもしくは全くバラバラでないといけないだろう。なのに阿部君と明智君がおそろいで、私だけが全くの別物だなんて、悪意ある人なら私が仲間外れだと信じる。人を見る目のある人なら、私がずば抜けて優れているのを見透かして、孤高の存在ゆえの一人だけ全く違う変装だと理解してくれるだろうが。
でもまあ、おそろいの変装をそれとなく阿部君にお願いしてみよう。阿部君パパに取られていなかったなら、一度は私にもトラの覆面を提供する意思があったのだから、案外聞いてくれるかもしれない。そのためにも、この事件を鮮やかに解決してやるとするか。ついでに何か様になるかっこいい覆面のアイデアも考えてみよう。うん。このロボットアニメのお面とはオサラバかも。給料据え置き警部にでもあげるか。
私は自然とニヤニヤしながら、正門に立っている給料据え置き警部に近寄っていった。なぜか阿部君とトラゾウもニヤニヤしている。まさか私の考えが、ひとり言となって漏れていたのか。ということは、阿部君とトラゾウのニヤニヤの意味は違ってくる。うーん、捜査に集中するのが一番体に良いようだ。
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母は数年前に他界したはずなのに、その声ははっきりとスマートフォンから聞こえてきた。
最初は信じられないヒロシだが、母の声が語る言葉には深い意味があり、彼は次第にその真実に引き寄せられていく。
母が命を懸けて守ろうとしていた秘密、そしてヒロシが知らなかった母の仕事。
それを追い求める中で、彼は恐ろしい陰謀と向き合わなければならない。
彼の未来を決定づける「最後の電話」に込められた母の思いとは一体何なのか?
真実と向き合うため、ヒロシはどんな犠牲を払う覚悟を決めるのか。
最後の母の電話と、選択の連続が織り成すサスペンスフルな物語。
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ダブルネーム
しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する!
四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。
マクデブルクの半球
ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。
高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。
電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう───
「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」
自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。
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