上 下
128 / 197
森の人編 ~種の未来~

127

しおりを挟む


「さて、シェリア?貴方には・・・」
「あの、レディはジョシュアがお好きなのですか」



モジモジしていた僧侶プリーストちゃん。
私が話しかけると真剣な顔で質問が飛んできた。



「ねえシェリア。貴方にとって『ジョシュア・カーバイド』はどんな存在かしら?」

「え、ジョシュア、ですか?」

「そう。家族?仲間?それとも、好きな人?」

「私にとって、ジョシュアは──────大切な人、です」

「それは、恋かしら?」

「はい。昔からずっと一緒でした。私の全ては、ジョシュアの隣にありました。これからもそうありたい、と思っています」



青髪君は彼女シェリアを『女』として見ていなかったが、彼女はジョシュアを『男』として見ていた。

その全ては隣にあった、と言う彼女にとって『傍に居られればそれでいい』は本当の気持ちなんだろう。



「今のままでは、貴方は青髪君・・・ジョシュアに『女』として見て貰えないのではない?」

「・・・わかって、います」

「それでも、傍にいたいのね。戦う彼の傍に」

「はい」



うーん、思ったよりいい子だぞ?
青髪君、この子とデキちゃった方がいいんじゃないか?
別に同じパーティ内でデキてた所でよくない?ダメ?
節度を保ってれば、別にいいと思うんだが。



「今回の依頼クエストだけど、シェリアはどう思ってるの」

「正直、あまりいい気はしません。でも、ジョシュアはエルフさん達の事を聞いて見捨てられないと思ってます。優しいですから」

「気にはなるけど、そこまでじゃないってこと?」

「私がパーティメンバーである以上、ジョシュアに『女』として見て貰えないのはわかってます。でも、危険な所にいく彼を見送ることは、したくない。私には助けになれる力があるんです。彼の隣を歩いて、寄り添える力が。
それを捨てるくらいなら、ジョシュアの夜の相手は誰かに譲ります」



よし、この子とってもいい子です。嫁に決定。
エルフさん達の代わりに、最初にこの子を寝所ベッドに送ろうかしら。酔わせたらわからないんじゃ?でもそういう一線の越え方はダメかしら?

いや、ここはひとつ、エルフのお姉さんと頑張ってもらいましょう。多分気付くんじゃないかな?本当はジョシュアが1番欲しているのは誰なのかって。
ミレイユさんもそのチャンスはあると思うけれど、あれだけギャンギャン言われてたら心も休まらないだろうしね。
後は野となれ山となれ、と見守る他ない。



「・・・シェリアの気持ちはわかったわ。さて、さっきの魔法だけど」

「教えて、くださるのですか?」

「『聖』属性に適正がある貴方なら、そんなに難しくないはずよ。さっき見ていたでしょう?」

「はい!よろしくお願いします!」

「頑張って、貴方の努力はきっと実を結ぶから」




********************



特訓の甲斐があって、シェリアさんは癒しの光リジェネを習得。相手を真綿で包むイメージ、と伝えれば何となく形になった。

後はメタメタにされている青髪君にひたすらそれをかけ続ける。苦労の甲斐があって、とても上手になりました。

青髪君は獅子王アルマに遊ばれたお陰で、動きに磨きがかかった様子。

ミレイユさんとウルズ君もオリアナに揉まれて随分になっていた。ウルズ君はまだしも、オリアナさん?ミレイユさんに何をしましたか?

郷に戻ってからは、キール君と合流して青の均衡ブルーバラスト内でミーティングを行う様子。
明日からは『タイド』に対して立ち向かわなくてはならない。

ふと、私は気になっていた事を聞いてみる。



「ねえ、アルマ。旅の音楽家さん、ってどこに滞在しているのかしら」

「あん?気になんのか」

「ええ、一応は。ご挨拶くらいしておきたいじゃない?」

「確か、向こうの方の・・・」



獅子王アルマはある方向を指してくれた。
軽く説明をしてくれて、案内しようかとした所だ。

綺麗なエルフさんが近寄ってきた。
確か、朝に獅子王アルマと一緒にいたような?

彼女は獅子王アルマにこそこそと耳打ちをする。
ガリガリと頭をかいて、こちらを向く。



「悪い、野暮用だ。1人で大丈夫か?」

「ええ、行ってみるわ。ありがとう」

「飯には戻れよ?遅いようなら迎えに行く」

「わかったわ」



くるりと背を向けて歩き出す獅子王アルマ
その腕にしなやかな腕を絡めつつ、エルフさんは私を見てくすりと微笑んだ。

もしかしてもう1戦いかが?みたいな?
私に『勝った』とか思ったのかな?というか、エルフさんも私相手に何故挑発をしてくるんだろうか。
淡白、と言っていたが、この繁殖期はエルフさんにもそれなりに相手の男に対する独占欲が湧くのかもしれない。



********************



言われた方向へ郷の中をお散歩。
すると、少しこじんまりとしたコテージを発見した。

そこから突然、ガチャリと扉が開いて、1人のエルフ女性が飛び出してきた。立派なわがままボディ…!お胸がたゆんたゆんと揺れます。羨ましい。



「いいじゃない、私と楽しみましょうよ!」

「悪いけど、僕そこまで飢えてないから」

「この前はあんなに楽しんだじゃない!」

「一度抱けば充分でしょ?そんなに僕のが気に入ったの?」

「っ!ひどいっ!」



修羅場でした。
扉からゆったりと姿を現したのは、長めのセミロングの銀髪を持ったイケメン。明らかに『面倒臭い』というオーラを放ちながら、入口の柱に寄りかかって腕組み。…やだ絵になる!

シャツのボタンがひとつ、ふたつと外れ、とってもセクシィ。
歳の頃は22~3、という所か。

私をちらり、と流し目で見る。やだその見方やめてー!



「・・・お客さんが来たから帰って。もう君を抱く気はないから来ないでね」

「お願い、もう一度、もう一度だけでいいから・・・!」

「うるさいな、いい加減にしてくれない?そんなに男の種が欲しいんなら、そこらで股を開きなよ。誰か相手してくれるでしょ」

「あなたじゃなきゃダメなの・・・っ!」

「興醒めだね。ツンツンしてた君を女にするのはそれなりに楽しかったけど、そこまで堕落した女に食指なんて湧かないよ。他の人を誘うんだね。そんな体してるんだから、釣れるでしょ」

「ああん、アート、つれない人。また来るから」



情熱的にお願いしていたエルフさんは、これ以上は無理だと思ったのか帰って行った。私、ポツンです。



「・・・ねえ君、僕に何か用?」

「え、あ。貴方が、『旅の音楽家』さん?」

「まあそうだね」

「ごめんなさい、不躾ね。エンジュといいます。
貴方が獅子王達と一緒に『タイド』へ向かうと聞いたから、ご挨拶にと」

「ふうん」



ジロジロ、と私を上から下まで観察。
う、失礼だったかしら。不審人物と思われても仕方ない?
しかし彼はあっさりと私を手招いた。



「どうぞ。お茶と音楽のひとつくらいはおもてなしするよ」

「っ!ありがとう」



お招きに従い、コテージの中へ。
家具という家具は必要最低限の物だけ。
私は元々使っていたというツリーハウスを借りたので、必要最低限以上に色々とあったが、ここにはテーブルとイス、ベッド、小さなチェストのみだ。

ミニキッチンはあるので、彼はそこでお湯を沸かしてくれ、お茶を煎れて出してくれた。



「どうもありがとう」

「どういたしまして。それより変な所を見せて悪かったね」

「あー、いや。大変ね?」

「後々しつこくしない、って聞いてたから遊び半分に相手したんだけどさ。どの辺がしつこくしないんだか・・・付きまとわれて迷惑だよ。族長さんの話に頷くんじゃなかったね」

「ご愁傷さまです・・・」

「知ってる?エルフの繁殖期は、通常より性欲が強くなるんだって。人並みだそうだよ」

「人並み」

「なんかバカにされてるのかな?って思ったけど、そもそも年がら年中発情してるのなんて、生物の中じゃ『人間』くらいだもんね。納得したよ」

「そう言われると、そうかもしれないわね。なら、獣人はどうなのかしら」

「・・・君、面白いことを言う人だね?」



キラリ、と翡翠色の瞳が『面白いものを見つけた』とばかりに輝いた。…ん?こんな感じの人、私知り合いにいたような?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下、俺でいいんですか!?

神谷レイン
BL
薬剤魔術師として王宮に勤める若者セス。 ある日突然王様から十一歳年上の第三王子のレオナルド殿下と結婚して欲しいと頼まれた。なんでも広まっていない同性婚を世間に周知する為らしい。 でも、どうして俺なの!? レオナルド殿下って、美丈夫じゃん! 俺みたいなのじゃ見劣りするよ! そう思いつつも、当の本人レオナルドに他の人に変えてもらうように頼むが、ほだされて形式上の結婚を結ぶことに。 困惑しっぱなしのセスに待っている未来は?! 小説家になろうでも同時掲載しています。 https://novel18.syosetu.com/n8355gi/

【完結】レスだった私が異世界で美形な夫達と甘い日々を過ごす事になるなんて思わなかった

むい
恋愛
魔法のある世界に転移した割に特に冒険も事件もバトルもない引きこもり型エロライフ。 ✳✳✳ 夫に愛されず女としても見てもらえず子供もなく、寂しい結婚生活を送っていた璃子は、ある日酷い目眩を覚え意識を失う。 目覚めた場所は小さな泉の辺り。 転移して若返った?!と思いきやなんだか微妙に違うような…。まるで自分に似せた入れ物に自分の意識が入ってるみたい。 何故ここにいるかも分からないまま初対面の男性に会って5分で求婚されあれよあれよと結婚する事に?! だいたいエロしかない異世界専業主婦ライフ。 本編完結済み。たまに番外編投稿します。

死に急ぐ悪役は処刑を望む

マンゴー山田
BL
絶対に主を死なせたくないヤンデレ侍従×絶対に死にたい(できれば処刑されたい)悪役。 ホームゲートのない駅。電車が通り過ぎるのを見て『魔が差した』オレ。 無事死んだと思ったら、そこには美形がいて。 「運命が入れ替わっちゃったからそのお礼☆」といういらんお節介のせいで第二の人生を与えられることに。 しかし、その人に「何をしてもいい」と言われたオレは、第二の人生を早々に終わらせるべく動くことにした――。 ■設定上自殺方法等の言葉が多々ありますので、苦手な方はご注意ください。 ■女性キャラが出てきますが恋愛関係にはなりません。CPは固定です。 ■ムーンライトノベルスさんで先行更新中。(アルファポリスさんでは1日遅れ更新となります) ■性描写がある話に▲を付けました。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

小5のショタはお兄さんに誘拐されてしまいました

成竹
BL
「最近、小6の女児が近所で行方不明になった。 誘拐なのではないかと推測されているが、いまだ犯人は見つかっていない。 小5の男の子である翔くんは、自分には無縁であるニュースだと思い、母の忠告も聞かずに友達と遊びに出かけた。 ・・・・・・そして行方不明になってしまうのであった。」 お話はこのあらすじを前提にして始まります。 ショタが精神も肉体も犯される話です。 苦手な人はご注意ください。 10万文字ぐらいで終わらせようと思っています。

お嬢様の身代わり役

325号室の住人
BL
僕はいわゆる転生者のイード。 こうして日本で生きた前世の記憶を持っているのだもの。何かの話の登場人物なのかな?と思った時期もあったが、容姿から攻略対象者にはなれない、男爵令息…いや、貧乏男爵んちの子なので王都に行く用事もないし夜会にも招待されない、って言うか着てく服もなければその費用も材料も被服スキルもない。 そんな僕の18歳の誕生日、とうとう家が爵位を失って平民になり、僕はとある公爵家で使用人として住み込みで働くことになった。 仕事は当主一家の居住フロアのベッドメイキングだ。 1人で仕事をする初日のこと。僕は見てはいけないものを見てしまって…… ☆完結済み 長くなったので、短編→長編変更しました(12/14)

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

夜明けの使者

社菘
BL
高校時代の淡い片想い。 2歳年上の彼が卒業してからこの恋を捨てたつもりだった。 でもなんの因果か、神様のいたずらで再会したんだ。 だから俺は、この恋をまた拾うことにした。 そしてあなたとの恋は運命だと、そう思ったんだ。 年下英語教師 × 年上国語教師 「でも、朝霧先生ってDomですよね――?」 「おれがいつ、Domだって言いました?」 やっぱりあなたは、俺の運命なのかな。 ※話が進むにつれてR15描写アリ ※なろうにも同時連載中なので性描写は控えめです ※表紙は装丁cafe様より作成

処理中です...