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森の人編 ~種の未来~
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しおりを挟む「さて、シェリア?貴方には・・・」
「あの、レディはジョシュアがお好きなのですか」
モジモジしていた僧侶ちゃん。
私が話しかけると真剣な顔で質問が飛んできた。
「ねえシェリア。貴方にとって『ジョシュア・カーバイド』はどんな存在かしら?」
「え、ジョシュア、ですか?」
「そう。家族?仲間?それとも、好きな人?」
「私にとって、ジョシュアは──────大切な人、です」
「それは、恋かしら?」
「はい。昔からずっと一緒でした。私の全ては、ジョシュアの隣にありました。これからもそうありたい、と思っています」
青髪君は彼女を『女』として見ていなかったが、彼女は彼を『男』として見ていた。
その全ては隣にあった、と言う彼女にとって『傍に居られればそれでいい』は本当の気持ちなんだろう。
「今のままでは、貴方は青髪君・・・ジョシュアに『女』として見て貰えないのではない?」
「・・・わかって、います」
「それでも、傍にいたいのね。戦う彼の傍に」
「はい」
うーん、思ったよりいい子だぞ?
青髪君、この子とデキちゃった方がいいんじゃないか?
別に同じパーティ内でデキてた所でよくない?ダメ?
節度を保ってれば、別にいいと思うんだが。
「今回の依頼だけど、シェリアはどう思ってるの」
「正直、あまりいい気はしません。でも、ジョシュアはエルフさん達の事を聞いて見捨てられないと思ってます。優しいですから」
「気にはなるけど、そこまでじゃないってこと?」
「私がパーティメンバーである以上、ジョシュアに『女』として見て貰えないのはわかってます。でも、危険な所にいく彼を見送ることは、したくない。私には助けになれる力があるんです。彼の隣を歩いて、寄り添える力が。
それを捨てるくらいなら、ジョシュアの夜の相手は誰かに譲ります」
よし、この子とってもいい子です。嫁に決定。
エルフさん達の代わりに、最初にこの子を寝所に送ろうかしら。酔わせたらわからないんじゃ?でもそういう一線の越え方はダメかしら?
いや、ここはひとつ、エルフのお姉さんと頑張ってもらいましょう。多分気付くんじゃないかな?本当はジョシュアが1番欲しているのは誰なのかって。
ミレイユさんもそのチャンスはあると思うけれど、あれだけギャンギャン言われてたら心も休まらないだろうしね。
後は野となれ山となれ、と見守る他ない。
「・・・シェリアの気持ちはわかったわ。さて、さっきの魔法だけど」
「教えて、くださるのですか?」
「『聖』属性に適正がある貴方なら、そんなに難しくないはずよ。さっき見ていたでしょう?」
「はい!よろしくお願いします!」
「頑張って、貴方の努力はきっと実を結ぶから」
********************
特訓の甲斐があって、シェリアさんは癒しの光を習得。相手を真綿で包むイメージ、と伝えれば何となく形になった。
後はメタメタにされている青髪君にひたすらそれをかけ続ける。苦労の甲斐があって、とても上手になりました。
青髪君は獅子王に遊ばれたお陰で、動きに磨きがかかった様子。
ミレイユさんとウルズ君もオリアナに揉まれて随分従順になっていた。ウルズ君はまだしも、オリアナさん?ミレイユさんに何をしましたか?
郷に戻ってからは、キール君と合流して青の均衡内でミーティングを行う様子。
明日からは『渦』に対して立ち向かわなくてはならない。
ふと、私は気になっていた事を聞いてみる。
「ねえ、アルマ。旅の音楽家さん、ってどこに滞在しているのかしら」
「あん?気になんのか」
「ええ、一応は。ご挨拶くらいしておきたいじゃない?」
「確か、向こうの方の・・・」
獅子王はある方向を指してくれた。
軽く説明をしてくれて、案内しようかとした所だ。
綺麗なエルフさんが近寄ってきた。
確か、朝に獅子王と一緒にいたような?
彼女は獅子王にこそこそと耳打ちをする。
ガリガリと頭をかいて、こちらを向く。
「悪い、野暮用だ。1人で大丈夫か?」
「ええ、行ってみるわ。ありがとう」
「飯には戻れよ?遅いようなら迎えに行く」
「わかったわ」
くるりと背を向けて歩き出す獅子王。
その腕にしなやかな腕を絡めつつ、エルフさんは私を見てくすりと微笑んだ。
もしかしてもう1戦いかが?みたいな?
私に『勝った』とか思ったのかな?というか、エルフさんも私相手に何故挑発をしてくるんだろうか。
淡白、と言っていたが、この繁殖期はエルフさんにもそれなりに相手の男に対する独占欲が湧くのかもしれない。
********************
言われた方向へ郷の中をお散歩。
すると、少しこじんまりとしたコテージを発見した。
そこから突然、ガチャリと扉が開いて、1人のエルフ女性が飛び出してきた。立派なわがままボディ…!お胸がたゆんたゆんと揺れます。羨ましい。
「いいじゃない、私と楽しみましょうよ!」
「悪いけど、僕そこまで飢えてないから」
「この前はあんなに楽しんだじゃない!」
「一度抱けば充分でしょ?そんなに僕の施しが気に入ったの?」
「っ!ひどいっ!」
修羅場でした。
扉からゆったりと姿を現したのは、長めのセミロングの銀髪を持ったイケメン。明らかに『面倒臭い』というオーラを放ちながら、入口の柱に寄りかかって腕組み。…やだ絵になる!
シャツのボタンがひとつ、ふたつと外れ、とってもセクシィ。
歳の頃は22~3、という所か。
私をちらり、と流し目で見る。やだその見方やめてー!
「・・・お客さんが来たから帰って。もう君を抱く気はないから来ないでね」
「お願い、もう一度、もう一度だけでいいから・・・!」
「うるさいな、いい加減にしてくれない?そんなに男の種が欲しいんなら、そこらで股を開きなよ。誰か相手してくれるでしょ」
「あなたじゃなきゃダメなの・・・っ!」
「興醒めだね。ツンツンしてた君を女にするのはそれなりに楽しかったけど、そこまで堕落した女に食指なんて湧かないよ。他の人を誘うんだね。そんな体してるんだから、釣れるでしょ」
「ああん、アート、つれない人。また来るから」
情熱的にお願いしていたエルフさんは、これ以上は無理だと思ったのか帰って行った。私、ポツンです。
「・・・ねえ君、僕に何か用?」
「え、あ。貴方が、『旅の音楽家』さん?」
「まあそうだね」
「ごめんなさい、不躾ね。エンジュといいます。
貴方が獅子王達と一緒に『渦』へ向かうと聞いたから、ご挨拶にと」
「ふうん」
ジロジロ、と私を上から下まで観察。
う、失礼だったかしら。不審人物と思われても仕方ない?
しかし彼はあっさりと私を手招いた。
「どうぞ。お茶と音楽のひとつくらいはおもてなしするよ」
「っ!ありがとう」
お招きに従い、コテージの中へ。
家具という家具は必要最低限の物だけ。
私は元々使っていたというツリーハウスを借りたので、必要最低限以上に色々とあったが、ここにはテーブルとイス、ベッド、小さなチェストのみだ。
ミニキッチンはあるので、彼はそこでお湯を沸かしてくれ、お茶を煎れて出してくれた。
「どうもありがとう」
「どういたしまして。それより変な所を見せて悪かったね」
「あー、いや。大変ね?」
「後々しつこくしない、って聞いてたから遊び半分に相手したんだけどさ。どの辺がしつこくしないんだか・・・付きまとわれて迷惑だよ。族長さんの話に頷くんじゃなかったね」
「ご愁傷さまです・・・」
「知ってる?エルフの繁殖期は、通常より性欲が強くなるんだって。人並みだそうだよ」
「人並み」
「なんかバカにされてるのかな?って思ったけど、そもそも年がら年中発情してるのなんて、生物の中じゃ『人間』くらいだもんね。納得したよ」
「そう言われると、そうかもしれないわね。なら、獣人はどうなのかしら」
「・・・君、面白いことを言う人だね?」
キラリ、と翡翠色の瞳が『面白いものを見つけた』とばかりに輝いた。…ん?こんな感じの人、私知り合いにいたような?
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