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冒険者ギルド編 ~昇級試験~
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しおりを挟む「さて、このくらいかな?」
「エンジュ様、もうすっかりキャンディ作るの上手になりましたね・・・」
「これも商品化するのよね?」
「効果も一定ですしね、エンジュ様と師匠の許可があれば魔術研究所の特産として売り出す予定です」
「でもねえ、名称が決まらないのよねえ」
「ポーションキャンディ、じゃありきたりですしねー」
「そうなのよー」
カラカラカラ、とキャンディを瓶に移す。
赤いキャンディ、青いキャンディ…大きくなるのはどっちだっけ?赤い方だっけ?…と、しまった年齢がバレてしまう。
大きな瓶に移し替え、機材を洗浄魔法で片付け。
この魔法は清潔魔法の別系統魔法。
魔術研究所の人が作り出したものらしい。とっても便利。
瓶にはトーニ君が保存魔法をかけている。
こういう魔法がとても上手な彼。ホントに研究者向きよね。
さて次は御守り作り…っていうか、私毎日アトリエシリーズみたいな事しかしてなくない?
いやまあ、向こうでも毎日仕事だったけどさあ…?ルーティンワークを繰り返すのは嫌いではないし…?
すると、キリ君とイスト君がクズ魔石を運んできてくれた。
「うぃーす、エンジュ様~持ってきましたよ~」
「こらキリ、もうちょっと丁寧に」
「キリはホントにブレないよなあ」
「褒めんなよトーニ」
「褒めてねえよ?」
「トーニ、諦めなさい、キリに皮肉は通じないから」
「あっ、あれ皮肉だったんか?悪ィトーニ、気づかなかったわ」
キリ君が1番最強なんじゃないかって思う。
魔石の補充をしてくれているキリ君とトーニ君。
そんな中、1度部屋を出ていったイスト君がまた部屋に入ってきた。
「エンジュ様、外門から連絡が来てます」
「ん?何?お客様?」
「はい、エンジュ様にお会いしたいと」
「誰?キャズ?まさかエリー?」
この間、お忍びでいきなり来たエリー。
護衛は外門…つまり出入口の広間に置き去りにして、本人だけタロットワーク塔まで来た。
ものすごく上機嫌で滞在し、2時間ほどおしゃべりして帰りました。見送りに外門まで行ったけど、護衛の女騎士さんは涙目でした。
こんな時になんだけど、魔術研究所は外門と呼ばれる出入口の場所があり、そこで所内に入る人を選別する。
外門からは転移門と呼ばれる各所へ移動できる魔法で管理されている門を通り、各塔…それぞれの研究棟へ移動ができる。
それぞれの研究棟は『塔』と呼ばれ、管理する人の名前を取って呼ばれる。私のいる研究棟は『タロットワーク塔』だ。
ここには所長のゼクスさんの研究室や専用の書庫、実験室、倉庫などがある。私にもお部屋が1つ与えられている。ちなみに温室も完備です。調合に必要な薬草とか育てています。基本管理はトーニ君です。
書庫の管理はヨハル君が、実験室はイスト君、倉庫はキリ君です。
それぞれの性格にあっていてちょうどいいと思っている。
ちなみになんで『塔』と呼ぶかというと、魔術研究所は外から見るとたくさんの尖塔が集まって出来ているからです。
『塔』は現在5つあって、それぞれに派閥ではないけど研究室があり、専門が違っているそうだ。
『タロットワーク塔』は専門というよりも『タロットワークの一族』が集まる塔なので、所長であるゼクスさんの補佐をする意味が大きい。
他の『塔』は魔法解析や、魔法具作成などをそれぞれ専門的に扱っている。マジックバッグの製作は魔法具作成を担当している『塔』の作品です。
「違います、それが『獅子王』らしいです」
「は・・・?」
「えー!すごいっすねエンジュ様!」
「マジか、S級冒険者!?」
「何の用なんですかね?エンジュ様口説きに来たとか」
「『獅子王』の手の早さってそんなに知れ渡ってるのね」
「そりゃそーっすよ」
「『英雄色を好む』って言いますけどね」
「1晩3人いないと満足しないって」
「やめなさいお前達も。エンジュ様も女性なんですからこいつらに付き合わなくっていいんですよ?で、どうします」
「構わないわ、客人証発行して通して」
「了解しました」
「あ、俺迎えに行きます」
「ヨハルずりーな」
「あいつこーゆーの好きですからね」
「じゃあヨハル行ってくれ。キリとトーニは向こう戻れよ」
イスト君が引っ込むと、ヨハル君は『行ってきます!』と敬礼して。キリ君とトーニ君は『エンジュ様口説かれたらダメっすよ』と言いながら退出。
『獅子王』なら私をわざわざ口説きに来なくとも、引く手あまただと思うけどね?
********************
『獅子王』が来るまで、私はゼクスさんに頼まれた書類を読んでいた。魔術研究所でも様々な要望や意見をまとめ、他の『塔』に何をどれだけ仕事を振るのか采配する。
基本的にはゼクスさんがやるのだが、最近は私もそれを手伝っている。結果的にはゼクスさんに決めてもらうけど、草案は私なのだ。ちょっぴり人事的なお仕事?向こうでも似たような事をしていたので構わないのだけどね。
コンコン、とノックの音。
どうぞ、と答えると先にヨハル君、次いで『獅子王』が入ってきた。
「ありがとうヨハル、下がっていいわ」
「はい、エンジュ様。では何かあればお呼びください」
一応ね、人がいる時はそれなりに『上司』風に話すようにしている。外部にはゼクスさんのことも『ゼクスレン』と呼んでいる。
対外的には私はこの『タロットワーク塔』の管理者となっているからだ。…ゼクスさんから押し付けられました。名前だけだから!とか言ってさ。
私は執務机より移動し、応接セットのソファへ。
向かいの席に『獅子王』を促す。
「今日は何か用事?」
「・・・謝罪しに来た。すまなかった」
「何の謝罪?」
「街で絡まれたと聞いた。俺の不用意な言動が招いた。いくらでも詫びる」
「あー・・・あれね。気にしなくていいわ」
「んな訳にゃいかんだろ。そっちの護衛が立腹したと聞いている。俺の責任でもあんだからよ」
「んじゃ・・・責任取って私を慰めでもしてくれるの?」
脳内には傷物にされたお嬢さんが彼氏に向かって『責任取ってよ!』と言っているような映像が浮かんでいる。
本当に何かして欲しい訳じゃないのだが、なんとなく言ってみた。
しかし、『獅子王』は慌てず騒がずサクッと言う。
「んだ?そんな事でいいのか?俺は願ったり叶ったりだけどよ」
「ん?」
「今夜すぐに、って事か?」
「あれ?」
「俺の部屋でいいのか?まあそれなりにいい宿に泊まってるから汚くはねえし」
ここは真面目に『いやいやそれは』とかってなる所では?
真剣にベッドインを考えていますか?こちらの方?
「ちょっとちょっと、冗談よ」
「・・・別に遠慮しなくていいんだぜ?」
「いえ、遠慮じゃなくて。そんなのに付け込んで『抱いて』だなんてどこの性悪マダムのワガママなのよ」
「いるんだよな、そういう依頼人もよ。『依頼料の成功報酬は私の体よ』なんて言われてもこっちにも都合があるしよ」
「あるのね・・・さすが『獅子王』様ね」
「さすがに50近いババァの相手はしんどいからな。話のすんなり通りそうな若い女なら美味しく頂くこともあるがよ、亭主持ちとかはさすがにな」
『獅子王』は確かにオッサンだが、30代後半の色気のある男性だ。しかもガチムチという程でなく、筋肉質な体をしている。かなりの長身…180は余裕で越しているし、優男でもなく端正な男らしい顔立ちだ。
マダムは元より、キャズのように若い女性も熱を上げる事も多いだろう。私に食ってかかってきた子達の様にね。
「レディなら喜んで1晩共にさせてもらうがな」
「私じゃ無理よ」
「あん?どこがだよ。若い女にゃない色気があんだろ」
「貴方と寝るとして、私、朝まで体力持たないもの」
「・・・・・・あのな」
「だって、3人必要なんでしょう?若い頃ならまだしも、一晩に頑張れて2回?3回はきついわ・・・」
「1晩に3人ってどこからの話だ?そこまでガッついてねえよ、10代のサルの頃ならまだしもよ」
あらっ?あの子達の言ってた噂ってどこから聞いてきたのかしら?この体格だし、体力おばけだろうし、相手してたら足つっちゃうだろうなあなんて思ってたのに。
ちょっと呆れられたように見られている私。
え?私のせいなの?
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