121 / 158
留学帰国後 〜王宮編〜
144
しおりを挟む「第2部順位戦、勝者オルガ・リューゼ!」
「・・・やるなオルガ、本当に勝ち抜いてくるとは」
5年も騎士団に所属すれば、それまでの訓練や本人の努力の差で確実に腕に差が出てくる。
騎士は基本的に3年から5年所属する辺りで、王国騎士団から近衛騎士団へと移籍する者も出てくる。その反対も、だ。
騎士になりたてで近衛騎士団へ入ってくる者はいない。近衛騎士団1年目でも王国騎士団で最低でも3年はしごき上げられてくる。ここへ来るのは騎士の中でもひと握りの人間だ。
だから近衛騎士団所属1年目でも、騎士になってから3年から5年、もっと時間をかけてこちらへ上がってくる。
俺も騎士になって3年目に近衛騎士団へ来た。オルガも確かそうだったはず。今ではオルガもいっぱしの騎士になり、俺の直属の部下になった。歳は今年25だったか?
「約束通り、勝ち抜きましたよカイナス様」
「やるじゃないか、オルガ。流石は俺の部下だね」
「こんな時でもないと、カイナス様と本気でやれる時なんてないですからね」
連戦を勝ち抜いてくるだけに、オルガの体力は万全とは言い難い。だがその目に宿る光は俺と戦えることを喜んでいるものだ。
と、オルガの周りに一瞬光が煌めいた。
…、これは回復魔法では?こんな事をするのは1人しかいない。やってくれたな、姫?
辺りを見れば、団長達と座って観戦しているコーネリア姫。
俺と目が合うと、ゆっくり順番に団長、アナスタシア様を見てから俺を見つめてきた。
…ああ、よくわかりました、団長とアナスタシア様ですね?
大方『ハンデくらいないとつまらない』とでも言って、姫に回復魔法をかけさせた、と。
当のオルガは何が起きたのかピンと来ていない。しかし体力が回復しているのを悟って、医療班の方をチラチラと見ている。
違うオルガ、犯人はそちらの姫だ、そっちじゃない。
「オルガ、こんな時に余所見かい?俺の前だというのに余裕があるもんだ」
「ち、違いますよ!いや、なんでもありません。
カイナス様、たっぷり胸を貸していただきますよ?」
「上等だ、全力で来るといい」
開始早々、全力で斬りかかってくるオルガ。
受け止めた衝撃に、姫の回復魔法の威力を感じる。
これもう回復魔法と呼んでいいのか…?もっと上位の魔法のような気が…
視界の端に、アントン子爵令嬢が身を乗り出すようにこちらを見ているのがわかった。
ああして、毎回応援に来てくれていた事に今更ながらに気付く。確かにやたらと真剣に見ていた令嬢がいたな。夜会で話しかけられるようになるまでは、俺でなく相手の騎士が目的なんだと思っていた。…それだけ周りの女性に目を向ける意志がなかったのだろう。
ふと、コーネリア姫が扇を開いているのが目に付いた。
この国のものではなさそうな意匠。…どこの物かと考えた瞬間に、どこの男から贈られたのかとふとした疑問がよぎった。その考えに辿り着いた瞬間、ドス黒い感情が湧く。嫉妬、だな。
「ふっ、くっ・・・!」
「その程度か?オルガ。ならば終わらせるぞ」
さて、ウォーミングアップは終わりだ。
そろそろ次に向けて終わらせるとするか。オルガも大分腕を上げてきた。今後が楽しみな部下だ。
隊長格順位戦で勝ち抜いた時には、姫に何のご褒美をもらうことにしようか。扇の事が頭を掠めた瞬間、何を願おうかが決まった。
********************
「まずまず、か」
「あいつ、シオンの部下だよな?鍛えがいがありそうだな」
「あ、そうだったんですね」
どうやらさっきの部の勝者はカイナスさんの直属の部下らしい。もしかして、以前に魔獣を退治した時にも一緒に来た人かな?
ディーナ達を助けに行った時、確かカイナスさんが一緒に2人くらい騎士さん連れてきてくれなかったっけ。
その人とカイナスさんの試合の後、少し休憩を挟んで各隊の隊長さん達と、フレンさん、アナスタシア、カイナスさんで試合をするらしい。
さてさて、普通にやったんじゃフレンさんとアナスタシアの無双状態だろうし…
「ん?どうした姫」
「アナスタシア?普通に戦ったんじゃつまらないと思わない?」
「どういう事だ?」
「えっとね、ひそひそひそ」
「・・・ふむ、なるほど。それは面白そうだ。
決まりきった内容では面白味に欠ける。採用させてもらおうか、姫。だが大丈夫なのか?」
「ほら、この間セバスさんと魔法練習してたの覚えてる?
あれ使ったら多分出来ると思うのよ」
「苦戦するのも久しぶりだな。確かにあれならば手に汗にぎる試合ができそうだ、ふむ、腕が鳴る」
「・・・何をする気なんだ?お嬢?アナスタシア」
「何、姫が私達にも楽しめるように趣向を凝らしてくれるという話だ。フリードリヒ、お前も楽しめる方がよかろう?いつものように手応えのない試合もつまらないだろう」
「そりゃそうだが・・・何するつもりなんだ?」
「まあやってみてのお楽しみです。皆さんを集めてもらえませんか?」
私がやろうとしてることは簡単。
フレンさんとアナスタシア、カイナスさんと他の隊長さんの間に埋められない戦力差があるというのなら、そんなのなくしちゃえばいいじゃない?ハンデよ、ハンデ。
集まって頂いた皆さんに、さっそく魔法を使う。
「それでは失礼します。『能力値解析』」
この魔法、文字通り対象の能力値を解析するものだ。
魔獣討伐なんかだと重宝するらしいが、探索魔法なんかや鑑定魔法でも同じような結果が出るためあまり使う人はいないらしい。
しかし、私がこれを使うと、面白いことがおきる。
そう、わかりやすく言うと、RPGのステータス画面のようなものが出てくるのだ。
つまり相手のステータスが数値化されて見えてくる。
定番のHP、MPは言わずもがな。他にもSTR、CON、POW、DEX…って待てよ?これ、どこかで見た事ある能力値…ってこれTRPGのキャラシでは…?この間見た時はそこまで気づかなかったけど。
あ、アナスタシアのAPP18って傾国レベルでは…?あっカイナスさんのAPP15…フレンさんAPP14か…恵まれてるなあ…
私?私は聞いちゃダメです、フツメンですから。
全体的に、能力値は隊長さん達とカイナスさんではアマチュアとプロくらいの差がある。
しかしフレンさんとアナスタシア。これはいかん。ゴリラよゴリラ。アナスタシアにゴリラは失礼だけど、人間と野生動物位の差はある。これじゃワンサイドゲームにもなるわ。
「おじょ・・・コーネリア姫?その魔法じゃあまりわからなくないか?」
「いえ、十分すぎるくらいです。とりあえず、そちら3人にはハンデがいりますね。やってもいいのかしら?アナスタシア」
「ああ、構わない。やってくれ」
とりあえず、カイナスさんは2割減くらい。フレンさんとアナスタシアは4割減でもいいわね。ちょっと苦戦するくらいの方が面白いでしょう。
「では遠慮なく。皆様失礼致します」
一応、一言お断りを。セバスさん仕込みの淑女の礼も披露しちゃう。
ドレスを摘み、腰を屈めてお辞儀しつつこっそり魔法唱和。
「『能力低下魔法』」(ポソッ)
「っ!?」
「あっ、くそ!やりやがったな姫ー!」
「ふむ、ここまで落ちるか。これは面白い」
「えっ?」
「なんですか?」
「・・・何ともないよな?」
「あまりにも戦力差がありましたので、ハンデを付けさせて頂きましたわ。これなら皆様同程度の能力値ですから、おもしろい試合となりますわよね?」
私の言葉に、能力低下魔法がかかっていない隊長さん達は顔を見合わせた。
そう、私が魔法をかけたのは、3人にだけだ。
うまく能力値がとんとんになるように、負荷をかけて。
これであとは本人達の経験差や実力差での戦いになる。
誰が勝つか、本当にその場の運と実力の差になる。
それでも多少、DEXはアナスタシアとカイナスさんに分があるかしら?
さすがにSTR下げないと…フレンさんがゴリラだから…
「頑張ってくださいね?皆さん♡」
「やってくれますね、姫・・・」
「あーくそ!何だこれ腕が重い!」
「ふむ、感覚に差があるな、おもしろい」
「も、もしかして団長に勝てる・・・?」
「アナスタシア様にも勝てるかもしれないぞ?」
330
お気に入りに追加
10,626
あなたにおすすめの小説
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!
幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23 女性向けホットランキング1位
2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位 ありがとうございます。
「うわ~ 私を捨てないでー!」
声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・
でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので
「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」
くらいにしか聞こえていないのね?
と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~
誰か拾って~
私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。
将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。
塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。
私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・
↑ここ冒頭
けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・
そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。
「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。
だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。
この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。
果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか?
さあ! 物語が始まります。
出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました
瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。
レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。
そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。
そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。
王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。
「隊長~勉強頑張っているか~?」
「ひひひ……差し入れのお菓子です」
「あ、クッキー!!」
「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」
第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。
そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。
ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。
*小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる