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第七章:新しい魔術士とそのパートナーの歓迎会
88 僕が彼を殴るなんて絶対にありえない
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『……の時間となりました! 短い時間ではありますが…………誠にありがとうございました!』
周りが少しずつ明るくなって、ワートさんの声に続いて大きな拍手の音が聞こえてきた。
うーん、次は何があるんだろう……?
ぼんやりとした頭で考えていると、誰かに身体を揺さぶられた。
「セルテ君」
……この声は……スタイズさんだ。
「はい……何ですか?」
「歓迎会は終わったぞ。控室に戻ろう」
「そうなんですか……」
……ん?
歓迎会は終わった……?
終わった………
終わった………
「ええっ!?」
終わった!????
歓迎会が!?????
今!??????
衝撃的な事実に眠気は吹っ飛んでしまい、僕の心臓が一気に跳ね上がる。
「か、歓迎会、終わったんですか!?」
「ああ、今さっき終わったよ」
全身から血の気が引いていく。
どうしよう、途中からの記憶が無い。
皆の前で寝てしまうなんて、失礼な奴だとか思われたんじゃないか?
「スタイズさん! 僕、いつから寝てました?」
「そうだな……有志による出し物の時間は笑ったり拍手をしていたが、ダンスの時間のあたりくらいからウトウトしだした感じかな? まあ、最後の方は酔っぱらっている人がかなりいてグダグダになっていたから、気にしなくて良いと思うぞ」
「そ、そうなんですか……」
思い返してみると、何となく賑やかで楽しかったような気がするけれど、具体的に何があったのかは思い出せない……
ワートさんが僕たちの元にやってきた。
「セルテ様、スタイズ様、お疲れ様っす」
心なしか彼の表情が少し疲れているように見える。
ずっと司会で喋っていただろうし、そりゃ疲れるよね……
スタイズさんが笑顔でワートさんの方に手を差し出した。
「ワートさんもお疲れ様。楽しい会をありがとう。セルテ様がお疲れのようだから、我々は先に失礼させてもらっても構わないかな?」
「もちろんです。ですが今からご自宅に戻るのはしんどいでしょう。この建物の中に休憩用の小部屋がありますので、今夜はそちらのベッドでお休みになられたら良いかと」
「じゃあ、そうさせてもらうよ。案内をよろしく。催事企画部の皆さんへのお礼は、後日させてもらうとするよ」
そうしてスタイズさんが椅子から立ち上がったので、僕も立ち上がろうとした。
だけど足に力が入らずにふらついて、また椅子に座ってしまったんだ。
まずい、心配されてしまう……!
焦った僕はテーブルに両手をついてまた立ち上がろうとしたけれど、スタイズさんにサッと横抱きで抱きかかえられてしまった。
「疲れただろう。無理はするな」
慈愛に満ちた瞳で見つめられて、逞しい腕に包まれる。
そして耳に響く優しげな低音。
今日はスタイズさんの格好良いところを沢山見ることができるなぁ……
ワートさんに案内されて着いた小部屋の中央には、大きなベッド――身体が大きなスタイズさんが四人くらい寝転がっても余裕があるほどの大きさのものが一つ、そして壁際に横長のソファーが一つ置いてある。
例によって装飾だらけの豪華なものだ。
しばらくすると、看護士のライナートさんと美容部の人たちがやってきて、僕とスタイズさんの着替えを手伝ってくれた。
歓迎会の時に着ていた衣装は身体にぴったりとしたものだったし、上等な生地を使っていて装飾品が沢山ついていたこともあって結構重かったので、薄くて軽い寝間着は開放感が凄い。
着替えた後は、看護士のライナートさんが簡単な診察してくれた。
一番心配だった歓迎会の最初の挨拶を無事に終えることができたこと、その後も問題なく立ち振る舞っていたらしいことを、ライナートさんが涙を流しながら喜んでくれた。
挨拶が終わった後の叫び声について聞いてみると、感極まって叫んでしまったそうで。
大げさだなぁと思うけれど、そこまで喜んでくれる人がいるのは……まぁ、ありがたいと思う。
ライナートさんと美容部の人たちが出ていき、この部屋は僕とスタイズさんだけの静かなものになった。
「セルテ君、今後のことは明日以降に考えることにして、とりあえず今日は休もう」
「はい」
僕とスタイズさんはベッドで並んで横になり、フカフカで肌触りの良い布団に包まれる。
ベッドのヘッドボードにあるボタンをスタイズさんが押すと、部屋が少しずつ薄暗くなってきた。
スタイズさん曰く、彼は寝相があまり良くないそうで、寝ている間に僕を潰してしまったり攻撃してしまったら大変だと、心配で仕方がないらしい。
それで一人分くらい開けて寝ることになってしまった。
ベッドは大きいから、それでもゆったりと眠ることはできそうだけど。
「私が君に何かをやらかしてしまった時は、叫んだり殴ったりして、容赦なく起こしてくれよ」
……そんなことを言われても、大好きな彼を殴るなんて、絶対にしたくないよ……
周りが少しずつ明るくなって、ワートさんの声に続いて大きな拍手の音が聞こえてきた。
うーん、次は何があるんだろう……?
ぼんやりとした頭で考えていると、誰かに身体を揺さぶられた。
「セルテ君」
……この声は……スタイズさんだ。
「はい……何ですか?」
「歓迎会は終わったぞ。控室に戻ろう」
「そうなんですか……」
……ん?
歓迎会は終わった……?
終わった………
終わった………
「ええっ!?」
終わった!????
歓迎会が!?????
今!??????
衝撃的な事実に眠気は吹っ飛んでしまい、僕の心臓が一気に跳ね上がる。
「か、歓迎会、終わったんですか!?」
「ああ、今さっき終わったよ」
全身から血の気が引いていく。
どうしよう、途中からの記憶が無い。
皆の前で寝てしまうなんて、失礼な奴だとか思われたんじゃないか?
「スタイズさん! 僕、いつから寝てました?」
「そうだな……有志による出し物の時間は笑ったり拍手をしていたが、ダンスの時間のあたりくらいからウトウトしだした感じかな? まあ、最後の方は酔っぱらっている人がかなりいてグダグダになっていたから、気にしなくて良いと思うぞ」
「そ、そうなんですか……」
思い返してみると、何となく賑やかで楽しかったような気がするけれど、具体的に何があったのかは思い出せない……
ワートさんが僕たちの元にやってきた。
「セルテ様、スタイズ様、お疲れ様っす」
心なしか彼の表情が少し疲れているように見える。
ずっと司会で喋っていただろうし、そりゃ疲れるよね……
スタイズさんが笑顔でワートさんの方に手を差し出した。
「ワートさんもお疲れ様。楽しい会をありがとう。セルテ様がお疲れのようだから、我々は先に失礼させてもらっても構わないかな?」
「もちろんです。ですが今からご自宅に戻るのはしんどいでしょう。この建物の中に休憩用の小部屋がありますので、今夜はそちらのベッドでお休みになられたら良いかと」
「じゃあ、そうさせてもらうよ。案内をよろしく。催事企画部の皆さんへのお礼は、後日させてもらうとするよ」
そうしてスタイズさんが椅子から立ち上がったので、僕も立ち上がろうとした。
だけど足に力が入らずにふらついて、また椅子に座ってしまったんだ。
まずい、心配されてしまう……!
焦った僕はテーブルに両手をついてまた立ち上がろうとしたけれど、スタイズさんにサッと横抱きで抱きかかえられてしまった。
「疲れただろう。無理はするな」
慈愛に満ちた瞳で見つめられて、逞しい腕に包まれる。
そして耳に響く優しげな低音。
今日はスタイズさんの格好良いところを沢山見ることができるなぁ……
ワートさんに案内されて着いた小部屋の中央には、大きなベッド――身体が大きなスタイズさんが四人くらい寝転がっても余裕があるほどの大きさのものが一つ、そして壁際に横長のソファーが一つ置いてある。
例によって装飾だらけの豪華なものだ。
しばらくすると、看護士のライナートさんと美容部の人たちがやってきて、僕とスタイズさんの着替えを手伝ってくれた。
歓迎会の時に着ていた衣装は身体にぴったりとしたものだったし、上等な生地を使っていて装飾品が沢山ついていたこともあって結構重かったので、薄くて軽い寝間着は開放感が凄い。
着替えた後は、看護士のライナートさんが簡単な診察してくれた。
一番心配だった歓迎会の最初の挨拶を無事に終えることができたこと、その後も問題なく立ち振る舞っていたらしいことを、ライナートさんが涙を流しながら喜んでくれた。
挨拶が終わった後の叫び声について聞いてみると、感極まって叫んでしまったそうで。
大げさだなぁと思うけれど、そこまで喜んでくれる人がいるのは……まぁ、ありがたいと思う。
ライナートさんと美容部の人たちが出ていき、この部屋は僕とスタイズさんだけの静かなものになった。
「セルテ君、今後のことは明日以降に考えることにして、とりあえず今日は休もう」
「はい」
僕とスタイズさんはベッドで並んで横になり、フカフカで肌触りの良い布団に包まれる。
ベッドのヘッドボードにあるボタンをスタイズさんが押すと、部屋が少しずつ薄暗くなってきた。
スタイズさん曰く、彼は寝相があまり良くないそうで、寝ている間に僕を潰してしまったり攻撃してしまったら大変だと、心配で仕方がないらしい。
それで一人分くらい開けて寝ることになってしまった。
ベッドは大きいから、それでもゆったりと眠ることはできそうだけど。
「私が君に何かをやらかしてしまった時は、叫んだり殴ったりして、容赦なく起こしてくれよ」
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