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第六章:病室で休む二人
63 僕は恥ずかしいところを見られてしまう
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しばらくの間、スタイズさんと抱き合っているうちに、怖い気持ちが無くなって落ち着いてきた……はずだった。
スタイズさんの太腿に座り、抱きしめられている……冷静に考えたら凄い状態だと思う。
薄い病衣越しに感じる彼の逞しい肉体、匂い、胸の鼓動や息遣いを意識するうちに、僕の胸がドキドキして身体が熱くなってきて、別の意味で落ち着かなくなってしまった。
お腹の下の方がムズムズする。
よく分からないけれど、このままだと良くない気がするので、彼から離れないと。
ふと目を開けて顔を上げると、彼の肩越しに病室の出入り口が見えた。
……って、ドアが開いたまま!?
廊下から丸見えじゃないか!!
すると丁度、看護士のライナートさんが出入り口のところに来たのだけど、一瞬僕たちの方を見た後に会釈をして、ドアを閉めてしまったんだ。
そういえば、着替えと薬湯を持って来るって言ってたっけ。
抱きしめられているだけでも恥ずかしいのに、それを他の人に見られるなんて。
うわああああ、恥ずかしすぎる!!!
僕はスタイズさんの両肩を掴み、彼から身体を離そうとした。
「スタイズさん。ありがとうございます。もう大丈夫ですので、下ろして下さい!」
「ん? そうか。こちらこそ、ありがとう、セルテ君」
スタイズさんは僕をベッドに下ろして、ニコニコしながら僕の頭を撫でてくれている。
身体は離れたけれど、相変わらず至近距離で見つめられながら触れられているので、心が落ち着かない。
「えっと、ライナートさんに用事があるので、詰め所に行ってきますね!」
僕はベッドから降りて、病室を飛び出した。
看護士さんの詰め所に行くと、ライナートさんが机に向かって書類を書いているところだった。
声をかけて邪魔したら悪いかなと思って入口のところで立っていると、別の看護士さんがライナートさんの肩を叩いて、僕の方を見るように促してくれた。
慌てた様子でライナートさんがやって来て、片膝をついて僕に向かって頭を下げる。
「セルテ様、スタイズ様。気付くのが遅くなりまして、申し訳ございません!」
あれ? と思って振り返ると、僕の後ろにスタイズさんが立っていた。
彼は眉を下げて心配そうな表情で僕のことを見ている。
「えっと……スタイズさん、どうしたのですか?」
「君が急に動いたことで具合が悪くなったら大変だと心配になって、ついてきたんだ」
「…………」
そういえばこの人、過保護なんだった……!!
僕は気を取り直してライナートさんの方を向いた。
「あの、ライナートさん。さっきはせっかく来て下さったのに、その……すみませんでした……」
そして頭を下げると、彼は僕を見上げて小声で話し始めたんだ。
「セルテ様が謝る必要などございません。お二人が仲良くされているところに、声をかけるのも野暮かと思いまして、立ち去らせていただきました。特別な人との触れ合いは、薬湯よりも効果があると思いますのでね」
特別な人との触れ合い……さっきの状況を思い出すと、恥ずかしさが蘇り、顔が熱くなってくる。
僕はいたたまれなくなってしまい、目を閉じてまった。
「セルテ様とスタイズ様の病室に行くのは、基本的に私かイズリーのどちらかです。イズリーは休憩中ですし、一番奥というお部屋の位置的に、あの状況を見たのは私だけでしょう。他の誰にも言いませんから、ご安心ください」
見られたのが一人だけだったことに安堵していると、後ろからスタイズさんの「薬湯だと!!?」という大きな声が聞こえてきた。
びっくりして振り返ると、目を見開いた彼が僕の両肩を掴んで、ライナートさんに向かって早口で話しだした。
「セルテく……いや、セルテ様は薬を飲まないといけない状態なのか!? やっぱり懲罰魔法の影響なのか!? ライナートさん、今すぐ薬湯を飲ませてやってくれ!!」
……そうだった。
僕が悪夢で飛び起きて、ライナートさんが様子を見に来た時は、スタイズさんは部屋にいなかったんだっけ。
だから彼は薬湯のことは知らないのか。
「スタイズさん、落ち着いてください。薬湯は気持ちを落ち着かせるもので、さっき病室であなたに癒やしてもらったから、もう飲まなくても大丈夫なんです」
僕がスタイズさんの目を見ながらゆっくり話すと、彼の表情が力が抜けたようなものに変わった。
「そ、そうか。それは良かった。私でよければいつでも力になるからな。遠慮なく言ってくれよ!」
そして彼に抱きしめられて、頭を撫でられる。
あの……ライナートさんだけでなく、他の看護士さんもいるんだけど?
大声で周囲からの注目を集めてからということもあるのか、視界の端に他の看護士さんたちが穏やかな笑顔を僕たちに向けているのが見えた。
大事にしてくれるのは嬉しいけれど、やっぱり恥ずかしい。
スタイズさんは気にならないのだろうか???
スタイズさんの太腿に座り、抱きしめられている……冷静に考えたら凄い状態だと思う。
薄い病衣越しに感じる彼の逞しい肉体、匂い、胸の鼓動や息遣いを意識するうちに、僕の胸がドキドキして身体が熱くなってきて、別の意味で落ち着かなくなってしまった。
お腹の下の方がムズムズする。
よく分からないけれど、このままだと良くない気がするので、彼から離れないと。
ふと目を開けて顔を上げると、彼の肩越しに病室の出入り口が見えた。
……って、ドアが開いたまま!?
廊下から丸見えじゃないか!!
すると丁度、看護士のライナートさんが出入り口のところに来たのだけど、一瞬僕たちの方を見た後に会釈をして、ドアを閉めてしまったんだ。
そういえば、着替えと薬湯を持って来るって言ってたっけ。
抱きしめられているだけでも恥ずかしいのに、それを他の人に見られるなんて。
うわああああ、恥ずかしすぎる!!!
僕はスタイズさんの両肩を掴み、彼から身体を離そうとした。
「スタイズさん。ありがとうございます。もう大丈夫ですので、下ろして下さい!」
「ん? そうか。こちらこそ、ありがとう、セルテ君」
スタイズさんは僕をベッドに下ろして、ニコニコしながら僕の頭を撫でてくれている。
身体は離れたけれど、相変わらず至近距離で見つめられながら触れられているので、心が落ち着かない。
「えっと、ライナートさんに用事があるので、詰め所に行ってきますね!」
僕はベッドから降りて、病室を飛び出した。
看護士さんの詰め所に行くと、ライナートさんが机に向かって書類を書いているところだった。
声をかけて邪魔したら悪いかなと思って入口のところで立っていると、別の看護士さんがライナートさんの肩を叩いて、僕の方を見るように促してくれた。
慌てた様子でライナートさんがやって来て、片膝をついて僕に向かって頭を下げる。
「セルテ様、スタイズ様。気付くのが遅くなりまして、申し訳ございません!」
あれ? と思って振り返ると、僕の後ろにスタイズさんが立っていた。
彼は眉を下げて心配そうな表情で僕のことを見ている。
「えっと……スタイズさん、どうしたのですか?」
「君が急に動いたことで具合が悪くなったら大変だと心配になって、ついてきたんだ」
「…………」
そういえばこの人、過保護なんだった……!!
僕は気を取り直してライナートさんの方を向いた。
「あの、ライナートさん。さっきはせっかく来て下さったのに、その……すみませんでした……」
そして頭を下げると、彼は僕を見上げて小声で話し始めたんだ。
「セルテ様が謝る必要などございません。お二人が仲良くされているところに、声をかけるのも野暮かと思いまして、立ち去らせていただきました。特別な人との触れ合いは、薬湯よりも効果があると思いますのでね」
特別な人との触れ合い……さっきの状況を思い出すと、恥ずかしさが蘇り、顔が熱くなってくる。
僕はいたたまれなくなってしまい、目を閉じてまった。
「セルテ様とスタイズ様の病室に行くのは、基本的に私かイズリーのどちらかです。イズリーは休憩中ですし、一番奥というお部屋の位置的に、あの状況を見たのは私だけでしょう。他の誰にも言いませんから、ご安心ください」
見られたのが一人だけだったことに安堵していると、後ろからスタイズさんの「薬湯だと!!?」という大きな声が聞こえてきた。
びっくりして振り返ると、目を見開いた彼が僕の両肩を掴んで、ライナートさんに向かって早口で話しだした。
「セルテく……いや、セルテ様は薬を飲まないといけない状態なのか!? やっぱり懲罰魔法の影響なのか!? ライナートさん、今すぐ薬湯を飲ませてやってくれ!!」
……そうだった。
僕が悪夢で飛び起きて、ライナートさんが様子を見に来た時は、スタイズさんは部屋にいなかったんだっけ。
だから彼は薬湯のことは知らないのか。
「スタイズさん、落ち着いてください。薬湯は気持ちを落ち着かせるもので、さっき病室であなたに癒やしてもらったから、もう飲まなくても大丈夫なんです」
僕がスタイズさんの目を見ながらゆっくり話すと、彼の表情が力が抜けたようなものに変わった。
「そ、そうか。それは良かった。私でよければいつでも力になるからな。遠慮なく言ってくれよ!」
そして彼に抱きしめられて、頭を撫でられる。
あの……ライナートさんだけでなく、他の看護士さんもいるんだけど?
大声で周囲からの注目を集めてからということもあるのか、視界の端に他の看護士さんたちが穏やかな笑顔を僕たちに向けているのが見えた。
大事にしてくれるのは嬉しいけれど、やっぱり恥ずかしい。
スタイズさんは気にならないのだろうか???
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