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第五章:初めての魔法の訓練
52 僕は突然のことに困惑する
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カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン……
朝六時の鐘で僕は目を覚まし、ゆっくりと起き上がった。
今日は朝の九時から魔法の訓練があると、メイドのティムさんから聞いている。
ついに僕も魔法を使うことができるようになるんだ。
「よし、頑張るぞ!」
両頬を叩き、気合を入れる。
そしてベッドから降りようとしたのだけど、ふと下腹部に気持ち悪さを感じて、恐る恐る脚衣と下穿きをずらしてみると……
「な、何これ!?」
下穿きの中がネバネバしたもので汚れている。
明らかに小便ではないけれど、それが何なのかはわからない。
初めての状況に僕は困惑し、しばらくの間固まってしまった。
とりあえず下穿きを履き替えたけれど、汚れたやつはどうしよう。
脱衣所に置いてある籠に脱いだ服を入れておくと、ティムさんが魔道具を使って洗濯をしてくれるそうだけど、これをそのまま籠に入れるのはどうかと思う。
僕は急いで一階に降り、洗面所で汚れた下穿きを洗い始めた。
十二歳にもなって粗相をするなんて、恥ずかしすぎる。
それにこのネバネバとしたもの……何かの病気だったらどうしよう。
情けなさと不安から、次第に視界が滲んできた。
その時、後ろからスタイズさんの「おはようセルテ君!」という、明るい声が聞こえてきた。
振り返ると、あと数歩というところまで近付いていたんだ。
汚れた下穿きを洗っているところなんて、彼に見られたくない。
僕は思わず「来ないで!!」と叫んでしまった。
スタイズさんの表情が困惑のものに変わる。
「えっと、あの……トイレに入りたいのだが、駄目だろうか?」
彼はそう言って、僕がいる洗面台の横にあるトイレの入り口のドアを指差した。
この家にトイレは一か所しかないし、ここで駄目と言うわけにはいかないだろう。
「あっ、す、すみません。どうぞ……」
手元を隠すように前屈みになってそう言うと、彼は足早にトイレに入っていった。
僕は急いで下穿きを洗って強く絞り、脱衣所に向かう。
そして昨晩の湯浴みの際に脱いだ服や体を拭くのに使ったタオルが入っている籠の、中の方に下穿きを入れた。
これで僕が粗相をしたことはバレないはずだ……
そして居間に戻ると、スタイズさんが紙の束――新聞らしきものを手にして、ソファーに座るところだった。
うぅ……どうしよう。
スタイズさんは僕に怒鳴られて、気を悪くしていないだろうか?
彼にしてみれば、唐突過ぎて意味不明だよね……とにかく謝らないと。
「スタイズさん、さっきは、その……急に怒鳴って、すみません、でした……」
僕が声をかけると、彼は持っていた紙の束をテーブルに置いて、柔らかな笑顔を見せてくれた。
「何か理由があったのだろう? 気にしていないよ。改めて、おはよう。今日も一日よろしくな」
「あ、はい。おはよう、ございます。よろしく、お願いします……」
挨拶を返すと、彼は僕を見ながらソファーの座面をポンポンと叩いたので、彼の隣に座った。
彼は気にしていないとは言ったけれど、僕は気まずさから俯いてしまう。
「セルテ君」
落ち着いた声と共に頭を優しく撫でられたので振り向くと、彼が真剣な眼差しで僕を見ている。
「余計なお世話だったら申し訳ないのだが。その……何か困っていることは無いか?」
「えっ……」
「さっきの君の様子……初めての事態に混乱しているように見えたんだ。私が君ぐらいの年齢の時に経験したことを思い出して、何となく察してしまったというか。私で良ければ相談に乗るぞ」
「…………」
スタイズさんとの付き合いはまだ短いけれど、僕の話を茶化したり馬鹿にしたりするような人じゃないというのは、よく分かる。
彼は何かを知っているようなので、自分の身体に起こったことを話してみることにした。
朝六時の鐘で僕は目を覚まし、ゆっくりと起き上がった。
今日は朝の九時から魔法の訓練があると、メイドのティムさんから聞いている。
ついに僕も魔法を使うことができるようになるんだ。
「よし、頑張るぞ!」
両頬を叩き、気合を入れる。
そしてベッドから降りようとしたのだけど、ふと下腹部に気持ち悪さを感じて、恐る恐る脚衣と下穿きをずらしてみると……
「な、何これ!?」
下穿きの中がネバネバしたもので汚れている。
明らかに小便ではないけれど、それが何なのかはわからない。
初めての状況に僕は困惑し、しばらくの間固まってしまった。
とりあえず下穿きを履き替えたけれど、汚れたやつはどうしよう。
脱衣所に置いてある籠に脱いだ服を入れておくと、ティムさんが魔道具を使って洗濯をしてくれるそうだけど、これをそのまま籠に入れるのはどうかと思う。
僕は急いで一階に降り、洗面所で汚れた下穿きを洗い始めた。
十二歳にもなって粗相をするなんて、恥ずかしすぎる。
それにこのネバネバとしたもの……何かの病気だったらどうしよう。
情けなさと不安から、次第に視界が滲んできた。
その時、後ろからスタイズさんの「おはようセルテ君!」という、明るい声が聞こえてきた。
振り返ると、あと数歩というところまで近付いていたんだ。
汚れた下穿きを洗っているところなんて、彼に見られたくない。
僕は思わず「来ないで!!」と叫んでしまった。
スタイズさんの表情が困惑のものに変わる。
「えっと、あの……トイレに入りたいのだが、駄目だろうか?」
彼はそう言って、僕がいる洗面台の横にあるトイレの入り口のドアを指差した。
この家にトイレは一か所しかないし、ここで駄目と言うわけにはいかないだろう。
「あっ、す、すみません。どうぞ……」
手元を隠すように前屈みになってそう言うと、彼は足早にトイレに入っていった。
僕は急いで下穿きを洗って強く絞り、脱衣所に向かう。
そして昨晩の湯浴みの際に脱いだ服や体を拭くのに使ったタオルが入っている籠の、中の方に下穿きを入れた。
これで僕が粗相をしたことはバレないはずだ……
そして居間に戻ると、スタイズさんが紙の束――新聞らしきものを手にして、ソファーに座るところだった。
うぅ……どうしよう。
スタイズさんは僕に怒鳴られて、気を悪くしていないだろうか?
彼にしてみれば、唐突過ぎて意味不明だよね……とにかく謝らないと。
「スタイズさん、さっきは、その……急に怒鳴って、すみません、でした……」
僕が声をかけると、彼は持っていた紙の束をテーブルに置いて、柔らかな笑顔を見せてくれた。
「何か理由があったのだろう? 気にしていないよ。改めて、おはよう。今日も一日よろしくな」
「あ、はい。おはよう、ございます。よろしく、お願いします……」
挨拶を返すと、彼は僕を見ながらソファーの座面をポンポンと叩いたので、彼の隣に座った。
彼は気にしていないとは言ったけれど、僕は気まずさから俯いてしまう。
「セルテ君」
落ち着いた声と共に頭を優しく撫でられたので振り向くと、彼が真剣な眼差しで僕を見ている。
「余計なお世話だったら申し訳ないのだが。その……何か困っていることは無いか?」
「えっ……」
「さっきの君の様子……初めての事態に混乱しているように見えたんだ。私が君ぐらいの年齢の時に経験したことを思い出して、何となく察してしまったというか。私で良ければ相談に乗るぞ」
「…………」
スタイズさんとの付き合いはまだ短いけれど、僕の話を茶化したり馬鹿にしたりするような人じゃないというのは、よく分かる。
彼は何かを知っているようなので、自分の身体に起こったことを話してみることにした。
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